表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔力ゼロって言われたけど、無限に溜まってたのでダンジョンから国を作ります  作者: 蒼野湊


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

24/63

第24話 通界、留守にできますか?

 朝の通界は、うるさい。


 市場の呼び声、荷車の軋む音、遠くで金属を打つ音。

 全部が、ちゃんと「回っている音」だ。


 ――にもかかわらず。


「……で、これ全部、今日決めるやつ?」


 俺は机の上に積まれた書類の山を見下ろして、素直な感想を口にした。


「はい」


 即答したのはアクアだ。

 涼しい顔で、ペンをくるりと回している。


「交易契約三件、税率調整一件、冒険者ギルドからの問い合わせが二件。あと、市壁の補修計画と……」


「待って待って待って」


 俺は手を振った。


「それ、俺が全部見る前提?」


「当然ですが?」


 当然、なのか。


 横でセレナが、干し肉を齧りながら首を傾げる。


「でもさ、私たち、そろそろダンジョン行く予定じゃなかった?」


「行くよ?」


「全員で」


「……あ」


 その一言で、頭の中の歯車が噛み合った。


 俺たちが全員ここを離れたら、どうなる?


 冒険者の受付は。

 交易の判断は。

 治安の最終決定は。


 ――全部、止まる。


「……ノクス」


「はいはい、嫌な予感がする質問ですね」


 壁際にいたノクスが、肩をすくめる。


「俺たちが一週間いなくなったら、通界はどうなる?」


 一瞬の沈黙。


 アクアが、視線を逸らした。

 フレイが、腕を組んだまま考え込む。

 ルミナは、静かに目を伏せる。


 答えは、出ていた。


「……回りませんね」


 アクアが、観念したように言った。


「正確には、“判断が止まります”」


「事件は起きないけど、決定ができない?」


「はい。悪くないけど、強くもない状態です」


 それはつまり――

 俺に依存している都市だ。


「……それ、ダメだな」


 ぽつりと言うと、フレイが頷いた。


「主が不在で崩れる街は、要塞じゃない。ただの陣地だ」


「ですよねー」


 セレナは軽い口調だが、目は真剣だった。


「私たちが強いのはいいけどさ。街まで一緒に連れて歩くのは、ちょっと重いよ」


 的確すぎる。


 俺は椅子にもたれ、天井を見上げた。


「……じゃあさ」


 ゆっくり、言葉を選ぶ。


「俺がいなくても、勝手に回るようにしよう」


 一拍。


 次の瞬間。


「それです!」


 アクアが、机を叩いた。


「ずっと言いたかったんです!」


「言えよ!」


「言う前に気づいてほしかったので!」


 理不尽だ。


 ノクスが、にやりと笑う。


「じゃあ、権限委譲ですね。責任もセットで」


「うん。全部じゃないけど」


 俺は、指を折りながら続ける。


「財政、治安、交易、医療、情報。

 それぞれ“俺じゃなくても決めていい範囲”を作る」


「……主が楽をするために?」


 フレイが聞く。


「違う」


 俺は、はっきり答えた。


「この街を、置いて行けるようにするためだ」


 その言葉に、ルミナが微笑んだ。


「それは……優しいですね」


「そう?」


「ええ。縛らない、という意味で」


 アクアは、すでに紙を広げていた。


「ではまず、判断基準を文章化しましょう。

 “何を決めていいか”と、“決めてはいけないか”」


「……大変そうだな」


「でも」


 アクアは顔を上げ、楽しそうに言った。


「一度作れば、主がいなくても金は増えますよ?」


 その一言で、全員が俺を見る。


「……よし」


 俺は、机を叩いた。


「じゃあ決まりだ。

 通界を、留守にできる街にしよう」


 外では、いつも通り市場の声が響いている。


 まだ誰も知らない。


 この街が今日から、

 “誰かがいなくても回る場所”になることを。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


少しでも続きが気になる、と感じていただけましたら、

ブックマーク や 評価 をお願いします。


応援が励みになります!


これからもどうぞよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ