第15話 金があるなら、街に使う
結論から言うと――
金は、持っているだけだと邪魔だった。
「……確認します」
執務室(仮)。
アクアが淡々と帳簿をめくる。
「本日の収入」
一拍。
「金貨、二百三十枚」
「魔石在庫、倉庫三割埋まり」
「今月の固定収入予測、金貨百五十枚相当」
(……多いな)
「使わない理由、ありますか?」
アクアが顔を上げる。
(正論)
「……ないです」
僕が答えると、
その瞬間、空気が変わった。
セレナが、身を乗り出す。
「じゃあ! 街、広げようよ!」
「宿、足りないし!」
「屋台も増やしたい!」
(勢い)
リーネが、静かに図面を広げた。
「基礎は、まだ余裕がある」
「今なら、無理なく拡張できる」
(職人の目)
フレイが、腕を組む。
「防壁は、今の倍がいい」
「街が大きくなる前に作れ」
(軍人の判断)
ノクスが、軽く笑う。
「人が増える前に、路地と裏も整理しよう」
「後回しにすると、面倒になる」
(経験者)
ルミナが、穏やかに言った。
「居場所を、増やしましょう」
「ここに来た人が、安心できる場所を」
(光)
全員、金を使う前提だ。
(……迷う理由、ないな)
「じゃあ」
僕は、短く言った。
「全部やろう」
その日から、街が動き出した。
① 宿と休憩所の増設
冒険者向けの簡易宿。
家族向けの長期滞在宿。
「安くて、清潔で、安全」
それだけで、人は集まる。
② 市場の正式整備
露店だった場所に、屋根と区画。
水路を通し、
地面を舗装し、
通路を広げる。
「雨でも営業できる街」
(強い)
③ 倉庫と流通拠点
魔石・素材・交易品。
全部、
安全に、軽く、早く。
冒険者が感動していた。
「預けて安心な倉庫、初めてだ……」
(評価、高)
④ 防壁と門
リーネ設計。
フレイ監修。
「威圧しすぎず」
「でも、近づきたくない」
絶妙な高さ。
⑤ 公共施設
浴場。
炊き出し所。
簡易診療所。
ルミナが、そこに立つだけで、
空気が柔らぐ。
街は、一週間で別物になった。
冒険者ギルドから、連絡。
「……人、増えすぎです」
(知ってる)
商会が、拠点を構える。
「通界を中継にすると、損がない」
(正解)
旅商人が言う。
「通行税、安すぎません?」
アクアが即答する。
「量で取ります」
(悪い顔してる)
夜。
高台から街を見る。
灯り。
人の声。
湯気。
セレナが、風に髪を揺らしながら言った。
「……すごいね」
「前は、何もなかったのに」
(本当だ)
リーネが、ぽつり。
「地面が、喜んでる」
(分かる人には分かる)
フレイが、頷く。
「守る価値ができた」
アクアが、帳簿を閉じる。
「次は、安定収入です」
(もう次)
ノクスが、夜を見つめる。
「噂、広がってる」
「“金が回る街”って」
(悪くない)
ルミナが、静かに微笑む。
「人が集まる場所は、希望になります」
僕は、街を見下ろして思った。
(……金)
(使うと、増えるんだな)
この日。
通界は、
「稼げる街」から「住みたい街」へ
一段、成長した。
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