第11話 火属性は、戦力になる
結論から言うと――
街は、守れないと街じゃない。
できた瞬間から、狙われる。
これは自然現象だ。
拠点が完成して、三日目。
冒険者の流れが、明らかに変わった。
回復が早い
倉庫が安全
休憩所が快適
(そりゃ来る)
人が来れば、金が動く。
金が動けば、嗅ぎつける奴も来る。
「……夜警、必要ですね」
セレナが、風の流れを見ながら言う。
「すでに二回、様子見されてます」
(早いな)
その日の夕方。
拠点の外で、騒ぎが起きた。
「どけ!」
「ここは俺たちが管理する!」
(来た)
五人。
装備は雑多だが、実戦慣れしている。
野良パーティというより、
半分、山賊。
(境界線を越えた冒険者、ってやつ)
「ここは、私有地です」
アクアが、静かに言う。
「通行料なら――」
「通行じゃない」
男が、にやりと笑う。
「上納だ」
(テンプレ完成)
そのとき。
前に出たのは、見知らぬ女性だった。
(ご都合主義のように
次から次へと出てくるなぁ)
赤髪。
鎧は軽い。
でも、立ち方が――戦場のそれ。
「……やめときな」
声は低く、よく通る。
「ここは、あんたらが踏み込む場所じゃない」
男たちが、舌打ちする。
「誰だ、お前」
「火」
短く、答えた。
「フレイ」
(あ、来た)
次の瞬間。
空気が、熱を持った。
火球じゃない。
爆発でもない。
ただ――圧。
「……っ!」
男たちが、思わず一歩引く。
「警告はした」
フレイが、手を上げる。
「次は、焼く」
(簡潔)
一人が、剣を振り上げた。
「舐めるな!」
(はい、アウト)
――通す。
剣を振り下ろす“前”と、
地面に倒れる“後”。
その間を、繋いだ。
男は、気絶。
衝撃音すら、ない。
フレイが、一瞬だけこちらを見る。
「……あんたが、噂の」
(噂、広がるの早い)
残りの男たちは、即座に逃げた。
(判断が早いのは良い)
静寂。
フレイは、ふうっと息を吐いた。
「……助かった」
「いえ」
(ほぼ何もしてない)
事情を聞くと、彼女は元・傭兵。
国境紛争
砦防衛
魔獣迎撃
(実績、重い)
「戦場は、嫌いになった」
フレイは、焚き火を見つめて言う。
「でも、守る場所があるなら……」
(刺さった)
条件提示は、シンプルだった。
「戦力と防衛、引き受ける」
「代わりに――」
少し間を置いて。
「無駄死にしない」
(合理的)
即決。
夜。
フレイの指示で、拠点の配置が変わった。
見通し
退路
火力線
(……完全に軍)
地下観測室。
水晶が、また一行吐き出す。
《異常記録》
連結個体:火属性
機能拡張:戦闘・防衛
軍事影響:発生
「……もう街じゃないな」
拠点の灯りが、増えた。
巡回の足音。
火の番。
(……落ち着く)
フレイが、ぽつりと言った。
「……あんた」
「はい」
「戦争、嫌いだろ」
「はい」
「なのに、戦争に向かってる」
(自覚はある)
「でも」
フレイは、笑った。
「終わらせる側だ」
(……それなら、悪くない)
胸の奥が、静かに肯定した。
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