第八話。エルカドゥアに来ました。
「ジュダイドールさま!」
「じゅだいどるさまだ!」
そんな声がして、俺は目を覚ました。
「あ、起きた」
そんな声が上でする。…なんか頭があったかくて寝心地いい…。
「…。うぉわっ!?」
見えた光景に勢いよく顔を上げると、ゴンッという鈍い音と共に頭に痛みが走る。
「うわーっっ!?いろいろごめん、ジュダさん!」
「いたた…。いや、だいじょうぶ…。修斗は平気?」
状況を整理しますと、ね。
俺は寝たっぽくて、その結果ジュダさんに膝枕してもらってたらしいんです。そして飛び起きた俺の額とジュダさんの顔が衝突したと。
「どこか痛くないか…?」
「ん、平気」
鼻を押さえていた手をジュダさんが外す。軽く赤くなっていたけど、出血はない。
「うわ、マジでごめん。イケメンのお顔に傷がぁ…」
「あはは、だいじょうぶだって。…でもじゃあ、責任とってくれる?」
「ぅえっ!?」
なんですとっ!?え、こういう場合の責任って結婚か!?
固まった俺に、全員が吹き出した。
「ジュダ、からかいすぎー」
「ふは、真っ赤になっておるぞ」
「っふふ…。嘘だよ、冗談」
ジュダさんが軽く声を殺して笑いながら言う。
「ふふふ。素直だね。…それに、もし結婚するとしてもそういうのじゃないかな〜」
長い指が、するりと俺の額を撫でた。耳に触ってくすぐったくて、思わず首をすくめる。
「ぼくは好きになってもらいたいから、ね?」
くす、と上目遣いで微笑むジュダさんが美しすぎて。
ぼわわわわ、と顔が熱くなるのを感じたまま、俺はヒューガさんの膝の上で何も言えなくなったのだった。
◇◇◇
「さぁ、ようこそエルカドゥアh」
馬車から降りたジュダさんが俺をエスコートしようと手を差し出して言った。でも最後までは無理だったみたい。
「おかえりなさい!」
「じゅだいどーるさま」
わちゃわちゃ、とジュダさんを子供たちが取り囲んでいる。ジュダさんがお腹に飛びついてきた子を苦笑して抱いて降ろした。
「こら。話し中だよ。歓迎ありがとう、でもまた後でね?」
なんとも格好がつかないね、とジュダさんが笑った。なんかかわいい。あ、なんかじゃないか。
ぴこぴこしっぽが揺れてるから、たぶん嬉しいんだろうな。そんなことを考えてたら、視線に気付いたのか手で押さえられてしまった。
気を取りなおすように咳払いして、胸に優雅な仕草で手を当て、ジュダさんがふわりと一礼する。
「領地を代表して、領主エルカデュア・レ・ジュダイドールが歓迎いたします。如月修斗さま、エルカデュアへようこそ」
ふわりと柔らかな笑顔を浮かべるジュダさんの長い髪を、風が揺らした。暖かな日に照らされた街並みが、光を反射してきらりきらりと光る。
全部、めちゃくちゃ綺麗だった。そしてそれ以上に、ジュダさんも。…そう思ったのは、恥ずかしいからナイショだけどね。
◇◇◇
おしゃれなレストランや洋服屋が立ち並ぶ通り。穏やかな笑みを浮かべながら買い物をする人たち。
ガラス張りのショーウィンドウから見る店内は綺麗に整えられていた。
…半端ない場違い感…!
「さ、おいで。服を買おう」
ジュダさんが、俺の手をそっと取ってドアを開ける。
エルカドゥアに着いて最初に俺がすることは、服を買うことらしい。流石にスーツだと浮くから、だとさ。お金は出してもらえるらしいから、ちょっと申し訳ないけど買ってもらうことにした。
…まあ、決めた理由はエロいって言われたからでもあるんだけどね。異世界とはやっぱ感覚が違うみたいで、流石に目立ちすぎるのも嫌なので。
とりあえず、他の人の服を観察してみる。俺にファッションはわかんないの。
ジュダさんが着ているのは、レースのついた白いシャツに金糸の刺繍が入った赤いベスト。比較的ピッタリとしたズボンを履いているから、足が細めでスラリと長いのがよく分かる。
…イケメンすぎて参考になんないな、うん。悲し。
「修斗。これとかどう?これも」
「お?」
いろいろ持ってきてくれた。たぶんおしゃれ。
…うーん。服選び、お願いしちゃった方がいい気がする…。
自分の感性って、信じていいときとダメなときあるもんね。初カノに私服がダサい、と振られた俺は黙っていよう。
◇◇◇
「わーっ、おかえり!」
「ふむ、似合ってるな」
帰ったら、フェーンさんが走ってきた。
「最初のすーつ?もよかったけど、こっちもすごい綺麗だよっ!」
にこにこーっと邪気のない笑顔でベタ褒めされる。まって、俺の心臓、そんなときめきに耐える強さはないの。
ヒューガさんもめちゃくちゃ肯定してくるし、なんか恥ずかしくて嬉しくてどうしようって感じである。
「よしょ。…ね、このまま連れてっちゃっていい?」
いきなりふわっと体が浮いた、と思ったら俺はジュダさんの腕の中にいた。
「…ぅぇっ、あ!?」
いわゆる、お姫様抱っこ状態である。暴れるのも危険な気がして、結局俺は固まった。
「修斗がヒューガとフェーンだけ見てると、妬いちゃうかも」
むす、と思いの外子供っぽい表情を、ジュダさんが浮かべた。わお、なんでも絵になる。
超至近距離&イケボで、眼福耳福なんですけど。けどね。ちょっとね、距離が近いかなあって…!
「今は、ぼくだけを見ててほしいなぁ」
にこ、と効果音がつく感じでジュダさんが笑む。ね?と追い討ちをかけられた俺に、頷く以外の選択肢はなかった。
…なんかジュダさん、結構独占欲が強い人かもしれない…!
なんかどころではなく、ばりばりに独占欲の強いジュダさんでした。紳士なんだけどね…。
異世界で過ごし始めて二日目。決断まではあと(…たぶん)六日。
↑計算ミスをしている可能性大なので、もしかしたら後でしれっと書き変わってるかもしれません。
とりあえずまだまだ修斗はこの世界で過ごす予定ですので、これからもよろしくお願いします。
今回もここまでご閲覧、ありがとうございました!!




