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最終話。祭りっ!



「うぉわーっ…!」


まさか、日本とはかけ離れた異世界でこんな物を見るとは思わなかった。りんご飴、かき氷、チョコバナナに射的、ヨーヨー掬い。


 長らく言ってなかった祭りそのものだ。


「すっげぇ、なんで…」


なんでここでこんなに日本感があるんだ。ぽかんとしながら呟くと、ヒューガさんがくすりと笑う。


「この祭りはな、この国が一つになったことを祝うものなのだよ。王が三人になったのもその時からでな、当時の花嫁が『ニホンジン』だったらしいのだ」


つまり、もともと、この国は三つに分かれていたらしい。それが統一され、こういう形式になったのを祝おうとしたら日本式のお祭りになったようだ。


「はー…。すごいな、これ」


物なども違うだろうに、かなりの再現度だ。射的やりたいなと思っていたら、ヒューガさんがさらっと二人分の銃を持ってきた。


「えっ!?あ、ありがとう!」


わぁスマート。ありがたく受け取って、何を狙おうかと思案を始めた。


「…あれ、みんな?」


「ぬ?…うむ、そうだな。我々のようだ」


一番上にある三体のぬいぐるみが、ヒューガさんたちみたいだ。せっかくなら取りたい。というか好きな人たちのやつは取りたい。


「む、それを狙うのか?では我は別のものにしよう」


そう言って、ヒューガさんはウサギのぬいぐるみに向けて銃を構えた。腕の長いヒューガさんが構えると、おもちゃの銃なのに格好よく見える。なぜだ。


 たんっ!たんっ!


 二連続で銃が放たれ、ウサギがぽてりと落ちた。…うわぁ。すご。


「やってくる」


かっこいい褐色金眼の美青年にふわもこウサギのぬいぐるみという面白い見た目になってしまったヒューガさんは、そのまま隣にいた女の子に向かって歩き出した。


「ん」


キラキラと横で見ていた女の子に、ヒューガさんがずいっと差し出した。前で取ろうとしていた猫の女の子と兎の女の子だ。


「やる」


ほぼ顔を動かさないまま言うヒューガさん。かっこいい、んだけど。


 大きい男(しかも王)は、小さい子供にはちょっと怖いらしい。


「ひゃっ」


「ちょちょちょ、怖がってるって」


…ヒューガさんは悪い人じゃない。それはめちゃくちゃ知ってるんだけど、ビジュアルが若干クールでキツめなんだよね。


「ぬ?」


「しゃがんだほうがいいかもしれない」


「ふむ?」


首を傾げながら、ヒューガさんがしゃがんだ。にっとぎこちなくも笑ってみている。うん、たぶん大丈夫そう。


 ちなみに、何気にさっきから俺は全て外している。手元に二つしか残ってない玉の一つを慎重につけ、一生懸命狙いを定めた。


 …よし、ここだ!


「ばぁ!」


「っうぉわ!?」


とぱぁん!


 腰にドーン!という衝撃を感じてビビった。そして球が吹っ飛んでいく。きれいに。


 …明後日ってあっちだったんだ。


「こらっ、危ないでしょ!」


べりぃと腰に捕まっていた人が引き剥がされていった。振り返ると首根っこを掴まれたフェーンさんと、珍しく目を開けてるジュダさんがいた。目、青色だったんだ。


「うぅ、ごめんなさい…」


「や、いや、えっと」


しょぼくれているフェーンさん。でもジュダさんはまだご立腹モードらしい。


「じゃあ、これどうやったらいいか教えてくれないか…?」


「!やるっ」


フェーンさんがぱっと飛びついてきた。尻尾ブンブンで可愛い。


 やれやれとジュダさんが苦笑して、ビビられているヒューガさんの方に構いに行く。俺は、ここをこうして…とフェーンさんからご指導を受けたあと、ゴーサインを出してもらった。


 パァン!


「ぅお」


「上手!」


見事に球は吹っ飛びクリティカルヒット。景品をゲットした。


「よかったねー!…でも、これってボクたち?」


「わーっっ!!」


いや待ってそうだよ忘れてた。にまーっと嬉しそうになったフェーンさんがジュダさんを呼びに行ってる。あーー…。


「えっ、わ!狙ってたのこれかぁ…。嬉しいな」


みんながにこにこと嬉しそうな笑顔である。


 …バカかっけぇ。イケメンすぎる…。俺の心臓を殺す気か!


「お、そろそろ花火が上がるな」


「こっちおいでよ、特等席あるよ!」


「転ばないようにね〜」


ぐいぐいと手を引かれ、フェーンさんと一緒に走り出した。…楽しそうにはしゃいでいる3人を見るたび、不思議と、心の奥が温かくなる。



◇◇◇



「うひゃー…」


絶景としか言いようがない。林道を進んだ先にぽっかりとある小さな広場のようなスペースで、空満面に花が咲いては散っている。


「すごいでしょお」


自慢げに笑い、フェーンさんが座った。獣化したヒューガさんとジュダさんが俺の太ももに頭を乗せる。おお、相変わらずもふもふで気持ちがいい…。


「…あのね、しゅーと」


四人(?)でしばらく花火を見続けたあとの、休憩の一瞬の静けさ。そこでそっとフェーンさんが呟く。


「ボクたちはね、花嫁さんが特別なの。だからって言うわけじゃないけど、みんな、しゅーとが好きだよ。その上で、だけどね」


明るい少年の顔に浮かぶ、真剣な思い。そのギャップについ、俺は姿勢を正した。


「ボクたちも、しゅーとの特別にね、なりたいんだ。しゅーとの笑顔を見ると嬉しい。しゅーとと一緒にいると胸があったかくなる。それがね、しゅーとにも起こって欲しいの。…なんて、ずるいかな」


体育座りの膝にぽすんと頬を乗せ、フェーンさんが澄んだ目で俺を見つめる。


「なんてね。ただね、ボクたちの気持ちも知っておいてほしかっただけなの」


そうやってまた、にぱっと笑った。ジュダさんもヒューガさんも、小さく頷きながらきいている。


 …確かにその顔はずるいわ。


「…な、あ」


緊張で声が裏返りかけた。なんで緊張してんだよ俺。落ち着け。


「この前の質問…。花嫁になるか、市民になるかの答えって、今言ってもいい…のか?」


ちょっとフライングだと思うけど、問題ないのだろうか。ジュダさんとヒューガさんが顔を見合わせ、ぽんっと人の姿に戻って手早く着替えた。


「聞いてもいい、かな?」


ジュダさんがいつも通りの声で、でも少し震えてるのがわかった。本当に、ここまで思ってくれているのか。


「…もし。もし、よければなんだけど。こんな俺でよければ、ジュダさんやヒューガさんやフェーンと一緒に過ごしたい…、です」


ろくにパッとしない、こんな俺でも。それでもいいのであれば、俺はまだ、ここにいたい。


「「「…〜っっ!!」」」


3人とも顔を見合わせて、ぱああっと嬉しそうになったあと、どーんっと抱きついてきた。ちょうど花火がまた上がり始め、色とりどりの光が俺らを照らす。


「俺なんか、じゃないよ〜」


「我らからもお願いしたい」


「これからもよろしくねっ、しゅーと!」


三方向から同時に言われ、つい笑ってしまう。俺は聖徳太子じゃないよ。


 でも不思議と聞き取れて、我ながらすごいと思う。


「…なあ、好きだ」


今度は裏返らずに言えた。もふもふとふわふわの愛に包まれて、こんな幸せを断れるはずがない。


「ふふっ、ボクもだぁいすき!」


ぽわんとチワワになって、フェーンさんが抱きついてきた。それを見てまたみんなで笑う。


 幸せな時間がゆっくりと、一つ一つが心の中に積み上がっていくようだった。




 

長い間放置してしまって申し訳ありませんでした…!


突然ですが、最終話が書き上がったので、これで完結となります。

修斗やジュダ、フェーン、ヒューガたちを見守ってくださりありがとうございました!


最後に、

ここまで読んでくださり本当にありがとうございました!!

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