第十二話、問題発生。 ☆
結局、俺が落ち着くのを待って帰還したらしい。らしい、というのは俺が寝落ちしたためである。俺を起こさないようにそぅっと馬車に連れてってくれて、リシュートカさんが馬になって帰ってくれたようだ。
起きたら、ベッドの横でジュダさんが二人に「ずるい」と責められている真っ最中であった。
「ボクだってしゅーとに好きって言いたかったもん!」
「其方は毎日言っているであろう。我だって言いたかったのだ!」
しゅーとのいいところなんていっぱいあるもん!とフェーンさんが怒涛の勢いで語り出した。ヒューガさんも負けじと言い出す。
…本人ここにいるから!ヤメテ!さすがにこれは恥ずかしいから!
「あはは、直接言えば?」
俺が起きたことにさっきから気づいていたらしいジュダさんが、笑ってそう言う。ふぁっっ!とフェーンさんが飛び上がった。
「起きてるってわかってたらっ、ちゃんと見て言ったのに!」
ジュダのいじわる!と叫ぶフェーンさんとは対照的に、ヒューガさんが顔を真っ赤にしてうずくまっていた。顔が、というか耳が真っ赤。なんかケモ耳だけど真っ赤なのがわかる。
「…おーい、ヒューガさん」
「ぬ…」
流石にあれだけ好きだと叫びまくってたのが本人に聞かれたら恥ずかしいんだろうな。
「とりあえず、どうも…」
らぶ!が直球すぎるよみんな。ありがたいけどさ。恥ずい。
「ん!ボクたちははしゅーとが大好きなんだからね!」
にこにこのジュダさんと、ふしゅううう…と煙が出そうなヒューガさんを代表するようにフェーンさんが言い切ってくれた。なんか、やっぱり慣れなくて、でもやっぱり嬉しい。
◇◇◇
ご飯を食べ終わったあと、三人は手合わせしてくると言って庭に行った。俺はリシュートカさんに、ここにも書庫があると聞いたので行ってみることにする。
ウェードリグールは国内最大級と言われているだけある広さだったけれど、こちらもこちらで広い。ただ、ウェードリグールよりは本が探しやすかった。
「これ、面白そう…!」
物語系の本が置いてある。最初のページを数枚めくって、面白そうだったので何冊か取り、窓辺のソファに腰掛けた。
ここからは庭が見えて、木刀っぽいやつで戦ってるジュダさんたちがいた。
すげぇ。
王族って物理的にも強いんだなぁ、と思いながら本をまた開く。勇者の冒険譚みたいな感じで、俺はすぐにそっちに集中し始めた。
◇◇◇
…だよなぁ。そうだよな。
ぐるぐると悩みながら、俺は廊下を歩く。すでに図書館に入った時から三時間くらい経っててびっくりだ。
なんで悩んでるのかっていうと、それは読んだ本のせいだ。それほど直接的な描写じゃなかったんだけれど、最後の方に子孫を残しててさ…。
それにどうこう言いたいわけじゃなくて、ただ自分の立場を思い出しただけなんだけど。いくら俺が妊娠不可能な体であっても、そういう行為って付き物なんだろうな。
正直言って、嫌悪感は感じていない。男性を対象とするのは初めてだけど、感情の名前を考えたらちゃんと、好きだ。そういった行為もある。でも、でもなんか引っ掛かってるんだよなぁ。
なんでだろう、と思いながら部屋に戻る途中で、三人の声が聞こえた。ドアの向こうからだ。見たことないドアだったから、なんだろ、と気になった。
はしゃぐフェーンさんの声だったし、鍵かけてる部屋以外は入っていいって言われてたから大丈夫だよな。そう思ってドアを押す。
「…え、わ!?」
「……ぅおわっっっ」
驚いたようなジュダさんの声と、それよりもでかい俺の声。なんだなんだ、とヒューガさんとフェーンさんも顔を出した。
「…わー、しゅうとくんのえっち」
「ごごごごごめんっ!!!」
位置関係をちゃんと考えればよかった。そうだ、脱衣所にはドアが二つあったじゃないか。えーっと…、と戸惑ったようにジュダさんが持っていたタオルを腰に巻いて、近づいてくる。
「入っておいで。ドア閉めよう」
そう言われて、ドアを開放していたことに気づいた。ばたんっとドアを閉めて、気まずさでジュダさんの顔からつい目を逸らす。
「えっと…ごめんなさい」
「いや、鍵かけとけばよかったよね。ごめんね、嫌なもの見せて」
「やっ、嫌ではないんですけれど!」
ちょうど想像もそっち側に行ってしまっていた申し訳なさもある。軽くほてった美麗な男性の体を俺が見ていいのかっていうものは当然あるんだけど。
「…あれ、嫌じゃないの?」
意外、といった感じで聞き返された。自ら墓穴を掘って言葉に詰まる。
「…いや、ではないです。そもそも決める前に、そっちの相性を確かめた方がいいかなぁとは思ってたし…」
単純に心の用意ができてなかっただけだ。というかこれ俺が百パー悪いです。覗いたのは俺です。
「えっ、そういうことしてもいいってこと!?」
「こら黙っていろ!」
フェーンさんが飛び出してこようとして、ヒューガさんに引き戻されて行った。その一連の流れを見て、ようやく俺が何に引っ掛かっていたのか気づく。
「…あ、そっか。フェーンさんが、未成年だ」
ぽろっとこぼれた。そうだ、フェーンさんの見た目が十五歳くらいだから、抵抗があるんだ。
「…っ!!??ボクっ、成人済みだよぉ!!」
悲痛な訴えが聞こえた気がした。マジか。
「あー…。フェーンも一応、160は超えてるもんね。外見が問題なんじゃない?」
ジュダさんがそう返すと、えぇーっ!?と声が返ってくる。
…ひゃく、ろくじゅう?
「フェーンは確か、172歳とかその辺だったかな。ちなみにヒューガは236歳、ぼくは265歳ね」
「年齢差っ!!」
俺、28!
でもそうか、当たり前だけど種族が違うっぽいからそういうこともあり得るんだろうな。さっきのジュダさんの発言からしてここでの成人は160歳らしいから、確かにフェーンさんは成人済みなんだろう。
「むぅーっ…。じゃあ、これだったらいいでしょ!」
「待て隠せ!」
ばんっ!とフェーンさんが飛び出してきた。ヒューガさんが、首に下げていたタオルをきゅっとフェーンさんの腰に巻く。
「…わぉ」
髪のハネ具合、色、大きな空色の目。それらの特徴からフェーンさんだとわかる。でも、見た目がぐんっと成長していた。
歳の頃は19とか20とか、そこら辺だ。細くはあるけれど程よく筋肉のついている、美少年。
「ねっ!これならいいでしょ!」
…え、あ、はい。
「…いやいやいや、え!?」
「フェーン、いきなりすぎ。もう…。あのね、ぼくたちが獣人と獣そのままの姿に変えられることは前、話したでしょ。それと同じ感じで、多少なら外見年齢を変えられるんだ」
まあ、これで条件はクリアだよね。ジュダさんが言って、俺はじりじりと追い詰められた。とん、と背中にドアが当たる。とっ、と顔の横に手が伸ばされる。
…いわゆる壁ドン的なシチュエーション。お風呂上がりだからか、ジュダさんからはいい匂いと熱が漂ってきて、俺が赤くなるのは多分そのせいだ。
「好きだよ、修斗。嫌だったら途中で止めてくれて構わない。むしろお願いだ。…だから、抱かせてもらってもいいですか」
耳元で、そっと囁かれる。こんなの訊くの、ずるいと思う。答えなんてもうわかってるだろうに。ありがたいけど、イジワルだ。
「…おねが、します…」
昨日、日付感覚ミスって誤投稿したものです。ご迷惑おかけいたしました…。
昨日、水曜日だと思ったんですよね何故か。なんでだろ。




