第九話、ルーグルルドにgo!(後)
ざくっ。
振り上げた鍬が土にささり、いい音が出る。さんさんと、というほど強くはない日差しはあたたかく、リズム感を掴んできた俺はざくざくと耕し始めた。
「なあ、ヒューガさん」
「む、どうした」
「ここは何植えるんだ?」
上の服を脱いで、薄い半袖半袖一枚になったヒューガさんが汗を拭いながら俺を振り返った。たくましい。
「ポムだろうな」
あたりを少し見渡した後、ヒューガさんが言う。ポムは確か、フランス語でリンゴのことだ。ここでも果物的な感じだろうか?
「ポムってなんだ?」
「お。そうか、知らぬよな。ポムとは肉のことだ」
あ〜、残念違った。そっか肉か、それはわかんな…
「畑に肉っ!?」
「ぬ!?」
…二人で数秒間見つめ合ってしまった。
「肉…とはポムやポマのことで、木になるものであろう?…?」
「木になるの!?」
ど、どういう光景なのそれは!?
「肉は…俺らは牛や鶏、あと豚とかを捌いて食べてたよ」
「おぅ…。それをこちらでやると共食いだな」
うわ、確かに!
重大な文化?の違いが発覚してしまった。そもそも世界の仕組みが違うんだけどさ。
「木になる…って、えっと…」
「木に、肉がこう…つくのだ」
…うん。異世界すげぇ!
◇◇◇
牛肉はポム、鶏肉はポマ、豚肉はポミ。
俺の…というか現実世界?のものに当てはめるとこうなる。ちょっと木に肉がなるとか衝撃的すぎるけど、まあ異世界ってそんなもんだきっと。
「え、放っておいたらどうなるんだ?」
腐っちゃうのかな。農作業を手伝った俺らは再び馬車に揺られ、城へと向かっていた。
「燻製になるよっ」
にぱー!と土まみれのフェーンさんが、ジュダさんに頬を拭われながら言う。
「それは我が言おうと思ったのに…」
むすっと膨れながらヒューガさんが言って、拗ねた猫みたいな表情にみんなで笑った。
◇◇
「ヒューガ、ボクお風呂入りたい」
お城について歓迎された俺らは、とりあえずヒューガさんの部屋に来ていた。土まみれで座るに座れない俺を見かねたのか、フェーンさんが言ってくれる。
「む、そうか。…そうだな、では修斗、先に入ってくれぬか」
しばし悩んだあと、三人が顔を見合わせて、ヒューガさんが俺に言ってくれた。うわ、ありがたい。でも俺だけ入るのは申し訳ない気がする。
「え、でも俺だけ入るのもだし、先どうぞ」
「いやいやいや、ここはしゅーと優先でしょ」
「そうだぞ、というかフェーンは我のセリフを取るんじゃない」
お互いに優先し合っているせいで、決着がつかない。わあわあと揉めている俺たちをじっと見ていた(そしてしれっとヒューガさんのクローゼットから服を取り出して着替えていた)ジュダさんが、にこっと笑う。
「そうだなぁ。…じゃあ、みんなで入らない?」
◇◇
どうなることかと思ったでしょ。俺も思った。さすがに一緒にお風呂は無理だろって。
でもね、獣人って強かった。物理的に。
俺は今、狼とチワワとゴールデンレトリバーと一緒にお風呂に入っています。わあ、情報過多。
いろいろ現実世界では大丈夫かって思うことも多いんだけど、とりあえず平気みたい。感染症とかはないし、体温調節も自分でできるんだとさ。
「これだったら問題ないであろう?」
湯で濡れた体を俺にそわせて、ヒューガさんが満足そうに言う。
「めっっちゃ幸せです…!」
ぎゅっと抱きしめても大丈夫なのが最高である。人の姿(服着てくれた)のジュダさんに洗われたフェーンさんが駆けてきた。
「フェーン、あまり走ると危ないぞ」
「ヘーキだもん!」
ぱしゃんっと飛沫が俺にかかる。ジュダさんも犬の姿に戻って、するんと滑り込んできた。
「…いいな、みんな仲良しだ」
わちゃわちゃと目の前で楽しそうにしている犬たちを見るのは楽しいものである。
「…そうだな、皆仲良しだよ。それとな。其方も『みんな』に入るんだぞ」
そう言って、ヒューガさんが耳の辺りに顔を寄せてきた。
…そっか。
俺も、ここに入っていいんだ。
それに気づいて顔が熱くなったのはきっと、お風呂のせいだ。たぶん。
ちょっと今、お通夜だなんだでゴタゴタしてて明日上げられそうにないので上げちゃいます
安定してなくてすみません
読んでいただきありがとうございます




