心臓晒して泣けなんだ
注意事項1
起承転結はありません。
短編詐欺に思われたら申し訳御座いません。
注意事項2
恋愛です。R15です。
苦手な方はご注意下さい。
体育座りをよくする訳。
互いに溶け合う程に交わって、深海に落ちて行くように眠った後、不意に目が覚めた。隣の女を見る。今日は逃げ出してはおらず、顔だけ出して眠っていた。閉ざされた瞳から流れるのは一筋の泪。怖い夢でも見ているのか?
「おい」
軽く肩を掴んで左右に揺すってやると、静かに瞼が開いた。瞳は未だに濡れていて、酷く困惑した色を写す。人差し指で拭ってやると、今度は顔を隠すように布団の中へ。
それから暫く、女はそのまま泣き続けた。しくしくと、しくしくと。
「何があった?」
「よく覚えてない。でも起きたら泣いてた。心臓が痛かった」
比較的落ち着いて来たのを見越し、髪を撫でながら問いかける。返答は曖昧だった。それでも悪夢を見ていた事は明白で、その傷を癒してやりたい気持ちに駆られる。
女はおずおずと俺の手首を掴むと、目だけを布団から出す。上目遣いに様子を伺ってくる。何かを求めてくる。
「どうした?」
「膝枕……して欲しいな……と。嫌なら別に……」
「あぁ」
互いに被さっていた布団を剥がすと、女の状態が良く分かる。胎児のように丸まって、小さくなっている。此奴は良く体育座りをするが、それをこてんと横にした構図だった。正座を作るとその上に小さな頭を乗せる。何だか母親にでもなった気分だ。
少しでも安心出来るように、頬やら髪やらに触れていると、ぽつぽつと語り始めた。
「体育座りがね、落ち着くの。急所、全部守ってくれてる気がして。怖くなるとつい……」
「ん……。やっぱり不安なのか」
余り笑顔を浮かべた事の無い人生だ。此奴の友人に会った時もガン飛ばしたし。けれども今はと、ぎこちなく口角を上げる。女はそれを見て、おずおずと体勢を崩し始める。少しリラックスしたように脚を崩す。
「昔からの癖なの。泣きたくなるほどボロボロで、これ以上どん底に落ちるなんて事も無いはずなのに、体だけは守ろうするの。一生懸命心臓とか、内腿とか、首とか、そんな急所を必死になって」
「生きたいって、思ってるからだろ」
まず、体から。次に心。そうしてゆっくりと自らを取り戻していく。何もおかしな事じゃない。不安要素増やして泣けるわけ無いだろ。自分の心と真正面から向かい合わないと、自分で慰められないだろ。
段々と情緒が戻って来たらしい。生っ白い腹やら脚やらを晒すと、今度は微睡み始めた。昨日は結構無理をさせたから、そのまま眠ってしまえ。
布団の下で体育座りして、色ん事と向き合うんですよ。
嫌な事があった時とか、明日が不安なとき。
急所を出来る限り晒さない格好だから、最低限の心の余裕が生まれるのだと思います。
活動報告にも書きましたが、大人になると、守るものが多すぎる。
子供以上に、自分の身は自分で守らなければならないのです。
評価も立場も、何もかも。
何時もこの子がよく体育座りしている理由。
床だろうが、椅子だろうが、寝る時だろうがする理由。
一作目からさせてますけど、作者が可愛いと思ってさせてる訳じゃないですよ。確かに可愛いですけど。情緒乱しにかかってますけど……。
何度も言うようですが、メンヘラ入ってます。
それとは別に不安症です。
目を離せば消えそうな程のメンタリティです。
そんな自分を少しでも生かす為の手段なんじゃないかと。