短編 58 オカマと行く奇妙なジャーニー
他にもオカマ物は色々考えてました。今回は……あ、すごいですよ。この短編にしかオカマが出てない……キャサリンさーん! あなたがいたわー!
まぁ冗談はその辺で。
これは短編だけど連作前提で書かれたものになります。いくつもの冒険を綴る壮大な物語……その序曲。という感じで作ってみました。
世界はひとつではない。
人の数だけ世界は存在する……なんて話ではなく、実際に『世界』は複数存在するという話。
そう……今駆け抜けているこの世界もその一つ。
「正樹ちゃーん! ボーッとしてるとお尻かじられちゃうわよー?」
「黙れこのオカマ野郎! てめぇのせいで俺達は追われてんだよ!」
私、近藤正樹。異世界に堕ちました。何故かマッチョなオカマと一緒です。神様酷いよ。そこは可愛い女の子でしょうに。
今日も学校の朝練に行くべかーと家を出たら穴に落ちました。まさかの玄関開けたら一歩で落とし穴直行です。
そしてこの世界『なんか猫がいっぱいいてお尻をかじってくる世界』に堕とされたのです。
「にゃー! お尻をかじらせるにゃー!」
「あっちのデカイのは固そうにゃ! 柔い方が好みにゃー!」
「あらー。正樹ちゃんたらモテモテねー。リリカ妬いちゃうぅぅ」
オカマが走りながらくねった。死んで良いと思う。しなを作んな。
「うっせぇ! お前が諸悪の根源だろうが!」
今、僕らは草原を駆けています。モンゴルの大草原みたいな場所です。僕とオカマが先頭で、そのあとに夥しい数の喋る猫達が二足歩行でトコトコ追ってきているのです。
ぶっちゃけ可愛くてたまりません。こんなときでなければ写真に納めて宝にするのに。
疾走すること既に十分。この世界に来てから大体十分でもあります。
「にゃー! お尻かじらせるにゃー! 国王暗殺を企んだのはそれでチャラにしてやるにゃー」
「あら、正樹ちゃん聞いた? なんか許してもらえそうよ?」
「お前が潰したんだろうがぁ!」
そう。このオカマ。このマッチョなオカマは自分よりも少し後にこの世界にやって来たのです。
転移物のお約束として僕は国王の前に堕ちました。尻からどすんと。そして目の前にいた国王『でっかいにゃんこ三世』からこの世界について説明を受けることになったのです。
その途中、このマッチョなオカマが国王の頭上に堕ちて来ました。『でっかいにゃんこ三世』は巨大な筋肉の塊に押し潰されて『ぷぎゅう』されてしまったのです。
そして逃避行が始まりました。
「あたしリリカ。よろぴくー」
「オカマじゃん!?」
そんな陽気なオカマに抱えられて僕は城から連れ出されました。城門はこのオカマのヤクザキックで吹き飛びました。多分僕でも壊せる可愛い城門でした。
オカマって容赦ねぇなぁと思ったのも束の間。
「暗殺者にゃー! 者共であえなのにゃー!」
「逮捕にゃー! ついでに尻もかじらせるにゃー!」
「にゃー!」
こうして僕とオカマは城から逃げ出して草原を走ることになったのです。
ぶっちゃけ悪いのはオカマ野郎で僕は無関係です。でもこのオカマのせいで僕は素敵な二足歩行にゃんこ達から尻を狙われる事になってしまったのです。
そして草原を走ることしばし。青々とした草の生い茂る草原に奇妙な物が見えてきました。
「見えたわ! あれがゲートよ! 正樹ちゃん! 飛び込んで! 私の胸に!」
「飛び込むのはゲートだろうがよ!」
このオカマ、既に八つの世界を駆け抜けたオカマでした。神様酷いよ。八つの世界をなんだと思ってるんだよ。
このオカマは草原を駆け抜けながら説明してくれたのです。
『どの世界にもゲートがあるの。そこを潜れば元の世界に帰れる……って話よ? いつかは当たる! みたいなノリみたいだけど』
なんじゃそりゃ!
と思いました。
『あとねー……平和な世界は少ないわ。基本的に現地人は敵と思いなさい』
あ、うん。僕もこんなんが現れたら敵認定すっからそれは分かる。討伐だよね。マッチョなオカマだもん。衣装は何故かレオタード。三人姉妹で言うところの次女だね。うん。胸毛で巨乳とか意味が分かんない。
『異なる世界は本来私達が居てはならない世界なの。だから早急にゲートを見つけてこの世界から出る。それが鉄則よ』
猫の王様を潰してなければ説得力があったのに。真面目な顔のマッチョなオカマ。レオタード装備。そして背後には二足歩行のにゃんこ達。
……酷いよ神様。
せめて猫だけにしてよ。
「さぁ正樹ちゃん! 次の世界に行くわよー!」
「俺は元の世界に戻るんだ!」
「あらあら、楽しまないと損よ? 異世界ひゃっはーしたくないの?」
したい! にゃんこに埋もれてひゃっはーしたい! でも僕は猫アレルギーなんだ!
「くそがぁぁぁぁ!」
そして僕はゲートに飛び込んだ。黒くてうねうねした霧のようなものに。
気が付いたら洞窟の中にいた。光源は見当たらないのに何故か見えている。多分壁が発光しているのだろう。洞窟の隅々まで見えていて影がない。ゴツゴツの壁もくっきりだった。
鼻につくのは草の香りではなく土の香りと何となくのカビ臭さ。
……ここどこ? さっきまで草原だったのがいきなり洞窟って。
「あらぁ。これはまた……異世界って感じね」
「そうだにゃー」
「ダンジョンにゃー」
うん。確かにダンジョンっぽい。辺りを見渡すと行き止まりのような場所に僕とオカマと猫二匹……。
「うにゃー!? なんにゃ、ここは!?」
猫は三匹になった。
「…………ん?」
猫……なんでここに猫?
「正樹ちゃん。ゲートって基本的に閉じないのよ。早く逃げないと……お尻をかじられちゃうぞ?」
ばきゅーん!
そんな効果音が聞こえそうなポーズをするオカマに僕は膝が折れかけた。
「にゃー。もしかしてこれが……異世界転移かにゃ!?」
「きっとそうにゃ! ハーレム作るにゃ!」
「チートでうはうはにゃ!」
……猫の世界にもそういうのあるんだ。
なんて呆けていたら次々と猫が現れていく。四匹目、五匹目、六匹目。洞窟の行き止まり、そんな場所が猫まみれ。これは……天国かな?
「行くわよー! 今度の世界はダンジョンアタックじゃい! ぐわはははははは!」
「のわー! おろせー! 俺は猫天国に溺れるんだー!」
ここなら死んでも悔いはない。尻をかじられても良い! オカマに抱えられるのはノーサンキュー!
「男ならダンジョン! 女でもダンジョン! オカマも当然ダンジョンじゃい!」
「意味わかんねーよ!」
これが僕の奇妙な旅……『オカマと行く奇妙なジャーニー』の始まりでした。
いや、猫の王様の前に堕ちた時から始まってはいたんですけどね。
このあとも僕とオカマとにゃんこ達の冒険は続きます。続くのですがそれはまた次のお話で。
『なんか猫がいっぱいいてお尻をかじってくる世界』はこれでお仕舞い。
次回は『にゃんこで攻略するダンジョンアタック青春編』かな。ここで三年掛かったから長いんだよね。本当に長かった。
本当にね……長かったんだよ。
酷すぎだよ、神様この野郎。
今回の感想。
次話をはよ。はよ書けい。