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22、未明

 レクセルはハッと目を覚ました。

 今、何時だ・・・?

(っ痛ー・・・)

 二日酔いだ、頭がガンガンする・・・。

 時計をみるとまだ朝の4時すぎだった。

 レクセルは頭を振って昨日の夜を思い起こそうとした。

 体にかかってるカバーを外して・・・。

 あれ、俺いつベッド入ったけ・・・、いや、ここソファーだよな・・・。

 身じろぎをして手にカバーでもなくソファーでもないものの感触に驚いた。

「ん・・・?」

 こ、これ、ミオの上着じゃないか!!

 慌てて昨日の記憶を手繰り寄せる。

 食堂で喧嘩して、ミオを部屋に連れてきて、酒飲んで・・・。

 それから・・・記憶がない。そんなに飲んだっけ・・・?

(お、俺何にもしてないよなっ!?)

 着衣の乱れを確認して、全く乱れもなく靴さえ脱いでないことに安堵をおぼえた。

 よ、よかった・・・。深酒してすぐに意識飛んで本当に良かった・・・。

 ・・・。

 もし、適度な酒量でやめていたら・・・。俺は・・・。

 俺は、何をするつもりだったんだろう・・・。

 ズキズキと痛む頭をかきむしって頭を抱えた。

 本当に最初はそんな不埒な考えはなかった。

 ミオのために食事を用意してやろうと簡単に考えた。それには自分の部屋にルームサービスを呼ぶのが一番早い。士官たちにはそういうサービスが用意されている。ミオは客待遇だが、艦内の規則ではあの部屋にそこまで用意されていない。

 だから・・・。

 その後二人きりになって、うっかり酒なんか飲んだのが悪かった。

 だが本当に「うっかり」とは言い切れない。

 ミオを前にすると心が騒ぐ・・・。

 いつも二人きりが多かったがそこはもちろん抑えてきた。抑えきれなかった時もあったが・・・。

 それよりも二人で過ごす時間が楽しかった。ふらふらと自分は花に吸い寄せられる蜜蜂のようなものだった。だから勉強だ教育だと理由を付けて彼女の元に通っていた。

 ・・・だが今は。

 あの子が欲しい・・・。

 狂おしい思いがレクセルをうずまく。

 だがその花を手折っては決して決していけない。

 それは必ず自分に棘が刺さり、やがて身を滅ぼすだろう。

 あの花はいつか権力という鋏で切り取られて王宮に飾られるものだから・・・。 

 くだらない思いに駆られていると、


フィーッ!フィーッ!フィーッ!


 突然大きな音が部屋中に響き渡った。

 緊急警報っ!

 レクセルは即座に頭を切り替える。

 スッと冷えた頭が全身に緊張を走らせる。


 ピピッ


 携帯端末にかかってきた通信を即座に取る。

「何事だ」

「レグス敵機が艦内に侵入、捕虜を連れ去った模様」

「分かった」

 携帯機を切ると卓上の操作盤に手を伸ばす。

 艦内情報を開くと機関室手前、捕虜収容施設の辺りに人が集まっている様子が分かる。

 だが何分にもまだ明け方、起きている人間が少ないようだ。

 艦内が未明の時間を狙っての計画性、手際の良い捕虜収奪・・・。

 内通者がいたか・・・。

 そしてふっとフェルム中佐と機関室前で出会った記憶が思い起こされた。何故彼女は彼女と関係のない場所にいたのか?

 まさか・・・。

 操作盤のキーを叩き、フェルム中佐の部屋へコンタクトを入れる。

 ・・・出ない。

 次に艦橋に。

「はい」

「そっちにフェルム中佐はいるか?」

「オーベルド少尉!大変です、早くこちらに来て・・・」

 若い女性オペレーターが慌てた様子で対応に出た。

「分かってる、とりあえず聞きたいんだ。フェルム中佐はいるか?」

「いいえ?この時間ですし。まだ部屋じゃないでしょうか」

「いや、もうそっちは連絡したが、応答がないんだ。すまないが見かけたら連絡をくれないか」

「は、はい分かりました」

 通信を切って短く息を吐く。当たりらしい、情報担当の彼女のことだ、うまく艦内の設備を操作して敵を導きいれて捕虜とともに逃げたに違いない。

 元からあまり人と関わらない感じではあったが、まさかレグスの諜報員だとは・・・。

 とにかく外へ出ようとした時今度は卓上の操作盤が鳴る。

 ミオにつけた召使いからだった。

「何だ」

「オーベルド様、ミオ様はそちらにいらっしゃいませんか?」

「何を言っている・・・」

 召使いを叱ろうと思ってはたと思いつく。

 ・・・、そういえばミオはどこに行った?

 ここにいないということは出て行ったんだよな、俺が寝てしまったから・・・。

 その後どうしたんだ?

 艦内には警備システムが監視してるからミオが一人でうろうろしてたら誰かが気づいて部屋に戻しているだろう。まさかこの時間までほっておかれてはいないだろうし。

 でも召使いがミオの不在を問うた。

「本当にいないのか?トイレとか、風呂とか」

「いえ、一通り調べましたが」

「そうか・・・。緊急警報ですぐにミオの様子を見に行ってくれたんだな。いい判断だ、感謝する」

「いえ、そんな・・・」

「とりあえず近くを探してくれ。どこかで迷子かもしれない」

「はい」

 通信を切って片手で髪を掴み、ぐしゃりと握りつぶす。

 すごく、すごく嫌な予感がする・・・。

 いなくなったフェルム中佐、いなくなったミオ・・・。その示す先は一つしかないような気がする。

 

 

 

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