10、呼び出し
次の日、艦橋での朝の定例会議が終わるとすぐにレクセルはミオのもとに向かった。
「体調の方はどうだ?」
「おはよう、れくせる」
昨日とは違いすっかりと調子のよくなった感じのミオ。笑顔で迎えてくれた。
「ああ、おはよう。すごいな。もう挨拶を覚えたか」
「おぼえたか」
「誉めたんだ」
言葉では伝わらないと思い、その頭をそっとなでてやる。
彼女はくすぐったそうにして嬉しそうに笑う。
「それで今日から午前中は勉強、午後から検査というスケジュールを組もうと思う」
そう言って幼稚園児が使うような教科書やノートをミオの前に置いた。
ミオは首を傾げるばかりだ。
「言葉を覚えるんだ」
「ことばをおぼえる?」
「そう。これがこの国の文字だ」
かわいらしい絵と大きな文字の本を開いて見せる。
「これは『ア』と発音する。言ってみろ、ア」
「アー」
「そう、次は・・・」
「部屋に入り浸りだって?」
いつも小うるさいレクセルがいなくなって、艦橋でのんびりしていた艦長に報告が上がる。
「はい。今日も朝から。昨日の夜も一緒にいたようですし」
「朝まで一緒だったわけじゃないんだろ?」
「はい・・・」
「ならいいんじゃないか?」
「いいんですか?」
「かまわんさ」
艦長としてはのんびりできていいので特に干渉するつもりはない。
「くそ真面目なあの男が珍しく興味持った女なんだ。異星人だし、まだ子供だけど・・・」
「だから問題じゃないかと。一緒にさせておいてこの戦争が終わった頃に子供ができてましたなんて騒ぎになったら・・・」
「あー、分かった!一言言っておく」
「頼みましたよ」
まったく、真面目な奴らばかりだ。
端末を操作してミオの部屋へコンタクトを送る。
出たのはレクセル。
「おい、お前今どこにいる」
「ミオの部屋ですが・・・」
「ちょっと来い」
「はい・・・」
その後、日ごろの鬱憤もあって一言ではすまなかったようだ。
レクセル・ハユテル・オーベルド24歳、容姿端麗、頭脳明晰、未来の伯爵様だが叱られるの図。