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1、プロローグ

 


 宇宙にペンダントを落とす―――。


 それは現在のフィレン帝国の前身ともいえる大フィレン連合国が宇宙に進出を遂げたばかりの頃の話。

 ある女性が恋人との思い出の品であるペンダントを、思い出もろとも宇宙に放り投げるという暴挙をやってのけた豪快な偉業を伝えるものだ。

 彼女とその恋人は貧しいながらも結婚を誓い合い、おもちゃのような小さななペンダントでささやかな愛を交わしたあった。だが恋人は結婚直前、彼女を裏切りほかの女性と結婚して逃げるという屈辱的な仕打ちを残して彼女の元を去っていった。

 あまりの悔しさに彼女は当時始まったばかりの宇宙旅行に目をつけ、船外宇宙遊泳の申し込みにもパスして、


「こんなものこうしてくれるーーーー!!」


 こうして放り投げられたペンダントは宇宙の深淵に消えていった。

 そこで「宇宙にペンダントを落とす」とは永遠の別れを告げる、二度と手に入らないようにする、などの意味に使われるようになったという。

 重力に囚われていた人々が宇宙に足がかりをつかんだ当時、今までただ見上げるだけだった宇宙が、海に対して同じことをするように人の感情のはけ口になり得るのだと、自分たちの身近になったものだ印象づけた出来事であった。


 それが最近いい意味に転用されるようになった。


 時代はすでにフィレン帝国の覇権が、開拓した宇宙空間のすみずみにまで及んでいた。

 フィレン帝国は栄華を誇り、巨万の富を築き上げ、歴史上類をみない繁栄を誇っていた。

 だが覇権を確立したフィレン帝国といえど、帝国に敵対する残存勢力は健在で、我こそが銀河の正統なる支配者なり、という気概のものも少なくなかった。

 ウィグリッド星を母星とするレグスががその最たるもののひとつで、この時反旗を翻し、帝国に侵攻を開始した。

 レグスはフィレン帝国が未知の物質の新兵器をもってフィレン帝国艦隊を撃滅、帝国は多くの宙域を失う帝国創建以来の危機に陥った。


 このままでは帝国は滅亡する・・・。


 誰もがそう思った時、一人の異星の少女の出現により帝国はその危機を脱する。


 その奇跡的な勝利を、「まるで宇宙に落としたペンダントを拾ったようだ」と、メディアが書き立てたからだ。


 よって今では「宇宙にペンダントを落とす」は、決してあきらめないこと、失くしたものを見つけることができる、奇跡的なこと、などという意味に使われるようになった。


 なので例えば、以前なら「宇宙にペンダント落とすぞっ!」神経質そうな男がそう言ったなら「お前とは別れてやるっ」と脅しの文句になったが、今「宇宙にペンダント落としちゃうからっ」と可憐な女性が言ったなら、「あなたのこと絶対にあきらめないから」という具合になる。


 その少女の名前はミオ。異星より来たる帝国救国の女神。


 その異星の星の名は「地球」という・・・。





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