異世界ポーカーフェイス問題
『第4回「下野紘・巽悠衣子の小説家になろうラジオ」大賞』投稿作品です。
キーワードは『ポーカーフェイス』です。
異世界小説ではポーカーフェイスをどう表現するのか。
そんなところから一話仕上がりました。
どうぞお楽しみください。
「お終い、ですかな?」
嫌味に響き渡る魔貴族エレガスの哄笑。
くそ、ようやく反撃の糸口が見つかったってのに、体力も魔力も限界だ……!
見逃しちゃ、くれねぇよな……。
「そちらこそよろしいの?」
「何?」
相棒クルーリアが冷静に放った言葉で、エレガスが眉を上げる。
何だ? 何を言う気だ?
「ここに貴方がいるなら、玉座は誰が守るのかしら?」
「……! 貴様らは陽動か! 魔王様!」
エレガスが転移魔法を使い、姿を消した。
え、何、どういう事?
別動隊なんて聞いてないけど?
「下手に頭が回る分、勝手な幻を見るものですね」
「え、あれブラフ!?」
俺まで騙された!
表情を全然変えないから!
「ポーカーフェイスには自信がありますので」
そう言って微笑むクルーリアの笑顔さえ本当かどうか、俺には判別がつかなかった……。
「先生」
「何だい?」
「この世界にはポーカーがあるのですか?」
「へ?」
「クルーリアが『ポーカーフェイスには自信がありますので』と」
「あ」
あちゃ〜。しまった。
こういう言葉、つい使っちゃうんだよねぇ。
「前担当から先生はこういったミスが多いと聞きました」
真顔で詰められると怖ぁい。
その前担当みたいに、上手い事やってくれないかなぁ。
「流石は二年目で僕の担当になるだけの事はある。そこでいい感じの言い換えを考え」
「チェックはします。ですがこの物語を紡げるのは先生だけです。ご自分でお考えください」
「……はーい」
ヨイショしてもポーカーフェイス……。
こりゃ真面目にやるしかないかねぇ。
無表情、だと次の笑顔に繋がらない。
真顔、も違う。
感情を出さない、はどこか野暮ったい。
……やっぱり若葉ちゃんのご機嫌を取って……。
「若葉ちゃん、僕の作品全部読んでくれてるんだって?」
「はい」
「嬉しいなぁ」
「担当として当然です」
「だから僕も若葉ちゃんを、クルーリアとして作品に出したくなったんだ」
「!」
「だからこの言い換えを、ってあれ?」
「わ、私がクルーリア……!?」
赤くなって頬を抑えて、いつものポーカーフェイスは?
「先生に憧れてこの出版社に入って、担当になれて、でも仕事だから心を見せないようにしないとって思って……!」
心を、見せない……!?
「私、先生の事」
「それだ!」
「へ?」
「ポーカーフェイスの言い換え! 心を見せない! しっくり来たぁ! ならこの前後も変えて……!」
「……」
若葉ちゃんが帰った後、前担当からめちゃくちゃ怒られた。
乙女心がどうとか……。
僕何かした?
読了ありがとうございます。
ちなみにポーカーフェイスを調べると、『感情が読めない無表情』と出るのですが、ポーカーの駆け引きって無表情だけじゃないと思うんですよね。
「花◯院の魂を賭けよう」
グッド!
次回でお題コンプリート!
『屋根裏』で書く予定です。
よろしくお願いいたします。