騎士の組織編成
拙いと思いますが、生暖かい気持ちでお願いします。
俺達は今執務室に移動している。
祥太はシリウス君と一緒に寝る様だ。
すっかり仲よくなった様で離れがたい様だった。
世界が違うし、明日には帰るのだ。
来たくても来れるところではない。
夜遅くまで話をしていたとしても、周りも大人も判っている分強く言えない。
だから本人達には、明日の事を考えて行動する様にクギを刺す程度にした。
「しかし明日で全て終わらせれるか。ホント何も起こってくれるなよ」
ヒルトがフラグを立てるような事を言う。
机の上にはこの国の地図があり、王都の地図もある。
衛兵が待機場の見直しをしているのだ。
ついでに騎士団の編成とその他関連の部署。
細かく見て行く事は出来ないが、スピーディーに処理を進める事が必要だろう。
「こうやって見るとやっぱり階級が阻害しているよな。上がほとんど上位の貴族階級だ。下位の意見の通りが悪い。ムダに遠回りだし、フットワーク軽くても下まで目は向けるの大変だろう。ヒルト下位の兵士の意見とかどうしてるんだ?下位が一番市井と関わり合っているんだ。下位の情報が上にきちんと上がって来ないと、市井の不満も溜まるし治安も悪くなる。風通しが悪いと一気に悪化するぞ。国の信用問題にもなるからな」
「確かにそうですね。それに騎士と衛兵の意見が割れるのも問題です。スラム地区など一日に何回騒ぎがおきているのか。騎士が直接巡回してもいい場所なのに、行った形跡がないですね。」
俺とユーグさんがヒルトに聞く。
クラウドさんはそれを静かに聞いて、地図を見ている様だ。
俺が記した目印の場所は何か所もあるが、色分けをして目印を置いている。
赤が衛兵のみ。青が衛兵と多め。黄が衛兵と騎士。そして黒が衛兵と騎士隊。
放射線状に広がる様にしている。
バトンリレーの様に人がすぐ駆け付けれるように考えた。
城に行かずとも人数がすぐ集めれるだろう。
もちろんこれには冒険者ギルドの協力も必要だ。
「ヒルト実際どうなってる。お前現場主義だが細かい事苦手だろう。」
クラウドさんもヒルトに聞いている。
ヒルトの性格を考えても分け隔てなく接していると思うけど、さすがに身体は一つしかない。
全部を見渡すという事は出来ないから、部下が関わってくると思うんだけど………
「ヒルト、この組織図見ても結構上に人員多いよね。全部機能してるの?特にこの要人担当部署。これさ個人にお任せでよくない?ここに騎士必要ないよね?雇っている護衛騎士いるんだから」
「確かに……… 私には従者がいますし、ついている者は近衛兵です。」
「ここに使っている者たちはどこにいる?」
「ウ~~~ン……??」
ユーグさんとクラウドさんも、騎士の組織図を改めて見たのだろう。
疑問が浮上している様だ。
「ねぇ、まさか騎士だけの話じゃなくて、他の組織もこんな状態じゃないよな?」
俺が顔を引きつらせて聞いてみると、三人が顔を見合わせる。
オイ、どういう事だよ。そりゃ………
「考えてみたら組織の見直し考えた事ありませんでしたね。」
「だな、各組織の長に任せていた感じだったが、俺の組織なんでこんなに多いんだ?」
ユーグさんとヒルトの会話が不穏なんだけどね。
「承認しないと普通増えないよね?」
皆の言う事を俺が突っ込むと、そうだっけ?と疑問に思っている。
俺はお前らをしっかりしたヤツと思っていたが違うのか?
「イヤ、そのまま引き継いだ感じだったはずだ。騎士の組織が凄くあるなと思ったからな。他もこんな感じなら見直さないと無駄が増えるうえに、予算が圧迫するぞ 」
クラウドさんが根本的な問題に気づいた。
でも人を切るのはなかなか難しいものだ。
「ヒルト、騎士って書類とか対応する人はどこにいるの?ヒルトもしているのか?」
「別に各人でしている感じだろう。俺も時々サインをしている」
「基本騎士で書類を作成している者は決まっているんじゃないですか?書式が同じですし字も同じだったと思います」
ヒルトとユーグさんの言っている事が食い違っている。
俺は思わず頭を抱えた。
ホントマジで大丈夫なのかよ。
「ユーグさん、ほとんどその人が作成しているのでしょうか?」
「そのように思います。ヒルトそうだよな?」
俺が確認してみると、返答の内容が余りによろしくない。
「基本サインばかリで、そこらへんは副団長らにお任せだから……… 」
と弱々しくいい訳にもならない事を言うヒルト。
それを聞いて俺は社畜という言葉が頭に浮かぶ。
組織はたくさんあるのに、書類はその者がほとんど書いているという状態。
相当なオーバーワークではないだろうか。
クラウドさんとユーグさんも目が段々と据わって来ている。
ヒルトも雲行きが怪しさに、顔を引きつらせている。
「ヒルト何が問題か判っているよな?こんなに組織あるのに、何で同じ人物が書いているのだろう?」
ユーグさんが静かに詰問している。
「なあ……… 騎士の賃金てどんな計算してんの?例えばこの人賃金いくら??」
俺はそれが気になって仕方ない。
だって書類に拘束されるって事は、ずっと机の上だ。
ならこれを書いている者はどうなるのだろうか?
騎士配属扱いだとすると、ヤバい結果にならないか?
「確か検挙率とか遠征の回数とか、技術関係だった……… 」
クラウドさんがため息を吐いてながら言う。
ヒルトが顔を蒼褪めている。
ユーグさんもまさかっと思ってヒルトを見た。
だってヒルト知らないんだもん。
いつも書いている人物を、ヒルトはずっと副団長達と思っていたのだ。
「ヒルト、字を見て同じ字だと気付かなかったの?ちゃんと読んでる?」
まさか読まずにサインだけしています、なんてことはないかと確認をする。
「読んではいる。変なのは突き返してるし、大まかな事は副団長らに任せていたから……… というかちょっと待って、騎士団ヤバくね?」
そう、組織としてかなりヤバいのだ。
いざ事案が発生しても、たらい回し状態になり時間がかかるかもしれない組織図。
そして書類はたった一人が担当し、書かれているという事実。
悪い見方をすれば書類を改ざんし放題だし、その人物を抑えたら騎士団は機能停止に陥り回らない。
そしてどうも給料もあまり良くないだろう。
つまり辞められたらヤバいという事だ。
ここまで訳のわからない組織を一番判っている人物が、いなくなったらどうなるのだろうか。
”というか過労死でいなくなるぞ”
俺は心底呆れ返って、なんとも言い難い気持ちになった。
「騎士団の組織編成は絶対やるぞ。そして書類関係は別の部隊を作り、予算関係もそちらに回す。権限もそれなりに与える感じでしないと、騎士の奴らは舐めるからな。文官どもといつも衝突するから想像できるだろう。」
ユーグさんがウンザリしたように、新たな組織を編成を書き出していく。
大まかにどんな風に組織を作るのか………
「クラウドさんには個人的な組織持ってないの?ユーグさんはどう?」
俺がふと気になって聞いた。
直属の組織というモノがあると動き易いからだ。
「私には確かあるな。暗部とかがそうだろう。王家の血筋の者が組織する。情報やいろいろあるな」
「私もそうですね。情報収集関係で偵察部隊がいますね。」
「それじゃあ、そこから市井の情報を拾っている感じなんだ」
俺がそうやって聞くと二人は静かに頷いた。
ならこの騎士団にある諜報隊はどうなっているのだろうか?
ヒルトに指差してどうなのよと見ると
「俺もこの二人に聞いていたパターンだったから、どうなんだろうな?そういや余り騎士団から、真新しい情報貰った記憶が余りねぇ……… 」
「お前いい加減にしろよ」
「ただでさえ時間がないのにあり得ません」
クラウドさんとユーグさんがブチ切れ寸前だ。
騎士団の編成が急務である事は浮き彫りになった。
これじゃあ、あっちこっちで軋轢があり過ぎて、処理に時間がかかるだろう。
「ヒルトのフットワークの軽さで、市民の不満を抑えている感じだな。その分お前自身の負担も大きいはずだ。ほぼ出ずっぱりだろうが!」
ユーグさんが怒り心頭でヒルトに文句を言った。
つまり仕事量が、個人個人で偏りがあり過ぎるという事だった。
「騎士の人数は把握してるんだよな?能力の違いもあるだろうし、そのあたりを考慮して編成しないと、うまく機能しないと思う。今ある組織の全体の状況もわからないだろう。騎士で会議とかあるの?」
「出ずっぱりだからないだろう」
クラウドさんがヒルトが言う前に一刀両断した。
ヒルトもそうなんだろう、何も言わず目を彷徨わせている。
じゃあ組織は誰が中心に指揮をしているのだろう。
ヒルトはもう指揮より象徴状態だ。
誰もいないとなると無法地帯だ。ある意味スラム街より質が悪い。
横ではユーグさんが先程から書いているが、俺はそれを静かに見ていた。
ヒルトはクラウドさんからお説教状態。
これに懲りてきちんとして欲しいものである。
もちろん減給と書類整理というヒルトにはキツイお仕置きが課せられた。
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大まかに内容は決まった。
指令部があり、その下に総務部(事務)・戦闘部・防衛部・諜報部・騎獣部・技術部・医療部。
戦闘部は先遣隊・工作隊・調査隊・討伐隊。
防衛部は先程色分けに使った色をそのまま使って隊を分ける。
地図の上の印の色と隊の色は関係がない。
赤団警備関係・青団魔術関連・黄団盗賊など外敵監視関連・黒団魔獣関連・白団近衛。
諜報部は他国の軍の監視を目的としている。
ここに斥候部隊エキスパートを配置する事で動き易い。
ただの脳筋ではなく頭脳も入っていないとダメな、エリート中のエリート部隊。
そして他の三部門はサポートチームだ。
「こんな感じでいいでしょう。かなりスッキリしたのではないでしょうか。防衛も色分けしておけば判り易いですし、服も特徴を持たせてもいいですね。戦闘部門も役割分担でいいでしょう。荷物関係は総務で手配でいますし、運びは騎獣か青団でお願いできます。赤団は市井の警備を中心にし、黄団は国境が主になるし、黒団は森の監視と砦でしょうね。青団は火力がある分控えと援護支援をお願いする事にします」
確か魔術団はちゃんと別にあるからね。
青団は魔剣士、騎士と魔術の中間、特殊技能部隊だもんな。
普段は魔術団と連携を取りつつ、他の三部門と知識支援してもいいだろう。
「青団に配属する者は知識とか学者肌の者がいいかもしれんな。参謀と技術など支援できるタイプだろう。」
クラウドさんもやっぱりそう思うよな。
「黄団はできれば語学堪能な者がいいですね。獣人も匂いで探査できるし身体能力も高いです」
「そうだな。語学といえば商人の家の者がいいだろうな。たしか次男や三男がいるだろう」
ユーグさんとヒルトも団のイメージがついている様だ。
そうなると組織は早くメンバーが決め易くなる。
「それなら黒団は冒険者あがりと戦闘狂がおススメって事か……… 」
俺がそんな事を言うと、三人もそう思ったのか苦笑している。
「それなら新人研修は黒団と赤団が中心になるな。」
「だなぁ。そこから個人の資質を考えて振り分けになりそうだ。黒団は魔獣専門な分戦闘技術は磨かれるだろう。赤団はコミュニケーションとフォローだな。本人の希望もあるだろうが……… 」
ただあまり団結力が上がり過ぎると、反発問題になり易い。
市井の中心は赤だけど、場所によっては他の団を交代で配置した方がいいだろう。
情報共有は必要な事だよな。
新人だって他の団の特徴を知る機会はあった方がいい。
「なんとなく色によって特徴がはっきりしたな。赤は団結力・青は知能・黄は特殊技能・黒は武力だな。そして白はマナーや交渉力と護衛力も必要。うん、執事と暗部の技術も多少必要だろう。地位毎に項目につけてレベリングを図ろう。貴族出身も増えるだろうけど、地位のごり押しは出来ないな。」
ある意味周りが知り合いな分、下手な事も出来ないという。
なれ合いされても困るし、付加価値をつけないと舐められる。
また他の部隊と連携を取れないと離れ小島状態に陥る。
コミュニケーションは必須という事だ。
近衛はペア配置が基本。
苦手でもお互い補える相手を互いに選ぶそんな制度にすればいい。
「さて問題はこの戦闘部だな。基本控えの者で戦闘特化と言ってもいい。国同士の諍いや災害級の魔獣に動く者達だ。普段をどうするかだよな。こいつらも交代で各部隊配置でいいか?」
ヒルトが聞くが、俺には国同士の諍いや災害の頻度がわからない分何も言えない。
ただ斥候と混ぜてもいいんじゃないだろうか。
「あのさ、戦闘部は各部隊配置でいいと思うよ。斥候も混ぜていいと思うんだ。ある意味一人部隊なんだ。だからちゃんとそこら辺を理解していないとヤバい。優先順位がキッチリしてないとダメだろうな。」
俺がそんな事を言うと、名前でついつい戦闘狂をイメージしていたのか修正している様だ。
「戦闘部でも脳筋はダメという事か。統率力も必要だし、冷静な対応も必要。」
そうそう、ある意味少数精鋭部隊といったとこだろう。
戦闘を生業とした仕事だ。生存本能の高さがモノを言う。
クラウドさんが眺めながら、困った顔でユーグさんを見ている。
ユーグさんも少し考え込んでいる様だ。
一体どうしたんだろうか?
「この技術部は人員を確保しないといけないな、技術開発が基本目的だから。それにこの騎獣部は今までない分、どんな感じにするのかイメージがつかない。ショウゴが言った部門だがどうするんだ?」
「私の方は、この総務部ですね。今も仕事やっている可能性があるので、いたら連れて来て貰いましょう。旧組織図もわかりますし、新組織図の賛否に出来るでしょう。」
なるほど今まで騎獣なかったんだ。
ラノベではよくある部隊だったけど違うのだろうか?
ユーグさんの話は納得。未だいるなんてどんな状態だよ。
俺はヒルトをジロリと睨むと、申し訳なさそうにしている。
こりゃホントに大変だぞ。どうなってやがる。
「ユーグさん、いらっしゃるならいろいろと話を聞きたいです。新の方も修正案が出るかもしれませんしね。それからクラウドさん、テイマーって職業の人いませんか?」
俺はポンポンと返答していく。
魔獣専門部隊が出来るのだ。
歯には歯をじゃないけど、魔獣には魔獣だ。
ユーグさんは従者を呼び、騎士の書類整理屋を連れて来るようお願いしている。
クラウドさんはテイマーというモノを考えている様だ。
「なあ、テイマーって魔獣使いの事だよな?スウィッチでいたけどよ、この世界では聞いた事ねぇ」
何ですと?!それならダメじゃん。
そんなスキル存在しないって事だよな?
クラウドさんはずっと考え中。
何か思い当たる事があるのだろうか?
「ヒルトいるぞ。ただの調教師として扱っていないか?異様に魔獣に好かれる奴がいたじゃないか、アレがそうじゃないのか?テイマーか……… 神殿に調べる必要がありそうだ。もしかしたら秘匿事項かもしれん」
クラウドさんの話によると魔獣は絶対悪扱いだそうだ。
それと仲良くできるそんなスキルがあれば、神殿側が隠す可能性がある。
もしかした冒険者ギルドでは既成事実で、そんな職業があるかもしれない。
他国では普通に存在する職業という事だ。
これには調査が必要となった。
「でも確かにありだよな。スウィッチの魔獣使い、使い勝手良かったよな。」
ヒルトが独り言の様にニヤニヤしながら言っている。
だから俺が提案した時に反対しなかった訳だ。
でもゲームと現実の魔獣使いを同じにされたらたまらない。
現実あまり重要視されていないものだ。
つまりスキル磨きしていない分しょぼいはずだ。
「ヒルト先程からスウィッチと言っているがそれはなんだ?」
ユーグさんが伝言が終わったのか聞いている。
「ショウタから教わったゲームだよ。スキル画面みたいなもので遊ぶんだ。なぜかこちらの世界の魔獣と戦うゲームなんだが、そこに出て来る戦闘部隊にいるんだよ。魔獣使いが」
ニヤリと笑いなぜか自慢げなヒルト。
そして何故か悔し気なクラウドさんとユーグさん。
何このカオスな世界。俺一人ついて行けない。
「何故か凄く有意義で楽しそうな気がするのだが……… 」
「私も遊んでみたいですね。戦術がわかるという事ですよね」
そんな考え方もあるんだな。
遊んで楽しく知識をたくさん身につけるってヤツか。
でも理想と現実は違うだろう。そうだよな?
俺が不思議そうにヒルトを見ると、ヒルトは俺を見ながら笑っていた。
どうやらそう単純な話じゃない様だ。
読んでくれて、ありがとうございます(*´ω`*)