所詮は王様も人間
拙いと思いますが、生暖かい気持ちでお願いします。
駐車場に着くと駐車してある車をひとしきり眺めるイケメン達。
いろんな車が止まってるからそうなるだろうな。
持ち主がタイミングよく来ないことを祈る。
さて俺は自分の車にエンジンをかけてクーラーを利かせますか。
車の中に入って音楽を聴いてのんびりしていると、満足したイケメン達がやってきた。
ヒルトがさっさと車のドアを開けて中に入って来る。俺の助手席に……
クラウドさん達はドアの開け方がわからないから??としてヒルトを見る。
ヒルトは「いい曲だな」と言って寛いでいた。
コイツは…………いい加減にしろよ!!
ユーグさんの怒りは凄い。まあ、そのおかげでクラウドさんが実は王様だと知りました。
マジで王様だった。俺どうしよう……王様にスェットパンツにパーカーの服着せた。
縛り首にしないでね。ホントお願いしますよ。
そんな中ヒルトはマイペースで、クラウドさんは目を閉じて曲に聞き入っている。
それを見て、この二人似た者同士じゃと気が付き、思わずバックミラーからユーグさんに憐みの籠った目で見てしまった。振り回されて大変だろうなって………
「なあ、またコンビニ行こうぜ!」
ホント自分の欲求に素直だよ、ヒルトは…………
「それじゃ飲み物でも買おうか」
夏だから水分補給はこまめにしないとね。途中のコンビニに立ち寄る。
相変わらずヒルトは騒がしい。ヒルトはユーグさんを引っ張ってトイレに押し込めた。
ガキかあいつら!…………あの二人はほっとこう。
クラウドさんはキョロキョロと見回しアイスを見ている。
食べたいんだろうか?
「クラウドさん何か欲しいものありましたか?」
そう声をかけると少し頬を染めてアイスのパフェのようなものに指差した。
王様甘い物が大好きなんですね。いくらでも貢がせて頂きます。
ふと視線を感じ店内を見ると注目の的でした。
そうでしょうね。乙女ゲームにでてくるような方々ですからね。
そして睨まれる俺がいる。なんでだよ!!
まったく金払うの俺なんですからね。カゴにはカレーパンが3つ入っている。
カレールーでも買っとこうか。スープに入れると言えば料理人がどうとでもできるだろ。
ユーグさんはポケットティッシュを見ている。何なんだろうな……
とにかくサッサしないと時間がなくなる。カゴをレジに持って行きスマホ決済する。
それをジッと見るイケメン3人衆。なんだろう??
まあ会計も済んだし車へ戻る。開け方は教えたので今度は大丈夫だ。
「しかしホントコンビニは凄いです」
「だろう。このパンも凄いんだぞ。二人の分も買ったから食べてくれ」
”俺が買ったんだけどな”
「車はホント早いな。乗ってるのに安定してるから早くても安心感がある」
「外の景色も凄いですね。道もガタガタしない楽ですね」
「それに清潔だろ。臭いどころかいい匂いだし、治安なんてすげえだろ。」
「まったくですね。びっくりです」
「ホントそうだな。」
なんか高評価らしい。嬉しいな。このまま運転手に専念しよう。
「ヒルトの汚い臭い治安悪いって全くそうですよね。」
「これを見ると道のりは途轍もなく遠いよな」
うんうんと三人で頷いていた。まあ一人は王様だ。
三人とも要職についているのだろう。俺は頑張れって心の中で応援した。
「このスピード大丈夫でしたか?」
「「「はい、」」」
イケメン三人でカレーパンってなかなかにシュールだ。
「それじゃ、高速道路ってとこに行きます。今のスピードよりさらに速くなります。」
「これより速くですか!!」
「そうです。今のスピードは人が一緒にいる事を踏まえたスピードです。今から向かう所は車しかな
い道路なのでその分早くなります。」
おっ、高速標識あった。んじゃ行きますか。
”ビュウウウゥゥウン…………”
「…………………………」
ビックリしてる。固まってます。しがみついてます。
「どうです?そこまで感じないでしょスピードの速さ??」
「…………どれくらいの速さなんですか?」
「ウ~~~ン、こちらの馬の速さで考えたらですけど、6~10倍くらいにはなるんじゃないです?」
「「「10倍…………」」」
「大雑把な計算です(笑)」
「「「…………………………」」」
「途中休憩挟みます」
「ありがとうございます!」
「なぁ、窓開けていいか?」
頷いてクーラーをoffにする。あんまり高速運転の時は窓開けないだけど、風を感じた方が速さも実感できるだろう。
案の定ビュービュー凄い事になってやがる。特にヒルトの後ろの席ユーグさんが(笑)
まあそんな事がありながらPAに着いた。停まったと同時に叩かれるヒルト。
ユーグさん髪がボサボサである。知的イケメンからいじられキャラに変わった。
ドアを開けて外に出るとトイレに行きたいという。
まさかチビってないよな…………聞くわけにもいかずトイレへと案内した。
【 ユーグside 】
案内をお願いしてショウゴさんに連れて行って貰った。
別に余りのスピードに驚いて粗相をした訳ではない。
ただ車内の涼しさと飲み物の冷たさで行きたくなっただけだ。
ヒルトの奴が窓を開けたのが決定打だったともいう。
しかし車の休憩所か…………
アレだけのスピードを出して停車しているのに、規則正しく停めてある。
それだけ運転している者は訓練されているという事だ。
よく見るとご年配の女性が運転席に座っている。
それもうちの母とそう変わらない歳だぞ?!!
いろいろ驚く事ばかりで途方に暮れそうになる。
明日クラウドには申し訳ないが休みを貰わないと大変だ。
まあそれはクラウドも同じという訳だが……
前を見るとクラウドが啞然とし、ヒルトに至ってはウワ~と駆け回っている。
私たちはトイレの案内をお願いしたのだが……まさかこのステンドグラスが施された部屋がトイレとでも言うのか?!!
香水でも置かれているのか香りがいい。トイレに行って香りがいいって言う事あるんだな。
花なんか生けてあるし、トイレにだ。
実際あまり人がしている所をジロジロ見るのはよろしくないが、どの者も綺麗を心掛けて使っているのがよくわかるのだ。
ショウゴさんに前に書いている文字の意味を聞いたら
”いつもきれいに使ってくれてありがとうございます”
と書いてあるそうだ。
それを聞いて私は、自分はなんて浅はかで意地悪な奴だろうと思った。
そうだな。誰だってありがとうの感謝の気持ちは嬉しい。
私だって日々国の為民の為に働いている。
しかし感謝やありがとうはクラウドやヒルト以外、最近言われたか?
私自身ありがとうを言ったのはいつだ!!
ここでは訪れた人に綺麗に使ってくれるんですね。ありがとうございます。と綺麗に使ってくれること前提で書かれているのだ。
何て素晴らしいんだ!そう書かれたら綺麗に使わなくてはならなくなる。
たかがトイレと侮っていたが、凄い心理戦が隠されていた。
それに誰もが文字を読めるという事が途轍もなく恐ろしく思えた。
【 クラウドside 】
私はショウゴさんにトイレを所望したはずなのだが…………
余りに違い過ぎるトイレにただ啞然とするしかなかった。
隣ではなぜか興奮状態のヒルトがウワ~と叫びながら走り回っている。
それを見たショウゴさんが凄い勢いで蹴りを入れた。
それに、トイレで騒いだら牢屋行き!汚くても牢屋行き!!
どういう事だ?怖過ぎるだろう。どんな拷問が待っているのだ…
こんなに緊張してするのはいつ以来だ。というか出し難くて叶わない。
まわりのものはサッサと使ってサッサと立ち去って行く。
長々とトイレにいるのも無様というものだ。
「………………」
なんとか出してホッとした。普通に使えばいいのだ。普通に…………
ポンポン♪
満面の笑みで私に個室を勧めるヒルト。
いやふたりで個室に入ったら怪しいからやめろ。
というかお前手を洗って肩叩いたんだよな?!
力にかなわず服に着いた帽子らしきものを握られてズルズル……と個室に連れて行かれる。
まわりの者はギョッとして心配そうに見ている。
ここの国の者はショウゴさんを含め心根が優しい者が多いのだな……
そして…………”パタン”
ヒルトと二人で個室に入ることになった。
******************
俺はその間周りの人たちにわけのわからん説明をして警察に通報されるのだけはやめさせた。
ユーグさんは感動してなぜかトイレで祈りささげていたし……役立たずだった。
二人は個室から出て来た。二人でニヤニヤしていた。
イヤ…………なんか怪しくねぇ?!
二人はわかっていないのかすこぶる満足気。
それが更に怪しく感じる訳で……トイレにいた日本人は皆ドン引きしていた。
ポンポン……
肩を叩かれ隣を見るとご年配の方が……
「アレは大丈夫なのかい?」
と目線を差して尋ねられた。
やっぱり不安だよね。そう思いました(泣)
ひきつった顔で無理やりほほ笑んだ俺。ー秘儀笑ってごまかせー
それを見て何とも言えない表情をしてトイレを出て行った。
他の人達もそれに習い出て行った。
二人はそんな空気も気づかずに、ニヤニヤとしていた。
…………関わりたくねぇ
俺もサッサと終わらせて車に戻った。
少し遅れて戻ってきたイケメン3人衆。
なぜか手にポテトチップスを持っていた。
「それどうしたの?」
聞いてみると、トイレ後に女性のグループにあったそうだ。
その中の一人がちょうどポテトチップスを持っていた。
ヒルトはそれを見て、クラウドさん達にポテチの感動を話したとか……
その間イケメン3人衆に注目の的だったポテチの女性は「ど~ぞ」と笑ってくれたそうだ。(貢いだんだろうな)
恥ずかしいヤツらだ。はぁ……
まぁ貰ったもんは仕方ない。
「そっか、ンじゃ出発しようか」
とりあえず、時間も限りあるのだから先に進もう。
そう、一々突っ込んでいたらキリがないしな!
3人衆が乗ったのを確認し、「出発していいか」と声をかけると返事が返ってきた。
車を出発させ後ろをバックミラーでチラッと見ると、ポテチを美味しそうに食べていた。
”なんだかんだと満喫しているようでよかったよ(笑)”
そのまま目的に向かう。
******************
”せっかくお盆だからな。”
高速を降りて、姉の嫁ぎ先へ向かっている。
お盆になると、その土地ならではの風物詩が行われるからだ。
「ショウゴ、どこに向かってるんだ?」
ヒルトが不思議そうに俺の顔を見た。
そうだろうな、ここら辺は昔ながらの地元の人達が多い。
景色も田舎って感じだし、今までの雰囲気と趣が違うだろう。
ほとんどが木造平屋の日本家屋…川にかかった橋は紅い稲荷橋だ。
その橋には、提灯がたくさん飾り灯されて不思議な風情に彩られている。
「もう少しで姉の嫁ぎ先なんです。ちょっと寄ります。」
そう言って嫁ぎ先の庭に車を停車した。
一応車の中で待っているように言って、家へ向かう。
ピンポーン!
玄関で待っていると姉の「ハ~イ」と言う声が聞こえてきた。
玄関の開け来訪者が俺だとわかると姉は驚き
「あら、省吾じゃない!!どうしたの突然?連絡してよ。も~!」
肩をバシバシ叩いたり、どついたりして楽しそうに怒っている。
姉貴も相変わらず元気そうでなによりだ。
「ごめん!急遽知り合いが遊びに来てさ、せっかくだからココの風物詩を見せたくて来たんだ。」
「まあまあ!そうだったの。それじゃあぜひ見てほしいわ。うちの子も参加するのよ。フフフ」
「それで車停めさせてくれる?」
「勝手にどうぞ!庭は広いんだし」
朗らかなにそう返事が返ってきたので
「ありがとう。」
と返事をして、俺は車で待っている3人衆の元へ向かった。
「ただいま」
ドアを開けて3人を見ると思い思いにくつろいでいた。
「おおショウゴおかえり、早かったな」
「まあね。車の駐車許可も下りたし、ウロウロと散策しますか(笑)」
「いいのか?」
ヒルトはめちゃくちゃ嬉しそう聞く。
「ええ、余りあっちこっち行かない様に気を付けて。あと今日はお盆ならではのイベントがあるんです
よ。俺の甥っ子も参加します(笑)」
そう言って外へ促すと、中から出て来た3人は、辺りをキョロキョロと窺う。
「ここはなんだかすごく落ち着きます。」
「草木の匂いがちゃんとするな。」
「ショウゴ、オボンとはなんだ?」
クラウドさんが不思議そうに聞いた。
そういえば異世界では先祖っていう言葉あるのかな?
これはなかなか気を使う事柄だったりする?
ウ~~~ン……面倒くさいからいっか
「お盆とは先祖まあ俺達の血族の先達の方々が常世、死後の世界から還って来る日ですね」
言葉にすると…うん、かなり…不気味だな。
俺達はそれが普通だったから…………
イケメン3人衆をみると、…………青ざめているね。
「俺達日本人は血族の意識が強いんですよ。神様より先達がいたから俺達がいるみたいなもので、簡単に言えば、俺達を産んでくれてありがとう。そんな気楽な様なものです。」
「なるほど、真理だな」
優し気な眼差しでふんわりとクラウドさんは笑った。
ヨシ、巧くさばけた。宗教は何かと気を使う。
******************
【 クラウドside 】
ショウゴが住んでいる所は洗練され、機能性の優美を随所に生かしているような場所。
しかし今いる場所は、どこか懐かしく優し気で緩さがある。
山には所々に提灯が灯されていてる。
ショウゴが言うには、お墓に出迎えの提灯が灯されているのだとか………
「おい、さっきの話は驚いたな………」
ヒルトはお盆の話にゾクッと来たらしい。
確かに聞いた時は驚いたが、理由を聞いたらなるほどとなる。
異世界では普通のことなのだろう。
とてもシンプルでいい考え方だ。
「クラウド、先程の話を聞くと私達の世界は複雑に考え過ぎですね。」
眉を下げて言うユーグ。更に言い募る。
「私達の世界はたくさんの種族がいます。考え方も種族それぞれ。当たり前のことです。」
私の目を見て困ったような複雑な顔をしている。
そう、当たり前が当たり前とわからなかった私達の世界。
先達がいるから私達がいる。血は繋がる。だたそれだけ…………
「なんで差別するんだろうな」
ヒルトが言う。元々は宗教的考え方の違いからだったと思われる。
ショウゴはなんて言っていた。
”そんな気楽なものです”
人は人、自分は自分。
異世界には異世界の
俺達の世界もまた同じ…………
全く真理だな。
本当にそういう気楽なものでいい。
先達たちに感謝を……
******************
遠くの方から子供達の歌が聞こえる。
独特な調子の不思議な歌詞に
ゆる~い調子のメロディーで
提灯をぶら下げた子供たちが町を練り歩く。
幼子をかかえた親
結構なお歳のお年寄り
よちよち歩きの幼子も
少し上の兄弟に連れられて
皆で歌いながら練り歩いている。
******************
「なんか独特な雰囲気だなぁ」
いつもは騒がしいヒルトも、さすがに今は大人しい。
「ホントですねぇ。歌詞も意味がある様でないようで………でもいいですね。」
「だろ。まさに幽玄な雰囲気だろ。お山から下りた先祖様が迷わず家に還れるよう、子供の提灯目印に還っていく。」
「なるほど!確かに子供に迎えに来られたら素直に家に還るよな。」
うんうんと頷くヒルト。
「そうですね。還ります。」
ニッコリと笑って頷くユーグさん。
「なかなかいいモノだな。」
クラウドさんも苦笑交じりに笑った。
「さてとあちらに地元の人達の屋台があるはず、いってみません?」
「屋台か楽しみだな!!」
「もちろん酒もありますよ(笑)」
俺がそう言うと、満面の笑みを浮かべる3人衆。
でも俺は忘れていた。慣れちまっていたんだよ。
屋台は騒然となった。イケメン3人衆のせいで…………
考えてみれば、地元の祭りにハリウッドスター連れて行ったようなもんだ。
「ショウゴ!!」
「姉さん…………」
困ったような顔の俺の手を引っ張って、会場の端に連れて行かれた。
「ちょっと、何よあのイケメンは?!」
「ごめん考えが足りなかった……」
「最高じゃない!!」
「はい?!」
「よくやった。ショウゴ!!あんた達の分は全部飲食タダだから!じゃあ!!」
片手をあげそう言うと、アルカイックスマイルを残して去って行った。
”まぁタダだからいっか……イケメンは得だよなぁ………”
今日一日でイヤっというほど感じた事だった。チクショウ…
******************
なんだかと無事マンション俺んちに着いた。
イケメン3人衆は酒を飲み、気が向くままに食べ、地元の人達とも交流し大いに遊んで満足げだ。
「フフフ楽しかったよ」
特にクラウドさん。終始ご機嫌♪
地元の女性を悩殺無双だった。
まさにカリスマホスト…王様なのに……
ヒルトはヒルトで子供達と花火をして遊んでいる。
特にねずみ花火が気にいったようだ。
ユーグさんが老人たちと将棋を教えて貰い楽しんでいた。
「フフフ……」
ずっと笑っているクラウドさんに、他の二人は不気味そうに見ている。
「はあ~楽しかった。」
素にほほ笑んで俺を見た。
「今日はほんとにありがとう。ショウゴ」
「いえいえそんな…」
「こんなに笑ったのも楽しんだのもホントに久しぶりなんだ。」
「確かにな。あんなにだらしないクラウドは珍しい」
「ホントに、女性に囲まれて終始ニヤニヤと……」
他の二人には不評のようだ。
「だって仕方ないだろう。今日は私も男だなとつくづく実感したよ。」
そう言うとまたニヤニヤとしている。
「お前まさか…………」
何かにきづいたヒルト。
「……………………」
無言になり睨み付けるユーグさん。
何が何だかわからん俺??
「最低ですね」
「ああ、全くだ」
「何がですか??」
「要は服だ。こっちでは普通でも異世界の俺達には下着と同じなんだ」
「ゲッ!!」
ニヤニヤしているクラウドさん。
「フフフ…ホントにたのしかったよ、いろいろと……」
そう言って、軽くウインクを寄こされた。
”まぁ、いろんな意味で発散できてよかったですね。”
俺は呆れ返った。
所詮は王様も人間ということで…
今日はこれでお開きとなった。
******************
「何でいるんだよ?」
「ちゃんと許可は貰った(笑)」
「…………俺はしてないぞ」
「今度ショウゴも来ないか?異世界に♪」
「え?」
読んでくれて、ありがとうございます(*´ω`*)