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それぞれの道

喫茶店では、ダンディズムを追求し白シャツに黒のベスト、下も黒のパンツといかにも執事か喫茶店のマスター風な姿の店長は、ライダージャケットにレザーパンツ、そしてブーツを履いている。顔立ちと髪型を考えると確かにこの格好の方がまだしっくりくる。


そして店長は変わったものを握りしめていた。コの字型のグリップの先には刀の鞘があり、鞘には鍔付きの刀が納められている。本来なら腰に差す刀も鞘にグリップがついているがために、右手左手それぞれ一本ずつ握りしめる必要があった。


普段の喫茶店で見せる格好とは違った装いで険しい山林を登ったり、下ったりしていく。山を歩き回る恰好ではないが、両の手にある少し長めの変わった打刀をスキーのストックのようにたくみに扱い、道なき道を進んで行くのは、「casper」と名乗ったあいつから居場所の連絡を受けたからだ。


数日前、緯度と経度を記された紙をもって「棚橋」と名乗る大男が喫茶店を訪れたときは驚いた。苦学生の話では彼は何も知らされていなかったようだし、悲しんではいても、何かに囚われているわけでもないだろうと思っていた。茉莉亜さんからの話でも喧嘩別れした時の姿はそこまで気に病んでいる様子もなかった。もし、そのことを悔やんだとしても自分に向けられるものであって、別の何かに転換されるものではない。


また苦学生の彼が棚橋さんにあの話を吹き込むとは思えなかった。たとえ吹き込んだとしても誰を恨むだろうか。そう、彼の目の前に喫茶店の扉が現れることはありえないはずだった。

「この紙をあなたに渡せば、彼女が死んだ真相を知ることができると聞いた」

棚橋は穏やかな口調の中に確固たる意志を感じさせる声だった。誰がそのことを伝えたのか、「casperから聞いたと言えばよいと」なるほど、それで理解が言った。あいつが手引きをしたのか。ただどうして俺たちがあいつ=「casper」だと知っていることを知ったのか。


考えを巡らせているあいだ、棚橋さんはまっすぐな姿勢で待っていた。その目とあいつが絡んでいるという事実に、嘘をつくとは出来なかった。今に思えば、もう少し言葉を選び、悩むそぶりをしたほうが良かったかもしれない。話を聞き終わった後、青ざめた顔の棚橋さんは何も言わずに扉から出ていった。


いつの間にかトレイルランのような速度になりながら、今回の出来事を思い返す。棚橋さんはこれから何を思い生きていくんだろうか、最愛の人が実の姉だった。その事実で死を選択するような人ではなさそうだが、彼の姉は死を選択したい以上ないとも言い切れない。あれこれ考えるうちにそこまでも息切れることもなく、目的の場所についた。


なぜだろう、ひどく懐かしい雰囲気がするのは、目の前の建物が3人で生活した道場のような作りだからだろうか。それとも山間の木々の間に急に開けた場所にあるからだろうか。というか、あそこ以外にこんな立地に同じようなつくりの建物があるのは、おかしい。あまりにも似せた風景にあいつは何を思っているのか、直接聞いてみないとわからない。


大正時代に作られたような洋館風の建物の扉を開けると大きな玄関ホールが広がる。本当に似たような作りだ、アシンメトリーな建築物の右には広い広間があって、そこは・・・


「姉さんは、元気っすか?」

懐かしい声が響く、俺のマネている口調よりも落ち着いた話し方、本来はこんな感じだったのか、あの出来事が起きる前は若かったから、俺が真似ているようにもっと溌剌としていたのか。とにかくあれで3人の関係は変わってしまった。

「それは、俺に対しての嫌味か。」


「いやいや、違うっしょ。というか話し方まねてくれないんすか?」

「あれは、彼女の要望だよ。というかなぜそこまで知っている。」

へぇ~、特に関心もないような相槌が聞こえる。

「彼女が自身への戒めのためだよ。ルー、お前を忘れないためにな」


「それで姉さんの要望を受け入れているって、しゅうはやさしいっすね。」

「優しくはない。俺はいやがらせのつもりだ。」


「それじゃぁ、常に姉さんと話すときは自分の口調をまねてるっすか?」

「・・・・なぁ、姉さんって、止めないか。」


「え?どうして?実際姉なんだからしょうがないっしょ」

「だが、それい・・・」

「それ以上話すな!!!!!!!!っすよ」

急に相手が発した大声に臆したわけではないのに、体が言うことを聞かず、話すことができなくなった。反射的にカチンと鍔が鳴る。先ほどまで軽口をたたいていた相手の場所に大きな切れ込みが走った。あきらめと同時に身構える。


「ああ、あぶなっすね、ごめん、ごめん、ちょっ、ちょっとタンマっすよ。話していいっすよ。ただ変なことは言わないでほしいっすね。」

相手は俺に指示をした瞬間にその場から逃げていたようだ。その場にいたら体は斜めにズレ落ちていただろう。


「・・・・すまなかった。お前が会話を望んでいるかどうかわからない以上、手遅れになるわけにはいかないからな。」

「いいっすよ。相変わらずにゅるにゅるさんたちは容赦ないっす。卑怯っすね、自分で抜く必要のない居合切りって、しかも居合の間合いでもないっすよ、この距離は」

そういいながら、さらに距離をあけて、ルーは店長と向かい合った。


「ああ、だがそれを言うならお前もな。いったことを強制的に従わせるというのは。」


お互いがお互いの力を理解している。小さいころその特殊な力のせいで住んでいる場所から追い出されることになった者同士だった。


その中の1人は両手首・足首に人には見えない手足が生えており、その伸縮自在の見えない手足は宿主である子をいつも助けてくれる。そして時には宿主の意思があるようで、彼の思いとは別に彼を守り、宿主の命に危険があれば敵を排除してくれる。


別の1人は自分の発した言葉を他人が必ず受け入れてくれる、声の持ち主の命令は絶対であり、どんな無理難題であったとしても他人は受け入れてします。恐ろしいのは本人の意思というレベルではなく、体がその言葉に反応して対応をしてしまうことだ。彼が死ねといえば、頭では死にたくないのに体が死のうとする。


最後の1人は秘密の空間を作ることができた。その空間はいかようにも作れて、作成者が望めばその空間は周りから一切遮断された空間となり、どんな環境にも左右されない。そしてその特別な場所に入れる人は作成者が定めたルールに該当した人のみとなった。


彼らは別々のところで生まれ、別々の環境で育ち、同じように恐れられ、同じように虐げられ、一人の男の人に助けられた。その男は「鈴木」と名乗ったが、彼らはその男のことを「師匠」と呼ぶようになった。


彼らが成人と認められる年齢になったころ、自分たちの力のあり方に議論し、世のため人のためにと行動を起こした。それを師匠は温かく見守っていた。師匠は人間のことを理解していた。人というのはいかに愛しく、愚かかということ。彼らが救うべき対象であると同時に見放すべき対象であるかを。


3人はできる限りの隣人を助けた。彼らは善良であり、救うべき価値のある人々で救われるべきであると確信していた。この国ではまだ貧富の差が激しく、維新の傷跡を癒しつつ、その中でも逞しく生きる彼らは、文明開化の名のもと成長する日本という国で、他国を侵略して裕福生活を得ていく。


日本が裕福になっていくことで、犠牲になっていく世界があることに気が付いたとき、戦争が起きた。三人の中で善良な隣人を助ける気持ちだけだったらよかった、日本が犠牲を産む行為に加担する気持ちが邪魔をした。もし3人が日本に加担していたら世の中は変わっていただろう。


彼らは自分たちの中の矛盾に苛まれた。そんな彼らの成長を温かく見守っていた師匠は彼らに日本に干渉しないことを勧めて、3人と師匠は一人が生み出した閉鎖された空間で生きた。


彼らは時代の流れに沿って、様々な世界を巡った、自分たちの目を、心を、体を養うために。時代は進み2回目の戦争の時代で日本が敗戦し、久しぶりに日本という母国をみたとき、敗戦を共感することもできない不干渉という残酷さ、3人は改めて狭い範囲で活動することにした。


また新たに歩みだした3人を師匠は何も言わずに送り出してくれた。


そして次に師匠が彼らの目の前に現れた時までが3人のしあわせだったのだろう。



「まだ、あいつを殺させたことを怒っているっすか。」

「・・・・ああ。」


「自業自得だと思わないっすか?」

「お前たちが師匠の子だったとして、それを明かさなかったのには理由があったんだろう。」


「ははは、どんな理由があれ、後から事実を明かすって、なんなんすか?」

「師匠はお前たちが惹かれ合うとは思っていなかったのだろう。師匠だって、苦悩したはずだ。もし何事もなければ二人が別々のところで生活してなかったはずだ」


「はぁ?何言ってんすか。別々のところで子供作って、その子供をある程度の年になるまで放置してたんっすよ」

「だから何か理由があるんだろう。それでも師匠は二人を愛していた」


「そりゃ、息子と娘っすからね。でもそれならなぜ兄弟だと隠して、共同生活させてたんすかね。わけわかんないっすよ」

「俺にもわからない。それは一生わからない。死んだ人間から話は聞けないからな。」


「そんなことないっすよね。しゅうのところにそれがわかる人物がいるっすよね。」

「お前はどこまで知っているんだ。確かに彼女ならできるだろうが、そのためには師匠の遺留品が必要だ、だけどそんなもの残ってないだろ。あの日すべてを燃やしてしまったんだからな。」


「たしかにそうっす、ただもし残っていれば、あいつのことを知れるってことっすよね。」

「何かあるのか?というか、お前は知りたいのか?」


「自分はどっちでもいいっす。」

「はぁ!?ならなぜそんな話をするんだよ」


「そうしたら、二人が納得するのかと思ったんすよ。」

「俺は納得しない。お前は逆恨みをし、師匠を俺に襲わせた。お前は自分の手を汚さずに。俺は師匠を殺害した。どんな理由であれ、俺は自分を許せないし、お前を許さない。」


「まぁ、そうっすよね、じゃぁ姉さんはどうっすかね。」

「マギーのことは知らん。マギーに直接聞けば良い。ただそんな機会はない、俺はお前を殺すために来た。今までお前はそれから逃げていた。マギーお前が俺の前に現れないことを望んでいた。だがお前は今回俺たちに接触してきて、俺の目の前に現れた。ならここで決着をつけるだけだ。最初は話を聞くため持ったが、もういいだろう。」


「落ち着いて」

相手の言葉に心とは別に体から熱がなくなる。

「自分は争うために来たわけじゃないっす。でもやっぱりまだしゅうは怒っているっすね。」

「ああ、この場には殺し合いをしに来ているつもりだ。」


「姉さんは知っているんすか?」

「何も言わずに出てきている。いえばあの喫茶店から出られないだろうからな。」


「っすよね。その「鍔鳴」の姿をみたら、止めているっす。」

「そういうお前は「プネウマ」として、来ていないのか。いや、そんな過去の忌み名なんかどうでもいい。お前は結局実の姉であるマギーを愛しているがゆえに受け入れられない。マギーも同じだ。」


「実の姉と知ったら・・・・、抱けないっすよ」

「そうかもな。だが、それも覚悟の問題だ。お前にはその覚悟がなかっただけだ。それを師匠にぶつけただけ、いや、そんな話はどうでも良い。俺は自分の過去の清算をしたいだけだ。」


「・・・・しゅうになにがわかるんだよ。」

「ああ、わからないさ。」


「・・・sh」

カチン、鍔が鳴る音がするとルーが立っていた場所にまた斬撃が走る。「プネウマ」であるルーに対しては、言葉を発する前に勝負を決めるのが一番だったが、さすがにこの位置からだと後ろにすぐ引いただけで避けられてしまう。


「くそっ、とま、うわっ」

相手の言葉を遮るように鍔が鳴る。右の腕に生えた見えない右手が左手に携えた刀の柄を持ち、一直線上に引き抜く、そして瞬時に鞘に戻す。見えない左手も同様の動きを交互に見せ相手に休ませる隙を与えない。


ルーは言霊を操るただそれにも制限があり、何でもかんでも言うことを利かせることができるわけではない。相手に「死ね」といっても勝手に死んでくれるわけでもなく、「〇〇をして死ね」といった風に明確な指示をしなければならない。しかも「首をつって死ね」といったところで首を吊る紐が無ければ実行されず、無効な指示となってしまう。


よって俺に対して有効な命令があるとするば「持っている刀で首を切り落とせ」いった指示だろうが、その際には俺の両腕に生えた見えない腕が刀を取り上げてしまう。「この薬を飲め」と言って投げつけたとて、にゅるにゅると動く見えない手が瞬時に対応する。


ルーにとって俺を直接攻略することは難しいとなると


「みんな、敵を襲え!!」

その一言に建物の周辺に待機していた動物たちが、一斉に動き出した。ルーの言霊は決して人だけに収まるわけではない。訓練を受けた動物は人の言葉を認識する。言葉を認識する相手ならルーの影響を受ける対象となる。


建物内に息をひそめていた獣たちが一斉に動き出すとまずは屋根上から大量のネズミがなだれ込んできた。


「ちっ」

ネズミを切り伏せても良かったが、それによって浴びせられる血が厄介だった。ネズミたちに何かしらの毒をもたせ、飛び込ませる。ネズミに対処しなければかみ殺され、対処すれば返り血を浴び何かしらの毒をもらう。以前ルーが行ったなかなかえぐい戦法だった。


上からの強襲を受けない様すぐにその場から退くと、ネズミたちは蠢きながら逃した獲物に向かってくる。大きく鍔が2回なると、ネズミの波が一瞬吹っ飛んだ隙に建物の外に逃げると目の前に野犬の群れがこちらを威嚇するようにうなっている。その中心にはルーが立っており、あいつが発する次の言葉を待っている犬たちは自分が誇る最大の武器を見せつけながら、涎を枝垂れ落としていた。


「ネズミたち、まて!しゅう、チェックメイトっすよ。いくらにゅるにゅるさんたちの斬撃が音速を越えようと、この圧倒的物量には適わないはずっす」


「ああ、そうだな。このままではやられるな。」

そういって、おれは両手に収められたグリップを強く握り、刀の鞘の先を地面に突き立てる。そのままグリップを下にスライドさせ引きをおろし、カチッと音が鳴るとバスっと杭が地面にめり込んで刀を支えた。両腕が空いた俺はジャケットにしまい込んでいたオートマチック2丁を取り出すとルーに銃口を向けた。両脇にストックを当て、フルオートに耐えうる体制を整える。


「斬撃と銃弾の雨をかいくぐれるか試してみると良い。」

もうお互いが引けない状況。始まったら最後どちらかが死に絶えるまでとことんやり合うだけだ。これでやっと終わる。俺自身に決着がつけられる。


「・・・・・・」

「・・・・・・や」

「もうやめて!」

静寂のなか、ルーが獣たちに指示を出そうとした声を遮るように溌剌とした女性の声が響いた。声の方向を向くと家の扉を両脇に抱えてた2本の杖で勢いよく開けた両足義足の女性が立ってた。


「ねぇさん」

「マギー」

「ルー、もう私のことはマギーと呼んでくれないの?」


その一言にルーはマギーから目をそらし、頬を赤らめる。


「終、ごめんなさい。でももうやめてほしいの、ルーがやったことは許されるものじゃないのは分かっている。でも私はルーに生きていてほしい。だからあなたにお願いをした。そしてそれを守っているし、これからもあなたの気が済むなら私はあの場所に居座り続けるわ。」


「マギー、だめっすよ。自分のことはいいっす。自分のせいであの場所から出られないなら、おれはここでしゅうを」


「ルー、止めて、終がまだ本気を出していないのが分からないの。」


「それは・・・」


「ねぇ、終、私はどうすれば、あなたを留めることができる?お師匠、いえ、父を殺させたルーをかばい、私は両足を失ったわ。ルーを全く別の場所に逃がした私が憎ければ、そのまま放置しておけばよかったはず。私は死ぬはずだった。でもあなたは私を助けたわ。それはルーが接触してくることを見越して?それとも長く一緒にいた私に対しての温情?」


「わからないな。ただあの時は師匠に次いで誤ってマギーを斬ってしまったことに対する罪悪感があった。ただその後も助けたことを後悔もした。」


「ええ、そんな時あなたがルーをまねて・・・・私はあなたにルーの話し方をまねさせたわ。ルーへの気持ちがある私が報いるべき罰だと思って。私がルーの言葉遣いを聞いて寂しい思いをすれば、少しはあなたの気がまぎれるかと思って。」


「・・・・」


「マギー、もういいっすよ。俺は俺でマギーの足を切り落としたしゅうを許すわけにはいかないっす。」


「俺は3人で仲良かったころを忘れたくなくて、ルーの話し方をまねていた。」

「しゅう」

「終」


「でも、やはり、最愛だった師匠をこの手で殺めた、殺させたルーを許すことができない。だから結果がどうあれ、ルーを殺そうと思っていた。もし失敗してルーに殺されても良いと思っていた。」


「・・・・・殺されてもって」

「・・・・・死ぬ気だったんすか」


「俺たちは一緒に過ごしていた。それぞれの境遇を経て、集まった3人だったからどんなことが起きても3人で生きていくと思っていた。ただそれが…崩れた。そのあとは宙ぶらりんのまま、昔のように、依頼を受けて、区切りをつけたかった。やはりこの3人で集まるとだめだな。」


「時間もたったっすから、怒りを維持するのは厳しかったっすね。」


「それをルーが言う?」


「まったくだ。ただこれで分かった。俺はルーを殺すことはもうできない。気持ちが乗らなくなってしまった。もう変にルーの口調をマネするのも終わりにする。マギーはそれでいいか。」


「ええ、私はあなたのストレス発散のためだけだったもの」


「本当にそうなんすか?」


「ええ、そうよ。」


「「・・・・」」


両手に持っていた2丁をジャケットにしまい込み、両脇に直立した2本の刀を回収しようとしゃがみ込み、地面に打ち込んだ杭を引き抜くため、グリップのギミックで外すとカシュっと音がし、グリップはいつもの鍔の手前の位置まで自動的にスライドした。


「さてこれからどうするっすかね~。あっ、みんなお疲れさんっす、解散でいいっすよ」


さっきまでの殺気立った空間はなくなり、ルーは自分の支配下に置いていた動物たちを野に戻した。


「喫茶店は終の場所よ、あの空間はしっかり残しておくから、みんなと営業を続けて。私はルーと旅に出るわ。ルーはそれでいい?」


「いいっすよ。まずはどこに行くっすかね。車いすが必要になる


「・・・・わかったよ。俺はあの場所を維持するか。なぁ、ルー」


「何すか?」


「どうして、今回彼らに関わったんだ。」


「・・・・実は偶然だったんすけど、彼女と偶然出会って、相談に乗ったんです。そしたら俺も相談していって、向こうから今回のことを提案されたっす。」


「えっ、ルーが動いたんじゃないの?」


「違うんすよ。向こうが何となくっすけど俺のことを察したみたいで、それで話をしたら私をきっかけにしてみないって。」


「なぜきっかけづくりのために自殺を。」


「そこは自分が協力したんすけど、実は彼女寿命数か月だったんす。」


「ルー、あなたが医者に指示したってこと」


「そうっす、彼女の検査した病院からすべての情報は削除させたんすけどね。まぁ、それもあの子の采配だったんすけどね。まったく女性は強いっすよ」


ルーの話では彼女は血のつながりを気にはしていたもののそれでも棚橋との関係を変えるつもりはなく、うまく一緒に暮らし続ける気持ちだったようだ。それよりも死の宣告の方が大きかったようで、どんな病院に行ってもダメだったようだ。


彼女の中ですべてを封殺して、いなくなることを望んでいたものの、病死だとすべてがばれてしまうし、生き続ければ棚橋に気づかれる。そこでルーにいろいろ相談した結果が思わせぶりな自殺ということだった。




カランカランカラン


「店長、こんにちは。」


「こんにちは、九十八さん、今日はどんな調子ですか?」


「!?あれ、口調は?」


「ははは、もうあれは必要なくなってしまったんで。これからは普通に話します。」


「あっ、そうなんですか、でもやっぱりあれはわざとだったんですね。」


「あはは、ばれてましたか。」


「ええ」


「まぁ、これからもよろしくっす」


「・・・・」


当分はまだ口癖が抜けそうにないな。


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