第11話 それじゃ出発と行きますか
いよいよ神の街に向けて出発です!
二人は買い物を終えると宿屋へ戻る。
どちらも少し疲れたのか宿に戻った瞬間ぐったりした。ティグリスが買ってきた食材を少し使い晩飯を作る。
「明日からはここで飯が食ねえのか」
「別にいいんじゃんない?」
「そんな簡単なもんじゃねえよ。ここには色々な思い出があるんだからよ」
「あーはいはい。わかった。ご馳走様でした」
ティグリスの話を軽く流すトレースはご飯を食べ終わり部屋へ行こうとする。
「夜更かしすんじゃねえぞ」
「子ども扱いしないで。おやすみ」
トレースは部屋へ戻りシャワーを浴びる。左腕がないと生活に支障が出るだろうと思っていたが案外慣れてしまえばどうってことはなかった。
シャワーから上がったトレースは寝巻に着替えて布団に入る。なんだかんだ言って時間は23時になっていた。今更ではあるがこの世界の一日も24時間なのだと実感した。
「明日からは神に会いに行く為に1年の長旅か。おかしな話だな。存在しないと思っていた神に自分の足で会いに行くなんて。まぁ多分行くまでが大変なんだろうけどな。ワープ使えたらどれだけ楽なことか」
明日......いや。その先の1年後のことを考えているうちにトレースは眠りについた。
翌朝
扉を叩く音で目が覚めた。
「おい!起きろ何時だと思ってるんだ。早く行かねえと2年以上かかるぞ」
うるさいティグリスの声がした。時間を見るとまだ10時。昨日はタイマーをセットするのを忘れて寝たらしい。
「ごめん!すぐに準備するから待ってて」
「何やってんだか。1日目からこれじゃ幸先不安しかねえよ」
ティグリスが愚痴りながら部屋の前で待っている。トレースは急いで準備する。準備し終えた頃には11時になっていた。
「ごめん。待った......?」
「いや。めっちゃ待ったけど?まぁいい。行くか」
ティグリスは滅茶苦茶呆れた顔をしていた。何はともあれ店を出る。
「そういえばどうやってこの街から出るの?」
「ここから北に向かう。そこに門があるからまずはそこへ向かう」
「それってここから何分かかる?」
「ざっと2時間程度かな」
遠いな。この街本当に広すぎて困る。
「ほんとだったら一旦ギルドにワープした後そこから門専用のワープを使って移動するのが普通なんだけどな。今回はそれが使えないからさ」
ティグリスは少し睨みながら言ってきた。
「なにさ。二人目のNPCを殺せって言ったのはティグリスでしょ」
「確かにそうだけど躊躇なく殺したのはトレースだけどな」
二人は会話しながら門へ向かった。
2時間。いや3時間かかって門へ着いた。門には鎧を着た門番が立っている。
「どちらへ?」
「ちょっと他の街ヘな」
「そうですか。お怪我の無いように」
案外あっさり通してくれた。もっと厳重なのかなと思っていたがそうでもないらしい。
門を抜けるとそこは辺り一面の草原だった。太陽の温かい下で涼しい風が当たるここは天国かと思うほどだった。緑の草の上には青く飛び跳ねているスライムの姿があった。
「え?この世界にスライムがいるの?」
「ああ、倒せばスライムの塊が手に入る。それを売っても1~5程度だけどな。ギルドのクエストで倒せってやつがあったとしても300程度だ。まぁよく言う雑魚モンスターだな」
ティグリスが説明してる横で早速スライムを切る。一回切るだけでスライムは倒れてスライムの塊を落とす。落ちたアイテムは自動的に携帯の中のアイテム欄に入る。
「やっぱ弱いね」
「そりゃNPCとは比べ物にならない弱さだな。この先も神の街に行くに従ってどんどんモンスターは出てくるから暇だったら倒しな」
「そんな無駄に体力使う気ない。むしろ無駄な戦闘は避けないと後々持たなくなる」
1年......やっぱり相当大きいものがある。
「1年だよね。まさかずっと草原だったりする?」
「流石にそれはねえよ。ざっくり予定を言うとだな。この草原が4か月、そのあと砂漠が1か月、山岳2か月、森林3か月、また山岳1か月......」
「この草原で4か月......長すぎるよ。しかも登山が合計3か月。やっぱ辞めたくなる。のこり1か月は?」
「残り1か月は正直行きたくない。踏み入れるものを僅か3日で灰。いや無にするといわれている土地。無力地と言われている。そこを1か月は歩かなきゃその先にある神の街にはいけない」
「なにそれ。本当に行けるの?」
--------------------------------
無力地
それは神の街の手前にある最後の難関といわれる土地。どんなに強い人だろうが1週間もあれば骨まで消えて無になる。だがそれを乗り越えた者だけが神の街に行けると言われている。
一番長く持った者でも13日が限界だったそうだ。
--------------------------------
トレースは一瞬神の街を諦めようかと思った。
「今更やめるなんて言わせねえからな。無力地を乗り越えて神の街に行くんだろ」
「なんでそんなに乗り気なのさ。消えるかもしれないんだよ?」
「消えるのはプレイヤーだけだ。NPCは何の害もない」
え?なにそれ。やっぱりチートだな。
「つーわけで頑張てくれよ」
「もうヤダ。行きたくない。完全に死にに行くようなもんじゃん」
「ああ、そうだよ。だがトレースが行くっていったんだからな」
「後戻りは?」
「できるわけねえだろ」
トレースは嫌々前に歩く。宿を出た時間も遅かったせいかもう日が暮れてきている。
「おーもう日が暮れてきてるのか。早いとこ村探さねえとな」
「村?適当なところでテントとか張るんじゃないの?」
「馬鹿か?いつモンスターに襲われるかわからねえだろ。まぁ村が見つからなかったらそうなるけどよ」
「それより村って何?そんなのもあるの?」
「村っていうのはプレイヤーが集まって作った小さな集落だ。基本的に民家は3件~5件で宿があるだから今回の旅はそれを利用しつつ進む感じだ」
トレースは地図を見るがそれっぽいところは見当たらない。時刻は18時になろうとしていた。
「夜は狼とかめんどくさいモンスターが出てくるから早めに探したいところだけど」
「村は襲われないの?」
「3件~5件の民家と宿があるとそこには村という判定ができてモンスターが襲わないらしい」
「なるほどね。早く村探さないとね」
1時間ほど歩くと小さな村を見つける。早速村に入り宿へ向かう。この村自体は4件の民家と宿だったので見た目で宿がわかる。
「お二人さんかい?今ちょっと部屋が一杯で一部屋しか開いてないけどいいかい?」
宿主が声をかけてきた。もう80行ってそうな老人だった。この村はプレイヤーが集まったって言ってたからこの人もプレイヤーなんだろう。
「俺は構わねえがトレースは?」
「うーん。本当は嫌だけど部屋がないのなら仕方ないね。ティグリスは床で寝てね」
そんな会話をしていると店主が
「ああ、ベットと布団で二つあるから安心していいよ」
ならよかった。後は会計かな?
「いくら?」
「一泊500だよ」
安くない?ティグリスやっぱり嘘ついてたな。そう思いながら携帯を差し出す。
1億0985万3000→1億0985万2500
今回は携帯の画面を見られることなく回収することができた。
店主から鍵をもらい教えてもらった部屋へ向かう。部屋に入るとトレースは即座に横になる。
「ティグリス、おなかすいた」
「わかってるよ。今作るから待ってろ」
部屋の中にはなぜかキッチンがあった。ちょっと驚きながらもティグリスの料理を待つ。
「ほらよ。召し上がれ」
「いただきます」
まだ街を出て1日目。この先どれだけ辛いか想像するだけでも嫌な予感しかしない。
見ていただきありがとうございます。
ここからもっと面白くなる予定です!(ハードル上げていく)
感想やアドバイスがありましたらコメントまで
高評価やブックマークお願いします!
次回の投稿は土曜日までには投稿します