戦乙女の更生交換日記
注)ここは、通称:ウルズ、ヴェルサンディ、スクルドの3人用の掲示板です! 鍵は掛けてあるけど、ハッキングして覗いちゃ、ヤーよ? 怒っちゃうからね? byヴェルサンディ
宇宙歴234年某月某日
ヴェルサンディ:ハーイ、ウルズ姉さん、スクー、元気?
組織が解体されてから、会えなくなって淋しいよ。平和は良いものだって分かるけど、こう言う所は嫌だよね。
うーん、何を書こうかな?
えーっと、今日から第4ステーションで貨物便の入港誘導オペレーターのバイトを始めました。対人だと身バレが怖いから今はこれが精一杯。戦後復興物資が大量入荷してます。近々、町にも配布になるかな?
みんなはどうしてるの?
ウルズ:ヴェル、バイト開始おめでとう。イラッとして、上司や同僚を射殺しないようにね。どうしてもやるなら、エアロック事故に見せかけなさい。……冗談です、本気にしないように。
私の方は相変わらずよ。ステーション爆発の後遺症も相変わらず。自力歩行は一生無理かもしれないから、覚悟するようにって言われたわ。組織のメンバーも順調に社会復帰しています。敵対組織からの横槍も少ないし、心配しないで。
あぁ、先日最後の前線戦闘部隊を解体しました。一目スクーに会いたいって大の大人が泣いてたわよ? 相変わらず愛されてるわね。ヴェルもスクーも、初めての一人暮らしなんだから、体に気を付けなさい。
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スクルド:全自動治療機完成したよ。診断からお任せできるやつ。姐さん達もいる?
ヴェルサンディ:え? さっぱり返事がないと思ったら!!
一月ぶりの書き込みよ?!
ウルズ:スクー? 何を言ってるの!
スクルド:資料送る。知的所有権と、特許絡みの独占契約をしたい。誰か知らない?
ウルズ:組織でお世話になっている弁護士はいるけど。
スクルド:紹介して。これで一人暮らしの収入げっと。
ヴェルサンディ:何やってんのよー!!
ウルズ:ヴェル宛報告。
あれからすぐにスクーから資料が送られてきました。あり得なかったわよ。これがあったら、先の戦争で死ぬ兵士も少なかったんじゃないかしら?
そんな訳で、今、地球とステーションの双方に、技術特許の申請をしています。それと、個人で管理するのは大変なレベルだから、スクーと相談の上、医療機器の会社を立ち上げることにしました。CEOは私です。これが軌道に乗れば、再就職に困っていた元メンバー達も雇えるわね。姉さん、頑張るから。
ヴェルサンディ:ちょっと待って、何が起きてるの?! 少し連絡入れる!!
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スクルド:緊急連絡。前から作ってたのが、目処たった。連絡求む。
ヴェルサンディ:呼んだー?
スクルド:ヴェル姐じゃない。
ウルズ:はいはい、来たわよ。どうしたの、スクー。最近、貴女が作った医療機器の有効性が分かったみたいで凄く忙しいの。おかげで仲間を雇えたわ。ありがとう。
それで、前から作ってたのって何かしら?
人工重力発生装置? 土壌改良兼環境改善用の植物?
ヴェルサンディ:いや、スクーが昔っからマッドな方向の科学者だって知ってたけど、それはネタでしょ?
スクルド:違う。大気圧縮保管装置(自動展開保護膜付)、無重力、無大気対応バージョン。
ウルズ:え? 目の錯覚かしら??
ヴェルサンディ:あぁ、それね。ウルズ姉さんが事故に合ってから、憑かれた様に研究してたもんね。
ウルズ:嘘、なんで言わないの!
スクルド:出来たら報告しようと思ってた。ゴメン、もっと早く私がこれを発明していれば、姐さんは今も歩けてた。酸欠で脳に障害なんてならなかった。
うちのみんなに持たせておけば、万一ステーションが空気抜けをしても安心。ウチ、ボロいからいつ壊れるか分からない。
資料、送る。
ウルズ:ええ、見てみる。ありがとう、スクルド。
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ウルズ:さて、今年もやって来ました。墓参りの時期です。年に一度妹達に会えるから、私は凄く楽しみよ。ヴェルはともかく、スクー、何か必要な物はあるかしら? 貴女の発明品ではぐれステーションは潤っているし、何でも手に入るわよ?
スクルド:別に何も。今の生活で満足。静かでいい。
ヴェルサンディ:ウルズ姉さん、スクーの事、何とかならないの?! あの当時の情勢なら、スクルド1人が責任を取る形で軟禁されるのが一番良いのはわかってる。でも、もう三年だよ?!
敵対勢力だって、新政府だって忘れたんじゃないの?!
ウルズ:ヴェル……。
スクルド:望んでない。
私は墓守で満足。マザーや他の皆のお墓と一緒に朽ちる。
それに敵対勢力は相変わらず闇で武器の売買をしてるし、新政府だって私達を許した訳じゃない。
更生したとは言え、私達は元反社会的勢力だ。戦争中の事だし、証拠もないから目こぼしされているだけ。ただでさえ、発明品で目立っている。粗を見付けられるわけにはいかない。私から当時の約束を破ることはない。
ヴェルサンディ:スクー……。でも、いつかは戻っておいでよ。
ウルズ:ごめんなさい。力のない姉を許してね。
スクルド:姐さん達は悪くない。
それよりも、朗報。新しい発明品が実用段階に入った。墓参りに来たときに詳しくは説明する。楽しみにしてて。
ヴェルサンディ:……何を作ったのよ!!
ウルズ:しんみりしてたのに、何なの。私の感傷と罪悪感を返してちょうだい!
スクルド:ん。無理。じゃ、また。
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ヴェルサンディ:スクー宛、連絡。
バイトを辞めて、今日からウルズ姉さんの所で働く事になりました。初日の帰りに、面白いもの拾ったんだよ? そのうち報告するね。
スクルド:拾ったものは、ネコ?
ウルズ:拾ったものは、廃棄された兵器かしら?
スクルド:なら、爆発物。
ウルズ:先の戦争で行方不明になった子供。
スクルド:喪われし資料。
ウルズ:伝説の青い鳥?
ヴェルサンディ:ちょっと! しばらく留守にしてたら、何を勝手に予想してるのよ。大したものじゃないわよ。そして、全員ニアピン。
ウルズ:ニアピン。幸せを運ぶネコ?
スクルド:ニアピン……。なら、行方不明になった子供に付けられた伝説の兵器の資料。
ヴェルサンディ:コラ! 訳分からない書き込みしないで!!
ふぅ、人をね、ひとり拾ったのよ。ウチの組織と敵対していた前線工作員。ただし本人に記憶はないみたい。ね、面白いでしょ?
ウルズ:あなたこそ、何をやっているの!! すぐに放り出し……いえ、駄目ね。何かを企んでいるといけないわ。
分かりました。なら、貴女の部屋に転がり込んでいるんでしょ。対処する人員を送ります。
ヴェルサンディ:姉さん、ムキにならないで! 大丈夫、警戒してるし、ただの暇潰しだよ。
スクルド:分かった。ならコロす。外に出なくても、それくらいなら出来る。
ヴェルサンディ:スクーも、落ち着いて!!
本当に記憶ないらしいの!
私のペットよ、勝手に手を出したら許さないから!!
ウルズ:危険はないのね?
ヴェルサンディ:ないよ。それに、もしも工作員でも私達に探られて痛い腹はない。なら放っておけばいい。
しばらく楽しませて貰おうよ。
ウルズ:仕方ないわね。
スクルド:姐さん達がそう言うなら。ただ何かあったら、止めないでね。
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ヴェルサンディ:今日、ペットが出ていきました。ゴメン、姉さん、スクー。
ウルズ:手配はかけたわ。貴女は心配しないで。
スクルド:何事?
ウルズ:ヴェルのペットはやはり工作員だったって言うこと。
何もしていないのを確信したのか、酷い一言を残して消えたわ。ついでに本社にあった資料も少し盗まれた。
スクルド:……ふーん。
ウルズ:安心して。スクーの発明品の資料は無事よ。
あのアホんだら、生きてこのステーションを出られるとは思わないで貰いましょうか。
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スクルド:【訃報】はぐれステーションを結ぶ定期船、消息を断つ。
ヴェルサンディ:?
ウルズ:……よくやったわ。
スクルド:もらっていい?
ウルズ:好きにしなさい。
スクルド:ありがとう。
【続報】はぐれステーション定期船発見! ただし乗客の一部は行方不明。
ヴェルサンディ:え? あ!!
スクルド:姐さんは気にしない。静かに生きるつもりなのに、どうしてこう逆鱗踏むかなぁ。ほっといて貰えれば、大人しくしておくのに。それが『世間の望み』だって思ってたから、五年近くも我慢してたのにさ。
……更生って、難しいね。
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この数ヵ月後、第八次ステーション間大戦勃発。
その戦火は遠く中立地の地球まで飛び火する事となる。