表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
破壊か保存か  作者: 九乃頭虫
転生と出会い
9/9

八話 出会いと襲撃

「ケイはまだ起きない?」

「ああ、死んだように眠ってるぜ」

「縁起でもないこと言わないでよ…」


二人の会話で目が覚める、片方がホークの声、もう片方が森で出会った男性だろうか。


「お、目、覚めたみたいだな」

「ケイ、怪我は平気?」

「うん…なんともない、生きてるのが不思議だよ。えーと、何があったの?」


そう訪ねながら周囲を見渡す、どうやら此処は宿屋の様だ。


「ウェーバーの宿屋だよ、あの時気絶したケイを背負って、此処まで来たの」

「…ウェーバーって…っもう着いたの…!?っていうか、あの猪は?」

「奴なら、なんとか倒せたよ、グラムにも手伝ってもらったしね」

「…グラム?」


僕は聞き覚えのない名前に首をかしげる。


「俺の事だ、自己紹介してないから知らないのも仕方ねぇな」


森で出会った、短めの紫髪で勝ち気な赤色の目をした男性が名乗り出る。


「俺の名前はグラム、あんたらと同じ、冒険者だ。あんたは…ケイだっけ?」

「…うん、…よろしく」

「ああ、よろしくな、…あんた、気絶しただけだってのに、随分と眠そうだな?」

「ケイは寝起きが悪いんだよ、完全に目が覚めるまで十五分はかかった思うよ」

「なんだそれ、大分面倒な体質だな」


この世界に来てからその体質もどうにかしようとは思っている。


「あ、もうすぐ出港の時間だね、ケイ、行こうか」

「うん、わかった」

「グラムもありがとう、またね!」

「二人共、ちょっと待ってくれ!」


港に向かおうとした僕達を、グラムが呼び止める。


「どうしたの?」

「俺も、連れて行ってくれないか?」

「…本当に、どうしたの?」

「ケイに怪我させちまったのは俺が手を貸してくれなんて言ったせいだし、何か、お詫びしようと思ってな、俺は戦闘くらいしか取り柄ないけど、用心棒くらいにはなんだろ?ずっと一人で冒険者やってきたし、たまには、仲間を作るのも良いかなー、ってな。勿論、金は貰わない、どうだ?」

「ふーん…ケイ、どうする?正直な所、私はどっちでも良いんだよね」

「付いて来てもらおうよ、僕は戦闘に自信が無いし、心強いと思うよ」


(ゲームだったら仲間は増えた方が良いし)


「分かった、じゃあグラム、改めてよろしくね」

「ああ、こちらこそ、役に立って見せるぜ?」


ーーーーー


「出っ港しまぁすっ!!」


船員の大きな声を合図に船が動き出した。心地よい潮風が肌を刺激する。沈みかけている夕日が海の景色を彩っていて、とても綺麗だ。

(船か…中学校の修学旅行以来だな…そういえばあの時、クラスのお調子者が海に落ちかけて大騒ぎになったっけ、…懐かしい…)


「ケイ?なんか黄昏れているけど、どうかしたの?」


甲板から海を眺めている僕にホークが話しかける。


「え?ああ、ホーク、…ちょっと昔の事を思い出してたんだ」

「昔の事?」

「うん、初めて船に乗った時の事、あの頃はまだ楽しかったなぁ、って」

「初めて船に乗った時か…、私はあまり良い思い出は無いな…」

「そうなの?」

「うん、私の父親って、漁師なんだけどね、ある日、漁に連れて行ってくれたんだ、手伝わせてやる、って、それが、初めて船に乗った日だった、でもその日、急な大嵐に遭遇したの、それだけでも大変だっていうのに、水棲の魔物まで襲ってきたものだから甲板はもう、大混乱だった、何とか生き延びることは出来たけど、今でも、船に乗るとよく思い出すんだよね…」

「ホークが悪運に強いのって、その時からなのか…」

「ふふっ、そうかもね…でも、今じゃあ、もう、懐かしい思い出だよ」


ーーーーー


船が港に到着する。もうすっかり夜になってしまった。


「わー、もう真っ暗、二人共、早く宿に行こうよ」

「っ、賛成だ...」

「グラム?どうしたの?」

「悪い...少し酔った...っ、船は苦手なんだよ...」

「そうだったの、宿屋についたらゆっくり休ませてもらいなよ?さ、ケイ、行こうか、明日も歩くし、しっかり休んで行こう」


ーーーーー


宿屋に到着した僕たちは、それぞれ部屋を借りて、明日に備えて、眠りについた。しかし、平和な夜とは言えなかった


「ケイ!起きろ!」


グラムの声で目が覚めた、何か慌てているようだ。


「...グラム?どうしたの...?」

「魔物の軍勢が町を襲いに来たんだ!俺達も早く行くぞ!!」

「え、ぇえっ!?何がっ!?」

「話は後だ!とにかく来い!!眠いんだったら一発ぶん殴ってやる!」

「っ、それは大丈夫!」


僕は急いで着替え、グラムと共に宿屋を出た。


「っ、グラム!そういえばホークは!?」

「ホークなら先に行って戦ってる、けどあの数だ、急がないとやべぇぞ!門のすぐ外だ!」


ーーーーー


門の外には大量の魔物が居た、町に滞在していた冒険者と衛兵がこれと戦っている。


「ホーク!!」

「二人共!間に合ったね!手を貸して!」

「承知した!」


(敵は...武装したリクルト...?いや、違う…リクルトには角があったけど、こいつらには無い…良く似ているけど、違う魔物?)


「人間どもォ!!中々やるではないかァ!」


その時、魔物の軍勢の中から、一人の男が現れた。


「っ!?魔物が喋った!?」

「そこの者ォ!私は魔物などではないィ!私は『魔族』だァ!」


魔族、そう名乗った青白い肌の男は茶色をした鋭い目で此方を睨んだ。


「よく聞けェ!私の名はイタン!!我等が王の命によりィ、この町を落としに来たァ!」

「はっ、魔族も、魔物も、似たようなもんだろうが!」


グラムが、トンファーを構え、イタンと名乗った男へ向かって走り出した。


「私の相手は貴様かァ?受けて立とうゥ!!魔物達よォ!お前らは他の人間を片付けてしまえェ!私の戦いには手を出すなァ!」


魔物達が、イタンの号令に応え、一斉にこちらへ襲い掛かってくる。


「っ!?ホーク!グラムが一人で行っちゃったけど!?」

「グラムだって強いはず、だからきっと大丈夫!まずは目の前の敵に集中して!」

「っ、分かった!」


ー視点変更『グラム』ー


「今一度言おうゥ!私の名はイタン!!誇り高き魔族の戦士だァ!」


(ほーお、ご丁寧に自己紹介してくれるとはね、武人って訳か?良いね、乗ってやる!)


「オレの名はグラム!ただの冒険者さ!」

「むゥ?名乗った人間はァ、貴様が初めてだなァ、少しはァ、骨がありそうだァ、行くぞォ!!」


イタンが、手に持つ鋭い刺突剣を構え、突きを放った。


(ッ!防御補助を発動…!弾く!)


突きを弾かれたイタンだが、すぐに体制を建て直し、素早く攻撃に転じた。


(なっ、こいつ…!動きの予備動作を殆ど殺してやがるっ…!何とかして隙を…ッ)


「つあぁっ!!」


俺は、イタンの突きをかわした直後、間髪入れずに、左手のトンファーで、イタンの手に持つ刺突剣を、地面に叩きつけ、突き刺した。その瞬間、イタンに、隙が生まれたことは、言うまでもない。


(よし!ここだ!!)


「であぁっ!!」


ーブンッ!!ー


風を切る音。其処に、イタンの姿は無かった。


(っ!何!?)


その時、後ろに身を倒し、攻撃を回避していたイタンの蹴撃が、腹部に直撃する。俺は、その衝撃で、二、三メートルほど吹き飛ばされた。


「っぐ、かはっ…!」

「私の手からァ、一瞬でも剣を離させるとはなァ、少々驚いたぞォ…!窮鼠猫を噛む、これは貴様ら人間の言葉だがァ、よく言ったものだなァ」


イタンは、不敵な笑みを浮かべながら、地面に刺さっている剣を引き抜き、もう一度構えを取る。その目には、もう、油断は微塵も感じられない。


「はっ!勝手に窮鼠にしてもらっては困るな、俺はまだピンピンしてるぜ?」


俺は、倒れた体を起こし、再び構えを取った。


「…ッククゥ、クハハハァ!!…なるほどォ…!先程の言葉はァ、失礼にあたったようだなァ、面白いィ…私はァ、貴様のような人間と戦えて光栄に思うぞォ…!今まではァ、至極つまらない人間ばかりしかァ、相手にしていなかったからなァ、新鮮な気持ちだァ…!貴様はァ、私の手で華々しく散るといいィ!」


イタンが強く地面を蹴り、一気に距離を詰めてくる。その鋭い目と、手にした剣には、確かな殺意が宿っている。


(来る!右か、左か、下か上か中央か…ッ!)


イタンは、地面を強く踏み込み、右腕を狙い突きを放った。


(右ッ!)


俺は、左側に身を傾け、これを回避する。その直後、イタンは、間髪入れずに、もう一度地面を強く踏み込み、剣を横に滑らした。


(っ、薙いできやがったっ!?防御補助を発動…!防ぐ!)


俺は、咄嗟に、右腕のトンファーで、これを防御する。


(…!体に打ち込めるっ!)


「はぁっ!!」


そして、そのまま、左手のトンファーでイタンの体に突きを入れた、しかし。


ーガキィン!ー


(チィ…!防御補助で防がれたっ!?)


二人は、暫く、その体制のまま、硬直していた。が、勝負は、一つのきっかけだけで、一瞬で決まるものだ。


(っ、埒が明かねぇ!!)


俺は、イタンに、渾身の頭突きを放った。それは、イタンの頭部に直撃し、体制を崩した。


「っらあぁっ!!」


俺は、その隙をつき、イタンの腹部に、右手のトンファーを放つ。そして、透かさず、イタンの脚部に、左手のトンファーを打ち振り、イタンの体を倒した。そして、両手を揃え。イタンの胸部に、渾身の力を込め、それを、打ち下ろした。


ードズッ!ー


勝負は、決した。


(はぁ…!はぁ…!やったか…!)


「…ククゥ、クハハハハァ…!人間ごときにィ…ここまで、やられるとはなァ…!」

「っ、まだ動けるのかっ!?」


俺は驚きで、身を後ろに飛ばす。


「…ッククゥ、馬鹿を言えェ…後はァ…消える、だけよォ…敗北者の…運命だァ…。貴様ァ…グラムと、言ったなァ…この、心に…刻ん…で…お…」


イタンは、なぜだか満足げな表情で、消えていった。


(…なんだ…?この後味の悪さは。…イタン…か、覚えておいてやるか)


俺は、イタンの遺した命石を、拾い上げ、未だ魔物と人間の攻防を繰り広げている後方を、振り返る。


(さて、敵の大将は潰した。ケイと、ホークの加勢に向かうか!)


ー視点変更『ケイ』ー


「っ、ケイ!後ろ!」


(っ、後ろ!?うわっ!!)


ホークの声に導かれ。後ろに迫っていた魔物を切り伏せることになんとか成功する。


(っ、危なかった…、流石に町を攻めてきただけあって、数が多い…!)


「ギィーッ!!」


(っ、左!守れ!)


左から迫っていた魔物の剣を防御補助で弾き、胴体を両断する。


(…なんだ、統率が乱れてきた?…っ、右斜め前!撃て!…よし!やっぱりさっきより、魔物たちの動きが悪くなってる…!どうしてっ、そうか!グラムがやってくれたんだ!)


「であぁっ!!」


(よし…!数も目に見えて減ってきている…!)


その時、大きな声が、周囲に響いた。


「皆!!敵の将は倒れた!!こいつ等を片付ければ、俺たちの勝ちだ!!」

「あれは…グラム!?やってくれるぅ!ケイ!もう一踏ん張りだよ!」

「承知したあぁっ!!」


ーーーーー


「やったぞおぉっ!!」

「ヒャァッホーウゥッ!!」

「見たか!人間の力を!!」


周りの衛兵や、冒険者たちが、口々に歓喜の声をあげる。僕はというと、疲労で、その場に寝転んでいた。周りを照らす朝日が、人間たちの勝利を祝福しているようにも思える。


「ケイ、お疲れ様」


ホークが歩み寄り、労いの言葉をかけてくれた。


「ホーク…よく、立ってられるね…」

「ふふ、体力には自信がある方なんだ。さぁて、グラムを迎えに行こうか、大将首を取った英雄の凱旋、ってね」

「あはは…それはちょっと大袈裟じゃない?」


向こうから、グラムが走ってくるのが見える。


(この世界に来てから、危険ばかりだったけど…、前の僕には居なかった、友達が、仲間が出来た。今は、元の世界の事は忘れて、三人で、この勝利を祝福しよう!)


諸事情によりここで打ち切りとさせていただきます。この作品は世界観、その他設定を見直してから再度もうひとつの作品として投稿致します。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ