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破壊か保存か  作者: 九乃頭虫
転生と出会い
5/9

五話 始めての戦い

「うーん、最初だし、リクルト退治でも行こうか」


僕とホークは、冒険者組合の依頼掲示板の前に居る。


「リクルト?」

「うん、魔物の中でも大分弱い部類の奴、弱いくせに数だけは異常に多くてさ、主に商人とかを襲ってて、人間に迷惑ばっかりかけてるの、初心者にはもってこいの相手だよ」

「そうなんだ…」


(ゲームの雑魚キャラにしては聞いたことの無い名前だ。やっぱり地球とは色々と違う…のか?)


「それじゃあ、ケイ、出発しようか」

「あ、うん」


僕とホークは冒険者組合を後にして、町の正門に向かう。


「リクルト退治とか言ってたけど、どこに向かうの?」

「ここから東…だったかな、それほど遠くないところに天然の洞窟があるんだけど、そこがよくリクルトの住処になっちゃうんだ、何度追い払ってもまた住み着くから、初心者の鍛練によく使われているの」


そうしているうちに正門に到着する。


「ああ、そうだ、はいこれ」


ホークからバックパック型の鞄を受けとる。


「えっと、これは…」

「鞄は冒険者の必需品だよ、それ、あげるから使いなよ」

「あ、ありがとう」

「さて、ここから先は魔物に遭遇する可能性が十分にあるから、警戒を怠らないように」

「…っうん、分かった」

「そんなに緊張してたら戦えないよ?適度に力を抜いておきなよ」


僕は静かに深呼吸をする。


「…フゥー…っよし、行こう」


僕とホークは正門を潜る、まず目に入るのは一面の草原だ。


「試験の時も思ったけど、綺麗な景色だよな…」

「でしょ?これで魔物がいなかったら最高なんだけど。えっと洞窟は…こっちだ、付いて来て」


草原を二人で歩く、道は舗装されておらず、人が通った後が道の様になっている、こうやって道が作られると思うと、開拓地に居る気分で少し気分が上がる。


「…!ケイ、あれを見てごらん」


道中、ホークが道端を指差す。


「え…あれが、リクルト…?」

「そう、数は二、大きさも一般的なものだね」


リクルトと呼ばれるそれは、人間の子供ほど大きさで鈍い赤色をした鱗のある筋肉質な人型、ワニと犬を足して角を付けたような奇妙な頭部、見た目だけだと強そうだが雰囲気のせいか小物の様に見える。


「さて、はじめての戦いと行こうか」

「…っうん」

「私が右をやるから、ケイは左、敵の方から目を離さないようにしなよ!」


(どうか何事もなく終わりますように…!…纏えっ!)

僕は攻撃補助を発動し、ホークと共に二体のリクルトに斬りかかった。


「ギィー!」


ホークが切りつけたリクルトは一撃で崩れ落ちたが、僕が攻撃したリクルトは一太刀では倒れなかったようだ、リクルトが拳を振り上げ反撃をしてくる。

(っ…!守れ!)

僕は咄嗟に防御補助を発動させ、なんとかこれを防御する。


「ぬあぁっ!」


リクルトが攻撃の反動でよろけた所に、僕は透かさず斬りつける。


「ギッ…キ…」


リクルトは二、三歩後退した後、木が軋む様な声を上げて崩れ落ちる、そして赤く光る水晶の様なものを残し、気体となって消滅した。

(はぁっ…!…っやったか…)


「ね?思ったより弱かったでしょ?」

「…ま、まぁそうだけど…正直、死ぬかと思ったよ…」

「まだ洞窟にも着いてないっていうのにそんな調子で大丈夫?あ、そうだ、その石、拾っておきなよ」

「石って…これ?」


僕はリクルトの死体から出てきた赤く光る水晶の様なものを拾い上げる。


「そうそう、それは『命石』生物は死んだらそれを残して消滅するの。魔物の命石は討伐の証にもなるし、学者達の研究対象だから売ればお金にもなる、魔物の命石は冒険者にとっての生命線なんだよ」

「そうなんだ、この石がねぇ…」


(さっき敵を斬った感触…まだ少し残ってる…、っなんか気持ちが悪いな…)

僕はリクルトの命石を鞄にしまい、ホークと共に洞窟へ向かう。道中何度かリクルトに遭遇したが、なんとか撃退できている。


「ケイ、着いたよ、あそこが目的地の洞窟」


ホークが指差した方を見ると大きな山があり、山肌に大きな洞窟が開いていて、入口の前にはリクルトが二体立っている、見張りのようなものだろうか。


「さぁ、行こうか、今度ははじめての洞窟攻略だね」

「分かった、…っ行こう」


(…纏え)

攻撃補助を発動する。相手は見張り、常時警戒をしているだろうからこれでは奇襲は成功しそうにない、ならば初手は…

(っ隙を作るっ…!撃て!)


「ギッ!?」


僕の手の平から放たれた礫が片方のリクルトに直撃する、もう片方のリクルトは少し動揺しているようだ、この隙を見逃すものか!


「だあぁっ!」


僕とホークはリクルトの目の前に飛び出し、斬りかかる。ホークは一撃で片方を撃破し、僕は一太刀入れて怯んだリクルトを透かさず斬りつけ撃破する。


「攻撃魔法で隙を作る、か、私だったらそのまま突っ込んでたなぁ」

「よくそれで今まで生きてこれたな…」

「運には自信があるんだよね。さぁ、ここからはリクルト達の住処だ、今まで以上に気を引き締めていこう」


僕たちは洞窟へと足を踏み入れる、その直後。


「ガァウッ!」


不気味な声と同時に狼のような魔物が襲いかかってきた、回避を試みたが間に合わず、右腕に噛みつかれる。

(っ!なんだこいつっ!)


「ケイ!」


ホークが僕の腕に噛みついている魔物の喉に剣を突き立て、首を落とした。


「…っつぁっ…!」


(っ…!痛い…!というか熱いっ!)

傷口から魔力が吹き出す、焼ける様な痛みはまだ続いている。


「今治すね…!これだけ深いと完治するまで時間がかかるかも知れないけど…」


ホークが回復魔法を発動させ、治療を始める。

(痛みがどんどん引いていく…やっぱり魔法ってすごいんだな…)


「今の奴…何なの?」

「あいつはウォドック、リクルト達が飼ってる番犬なんだ、すばしっこいから、正直リクルトよりも厄介だけど……よし、終わり、傷はどう?」


痛みは完全に引いている、さっきの傷が嘘のようだ。


「大丈夫そうだね、それじゃあ、先に進もう」


道中何度もリクルトと遭遇した、そのたびに補助魔法を発動させ、撃破する。同じことを繰り返しているにも関わらず、死と隣り合わせの戦闘には飽きることがなかった、楽しいわけでもないけど、むしろ怖い。


「っと…ケイ、ちょっと止まろうか」


ホークが立ち止まり、前方を指差す、指を差した方向には、リクルトが三体、ウォドックが二体、開けた場所に立っている。


「五体二って…ちょっと無謀すぎるんじゃあ…」

「大丈夫、まずは厄介なウォドックから倒そう、そうすれば後はリクルトだけ」

「…っ死なないことを祈るよっ!」


(撃て!)

まずは攻撃魔法で片方のウォドックを攻撃する、意外にもそのウォドックはそのまま息絶えてしまった。

(よし、やったか!次は…)


こちらに気付いたもう片方のウォドックが周りのリクルトよりも数段早くこちらに駆けてくる。

(奇襲じゃないならっ…!守れ!)

防御補助でウォドックの牙を防御する、少し衝撃でよろけてしまったが、僕は無理矢理薙刀を押し込んだ。


「ガゥ…クゥ…」


薙刀はウドックの胴体に直撃し、ウォドックは崩れ落ちた。

(っよし!後は…!)


「ってあれ?」

「ケイがウォドックの気を引いてくれたお陰で、リクルト達を楽に倒せたよ」


どうやら僕が戦っている間に、他のリクルトはホークが倒してしまったようだ。


「え、三体いたよね、倒すの早くない?」

「そりゃあ相手はリクルトだからね?」


(リクルトって、本当に雑魚なんだ…)

そんな話をしていると、一際大きな足音が聞こえてくる、サイズの大きなリクルトは何度か見たが、その足音とは少し違う。


「ギィーッ…!」


それはリクルトによく似ているが、三メートルほどもある巨体で、角も大きく鋭い、目は群れを荒らされたからか殺気を宿し、手には大きな棍棒をもっている。周りにはリクルトが五体ほど居て、こちらを威嚇している、巨体を持つそれが群れの長ということが用意に分かる。


「ケイ、親玉の登場だっ…!!」


群れの長はホークめがけて棍棒を思いきり降り下ろした、ホークはこれを回避する、ホークの代わりに棍棒の一撃を受けた地面は激しい音を立ててヒビが入る。

(ってえ!?あんなの喰らったら即死だよな!?)


「ケイ!まずは取り巻きを消すんだ!」

「っこの状況でんな無茶をっ!」

「親玉は私が引き付けるから!頼んだよ!」

「っ分かった!であぁっ!」


僕は周りのリクルトを排除して回る。そしてあとは群れの長ただ一匹だ。


「ギィッ!ギィッ!」


群れの長は見境無く地面を打ち付けている。これでは危なくて近寄れたものではない。

(だったら…!っ撃て!)

僕の手から放たれた礫は群れの長の脇腹に直撃する。


「ギッ!ギィー…!」


怯んだ群れの長に、ホークがここぞとばかりに攻撃する、ホークの剣は群れの長の足を切り裂き、群れの長を転倒させることに成功する。

(っ今だっ…!)

僕は倒れた群れの長に駆け寄り首を突き刺した。


「ギィッ!…ギ…」


群れの長は力無い声を上げ、そのまま消滅していった。


「フゥー…」

「どうだったケイ、はじめての戦いの感想は?」

「…死ぬほど怖かったです」

「その程度の感想しか言えないって事は相当だったんだね…」

「…ホークって…いつもあんなのと戦ってるの…?」

「まあね、慣れれば楽なものだよ?じゃあ、はじめての実践も終わったことだし、冒険者組合に戻ろうか」


僕とホークは洞窟を後にする。帰りの道中でも何度かリクルトに遭遇したが、もう慣れたものだ。

(そういえば、魔物を殺す感触にも慣れてしまったような…)

それ以外は何事もなく、僕たちは無事に冒険者組合へとたどり着いた。


「あ、お帰り、ケイ」


冒険者組合に入った直後、青髪の青年アロンに話しかけられる。


「どうだったホーク、ケイの腕前は」

「んー、実力事態は並みだね、でも戦い方がアロンと似てるかも」

「そうなの?」

「うん、わざわざ攻撃魔法で隙を作ったりするところが特にね」

「ホークとダイトはいつも突っ込みすぎなんだよ、見てるこっちがヒヤヒヤするくらいに、魔物を怖いと思う所はケイを見習った方が良いんじゃない?」

「…魔物を怖がる…考えたことも無かったな」


「おーい!アロン!」


奥から銀髪の青年、ダイトが走ってくる。


「お、ダイト、良さそうな依頼は見つかった?」

「ああ、ここから西の古い砦に魔物が住み着いたんだってよ、それを退治しにいくんだ」

「西の古い砦…ヴァーシュ砦か、その道なら分かる。それじゃあ、僕たちは依頼をこなしにいくよ、一匹でも多くの魔物を倒せますように!」


アロンとダイトは冒険者組合を足早に去っていった。


「さぁて、まだ時間もあることだし、私たちももう一仕事しようか!」

「えっ?っちょっと待ってよ!」


僕はホークに手を引かれ、次の依頼へと向かった

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