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破壊か保存か  作者: 九乃頭虫
転生と出会い
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三話 魔法と冒険者

「いい?まず、私達人間には『魔力』っていうものが流れているの。人間の体を動かす動力源みたいなものね、正直常識以前の事だから、それくらいは知っていると思っていたんだけど…。で、その魔力を使って行う行為を総じて『魔法』と言うの。ここまで大丈夫?」


「…でも、それだと魔法を使いすぎると体が動かなくなってしまうのでは?」


「それについては大丈夫、人間の体は結構賢いから体が動かなくなる前に魔法を使えなくなるよ。魔法には色々な種類があって、弾丸を生成して敵を攻撃するような魔法を『攻撃魔法』、身を守る盾を生成したり、腕や武器に魔力を込めて攻撃力を高めたりする魔法を『補助魔法』、魔力を使って体の再生能力を高める魔法を『治癒魔法』というの、代表的な魔法はこの三つね、覚えておいて、ちなみにさっき言った『空間魔法』っていうのは空間に穴を開けてその中を移動するような魔法のことね、他にも色々あるんだけど、今は覚えなくて良いかな。ケイは、『属性』の事知ってる?」


「いえ…全く」


「だよね、人間の魔力には八つの属性があってね、属性によって髪の色が変わるの、炎が赤髪、水が青髪、風が緑髪、雷が金髪、土が茶髪、闇が紫髪、光が銀髪、無が黒髪、っていう感じにね、同じ炎でも髪が橙色だったり朱色だったりするけど」


「…じゃあホークさんは赤髪だから属性は炎、僕は黒…っと…茶髪だから属性は土…ですか?」


「そう正解。属性にはそれぞれ相性があってね、炎は水に弱く、水は雷に弱く、雷は土に弱く、土は風に弱く、風は炎に弱い、図で表すとちょうど五角形になるね、闇と光はちょっと特殊で、お互いを相殺し合う存在なの、無は文字通り属性の相性はないよ。それと人間は髪色の属性とは違うもう一つの属性を持っていることが多いんだ、たまに同じ人もいるけど、それは『副属性』と呼ばれていて眼の色に現れるよ、あ、ちなみに髪色に現れる属性は『主属性』って呼ばれているよ。眼に現れる色は髪色の種類と同一、私の眼の色は銀でしょ?だから私の副属性は光、ケイの眼は水色だから副属性は水だね」


なるほど、魔力の話は面白いが、少し複雑だな…


「よし!説明終わり!じゃあちょっと付いて来て」


「えっ、何処に行くんですか?」


「ん?『冒険者組合』だけど…あ、そっか、魔力も知らなかったんだもんね、知ってるわけ無いか、空間魔法に詳しい人って住んでいる場所が此処から大分遠いんだ、だからそこに着くまでケイが生き残れるようにしなくちゃね。まぁ、詳しくは着いてから説明するよ」


ホークさんに連れてこられた『冒険者組合』はとても賑やかな場所で、剣や槍などの武器を持った人が、情報交換などをしている様子だ、笑い声も聞こえる。五月蝿いくらいだ。


「やっぱり昼時は騒がしいなー此処…。ケイは、私と出会った時何に殴られたか覚えてる?」


「いえ…とても痛かったので後ろを見る余裕ありませんでした」


「そっか、あれは『魔物』といってね、何故かはまだ解明されてないけど人間に大きな敵対心を持ってる生き物なんだ、奴等の所為で人間は大分追い詰められていたね。そこで作られたのが此処冒険者組合、此処はそんな魔物と戦いたいと思う人を冒険者と呼び、一つにまとめ打倒魔物を掲げているんだ、今はどんな依頼も受ける何でも屋みたいになってるけどね」


「…そんな所に、何故僕を?」


「そりゃあ、ケイを冒険者にするためだよ」


「…!?そんな、む、無理ですよ、魔物と戦うなんて」


「別に無理に戦わなくても良いよ、せめて身を守ってくれる術を覚えてもらえれば良いから。それに身分証明にもなるし、じゃあ、冒険者登録の手続きするから付いてきて」


僕達は受付と書かれているカウンターに向かう。


「今日はアロンが此処の担当なんだね」

ホークさんがカウンターの奥にいる跳ね方に特徴のある青髪で優しそうな緑色の眼をした青年に話しかける。


「うん、ホークは今日は何の用?」


「この人の登録に来たんだ」


僕はホークさんに背中を押されカウンターの前に向かった。


「…この人は?」


「極度の世間知らず、ほっとけないから連れてきたんだ」


「なるほど、ホークらしいね。じゃあ君、名前を教えてくれるかな?」


「えっと、ケイです」


「ケイだね、よろしく。自分の年齢は分かる?」


「一七…です」


「名前はケイ、十七歳、性別は…男だよね?」


「あ、はい」


「よし、じゃあこの用紙をもって試験会場に向かってくれ。場所がわからない場合は、用紙の裏に描いてある地図を見るか、ホークに案内してもらってくれ」


用紙を受け取り、僕はホークさんと共に冒険者ギルドを後にした。


「…あの、試験会場っていうのは何ですか?」


「この町から北西にある人工の洞窟のことだよ。試験といっても簡単なものだけどね、体力に自信はある?」


「あー…わからないです」


「…まぁ、なんとかなる…かな?」


体力か…転生する前はからっきしダメだったけど、この体だとどうなんだろうか。


僕はホークさんに案内され、試験会場に到着した。


「じゃ、此処から先は一人で行ってね、中にいる試験官にその用紙を渡せば試験の内容を説明されると思う、じゃあ、頑張ってね」


そう言われ、僕は試験会場に足を踏み入れた。


「お、よう!冒険者志望か?」


短い銀髪で明るい赤い眼の青年が元気よく話しかけてきた


「あ、はい、そうです。えっと、試験官の方ですか?」


「その通り、敬語なんて使わなくて良いよ、じゃあ用紙を見せてくれ」


「はい、どうぞ」


「よし、えーっと…ケイか、よろしくな、俺は今回の試験官を勤めるダイトだ、この扉から道に沿って行くともう何人か試験官がいるから、そいつらが各試験項目について詳しく説明してくれるぞ、じゃ、頑張って来い!」


僕は言われるがまま扉をくぐる。


しばらく進むと長い金髪を横で結んだ礼儀の正しそうな青い眼の少女に出会う。


「こんにちは、冒険者志望の方ですね」


「あ、はい」


「私は試験官の、ディオネと言います、よろしくお願いしますね。それでは、用紙を見せてください」


「はい、どうぞ」


「ケイさんですね、では、この試験項目について簡単に説明します。この試験は体力試験です、ケイさんにはこの崖を上ってもらいます、無事上りきれたらその時点で合格です、では始めてください」


…最初からおかしいなこの試験。目の前にそびえ立つ崖は二十メートルほどの高さがあり、所々に登るための段差がある、ロッククライミングの様なものだと思ったが、段差の間隔は二メートルほど、アスリートくらいじゃないと登るのは普通は無理だ。しかし僕は転生をしているはず、運動神経が同じとは限らない。勇気を出して僕は跳んだ。


「うわっ!?」


その瞬間僕の体は二メートルほど飛び上がった、驚きつつもなんとか段差の上に着地する、疲労感は無い、まるで飛ぶ直前に体重が一瞬にして軽くなったようだった。


「この体の運動神経はどうなってるんだ?というか別に驚かれてないってことは、これが普通なのか…」


僕はどんどん段差を上っていき、あっさりと頂上まで着いてしまった。


「試験は合格です!そのまま先に進んでください!」


下から試験官の声が聞こえる、言われた通り先に進もう。


進んだ先には少し跳ねた茶髪で冴えない緑色の眼をした青年が立っていた。


「あ、どうも。冒険者志望の方っすよね、用紙を見せてください。…ケイさんっすね。よろしく、俺は試験官のアレンっす、此処では魔法の実技試験をします、攻撃魔法をあそこにある的に当てるだけなんで、簡単にできると思いますよ」


…魔法の使い方はまだ知らないんだけど、やるだけやってみるか。えーっと、確か、ゲームとかだと、こう手をかざして…


「っわ!」


…出た。少し頭でイメージしただけだったんだけど、僕の手から石の礫のようなものが放たれ、的を破壊した。こんなに簡単なもので良いのか魔法って。


「大丈夫っすね、合格っす。それじゃあ、先に進んでください」


「…あの」


「なんっすか?」


「これ、試験ですよね?こんな簡単なもので良いんですか?」


「ああ、冒険者っていうのは魔物と戦う覚悟があれば誰でもなれる様なものなんっすよ、それに、試験で一番重要視されるのは次の最後の試験っすから、気を抜いちゃダメっすよ!」


最後の試験は何をするんだろう、体力、魔法と来たから、次は知識辺りかな?


次の試験官は短めの青髪で鋭い水色の眼をした青年だった。


「よう、冒険者志望だな、此処では戦闘の実技試験を行う。俺は試験官のヒョウだ、お前のやることは一つ、ただ俺と戦ってくれれば良い、お前に十分な素質があったら合格の印を押してやる。武器は何が良い?訓練用のものだが、一通り揃っているぞ」


最後の試験はそう来たか、戦いは転生したからといってできるものじゃないと思うけど…とりあえずやってみよう。


「じゃあ、取り敢えず剣でお願いします」


「剣か、短剣と長剣があるが、どちらが良い?」


「うーん…短剣で」


「分かった、盾は使うか?」


「あー、要らないです」


「そうか、では始めよう、言っておくが本気で来い、何なら俺を殺しても良い、お前からかかってこい」


試験官が剣を抜く。僕も剣をしっかりと右手で握り直し、試験官に向かって走り出した、転生する前よりずっと早く走れる、助走の勢いを殺さずに、僕は試験官に向かって剣を振った。が、あっさりと回避され後ろへ回られた、僕は咄嗟にジャンプして背後から足への剣撃は回避することに成功したが、その隙を突かれ背中に試験官の拳が直撃した。空中で拳を受けた僕は一メートルほど飛ばされ、試験官の方を見るとすでに僕の目の前に剣先を向けていた。


「俺の勝ちだな、だか合格だ」


「…え?」


「言っただろ、素質があれば合格の印を押すとな、お前の反射神経はなかなかのものだ、戦闘に慣れていけば良い戦士になれるだろう、用紙を寄越せ、印を押してやる。…よし、これで後はこの用紙を組合に持っていけば、お前は冒険者だ」


「あ、ありがとうございます」


「帰りはあそこの扉からだ、気を付けて帰れよ」


帰りの扉を進んで行くと、試験会場の入り口に着いた。


「よう、お帰り、どうだった?試験の結果は」


入り口にいた短い銀髪で明るい赤色の眼をした試験官、ダイトに話しかけられる。


「何とか、合格しました」


「お、良かったな!お前が一匹でも多くの魔物を倒すのを祈ってるぜ!」


試験官に見送られ、僕は試験会場をあとにする。


「や、どうだった?」


外に出るとホークさんと合流する。僕は結果の報告のため、合格の印が押された用紙を手渡す。


「おー、合格したんだね、それなら良かった。さぁ、とっととテノールに戻って、冒険者登録を済ませますか!」


時はもう夕方、僕たちはテノールに戻り、冒険者組合に向かう、昼間とは違い妙に静かだ。


「此処、こんなに静かでしたっけ…」


「うん、夕方時になるとみんな依頼をこなしに行ったりするから大体この時間は静かだよ」


人がほとんどいない冒険者組合はとても広く思えた、椅子とテーブルが食堂並みにあり、カウンターは二つ、依頼の掲示板は種類別に三つあるようだ。


「二人ともお帰り、ケイの試験はどうだった?」


出発するときに受付にいた跳ね方に特徴のある青髪で優しそうな緑色の眼をした青年、アロンが愛想よく話しかけてきた。


「合格したって、大したものだよ、昼間は魔力も知らなかったケイが、夕方には冒険者だからね」


「それは良かった、それじゃあ、ケイ、合格の印を押された用紙を渡してくれ」


「はい、どうぞ」


「ありがとう、ちょっと待ってて………待たせた、はいこれ」


アロンから手帳のようなものを受けとる。その手帳には冒険者組合の入り口に描かれていた紋章と、僕の名前が書かれていた。


「あの…これは…何ですか?」


「『冒険者の証明書』だよ、文字通り自分が冒険者であると証明してくれる優れものさ、首にかけたりして常に眼に見えるようにすると良いよ」


なるほど、生徒手帳の様なものか。


「よし!ケイも無事に冒険者になれたことだし、今日はもう宿屋に戻ろう、明日はちょっと忙しくなるからね、じゃ、ありがとうね、アロン!」


アロンに別れを告げ、冒険者組合を後にする。冒険者…か、状況に流されてなってしまったけど……まぁ、現実よりは楽しいかもしれないな。

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