一話 異世界からの訪問者
都内某所、いい天気だ。といっても僕は一人部屋にいるだけだ。
誰が見ても無意味な一日を送り、眠るだけ。
多分、明日もそうなんだろう。今日も、そんなことを考えながら目を閉じる。
...この部屋、こんなに風通し良かったかな、鳥の声も聞こえる。
異様に気持ちのいい違和感の正体を確認するため、閉じたばかりの目を開ける。
青空、草原、太陽。言葉が出ない、何も考えられない、そこには広大な大地が広がっていた。
身を起こしてしばらく立ち尽くしていると、前方から女性が一人走って来た。
「そこの人後ろ!!後ろっ!!」
後ろ?後ろに何か...
振り向こうとしたその時、後頭部に大きな衝撃が走る。僕は堪らず倒れこむ。何かに殴られたようだ。
僕は経験したことの無い痛みに悶え、そして恐怖した。
背後では地面を蹴る音や、何かが風を切る音が聞こえてくる。
音が止むと、先程の女性がこちらに歩いてきた。
「大丈夫?思い切り殴られていたけど…」
頭を殴られたことを心配されたが、あまり大丈夫ではないので首を振る。一度に色々な事が起こりすぎて頭がどうにかなりそうだ。
「じゃあ、とりあえず町まで運ぶよ」
そう言われ、僕は、しばらくの間その人に背負われていたが
「あの…此処は何処ですか?」
僕は先程から気になっていた事を、ようやく口に出せた。
僕の問いを聞き、その人は少し驚いた顔をして
「えっと、殴られた衝撃で記憶跳んだ?」
そうじゃない。
「その…何て言うのかな…えーと…気がついたら此処にいたって言うんですか…ね?」
僕は他人と全く喋っていなかったことを痛感する。
「それだけじゃあ、よく分からないな…宿屋に着いてから詳しく話してくれる?此処じゃ、また魔物に襲われるかもしれないし」
僕はその言葉に違和感を覚えたが、僕は取り敢えずその言葉に従うことにした。