黒い渦
ミルネについて、上に上にと進んで行く。
街々が段々と小さくなってきて、まるで星粒の様に小さな光となってる。
「一体どこまで行くんですか?」
「もう少しよ。」
ミルネに言われるがまま付いて行くと黒い渦の様な場所に着いた。
「え…。何ですかこれ?まさか、この中に入れと?」
「そうよ。この渦の中に入っていかないとあの世にいけないの。」
「へぇ。って…、じゃ宇宙飛行士とかでも入るとあの世に生身のまま行けるって事ですか?!」
感覚的に地球と宇宙の間に存在する黒い渦…。もし生身のまま行ければすごい騒ぎだ。
「生身のある世界と魂だけの世界が行きゆきできるはずないじゃない。」
ミルネはクスっと少し呆れ顔になって微笑んだ。
「この黒い渦は魂のみの幽体だけが見える異空間よ。肉体を持つ者はいかなる者もこの黒い渦は見えないし、触れる事もできない。」
「なるほど。それなら生身のまま行くなんて絶対無理ですよね。」
「そうよ。もし、この黒い渦が見える人間がいたとしても、生身のまま入った人間はその次元の圧力にやられて存在そのものが消えてしまう…魂すら残さずに…。」
「怖いですね。」
「まぁ、そんな人間ここ何万年も見てないから安心して♡とにかく、中に入るわよ。」
そう言うと、ミルネは付いて来いと言わんばかりに先に黒い渦の中に入った。
それに引っ張られる様に僕の意思とは関係なく後ろから付いて黒い渦の中へと誘われた。
中に入って思った事があった。
まるでブラックホールの様な渦だったのに、中に入ると色々な街や歴史…そして人々が映し出されていた。
「これは…。」
「これは、過去から現代に現在生きている人達のリアルタイム映像よ。死んだ人はこの映像を見ながら自分の生きてきた人生に終止符を打ってあの世で魂を洗って生まれ変わるのよ。」
自分が想像していたあの世とは全く違う真実の内容に僕は少し感動した。
「そうだったんだ。次は何に生まれ変わるんだろう。」
「それは私にも分からないわ。まぁ、あっちに着いて神様の決定を仰いでからね。」
「なるほど。」
そうこう話してる内に渦の道の途切れが見えてきた。