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五話 初めてのモンスター

五話です。連日投稿したら二日ほど間が開きますね、気力が持たない感じがします。というより、前話のラストを勢いで書いてしまったせいで五話の始まりをどうしようか迷ってしまったのが大きいかもしれない

 とは言ったものの今はこの森を抜けるのが目下の課題だ。辺りに生える木の密度はそこまで高くなく視界もそこまで狭くないが、見た感じではこの辺りの木は広葉樹のようでまだ日が真上に出ている時間だというのに、多少薄暗い。昼時でこの様子では暗くなる前に野営の準備をしたほうが無難だろう。

 革袋に入れておいたものの中には野営に使えるものもある。唯一懸念することと言えばこの世界には魔法があり、となればよくある話しとしてモンスターや魔物と呼ばれるものが存在しているが、それはこの世界にも違いはない。

 洞窟の付近に生息していた魔物は盗賊時代に粗方狩り尽くしているため、あの洞窟内に魔物が入っていくことはほとんど無いと言ってもいいだろう。

 しかし俺のほうは安全とは言い難く、森のなかを歩いて国境を越えるとなると、どうしても魔物との戦闘は回避できるものではない。ここらに生息している魔物の強さは俺一人で倒せるような魔物ばかりなので、戦闘に関しては特に問題はないが常に気を張って歩かなければならないとなると、精神的に辛いものがある。とはいえ、街道を歩くとなるとばったり出会った冒険者と戦闘になる可能性がある。中身が変わったとはいえ、この体が賞金首であることに変わりはない。冒険者は基本的に数人で組んでいるため、出会ったら負けるとは言わないものの勝てる可能性もそこまで高くはない。それならば多少気を張ってでも森のなかを歩いたほうが死ぬ可能性は低いだろう。

 野営する場合は結界石というものをテントの近くに置いておけば、多少強い程度の魔物くらいならばこちらへ寄ってこなくなるため問題はない。

 国境を越えたさきでも賞金を掛けられていた場合は、またどうにかしてほかの国へ渡るしかないだろう。小さな村であれば、冒険者が寄ることも少ないはずだ。もしもの場合はそういう村で外套を買って顔を隠せば、多少街に入ったところで気が付かれはしないだろう。


 枯れ葉や枯れ木を踏みしめながら森を歩いているが、魔物が現れないだけで前の世界となんら変わりなく見える。地面や木には虫がて辺りからは鳥が囀る声も聞こえ、どこか穏やかな雰囲気が漂っていて少し気を抜いてしまいそうになる。

 ふとステータスのことが頭をよぎる。確かスキルの中には気配察知があった筈だが、ガリルが言っていた通り俺はあの時ガリルの存在に全く気が付かなかった。気配察知というスキル名からしてゲームでいうところのパッシブスキルかと思っていたのだが、どうやらそうでもないらしい。しかし後ろから斬り掛かられたときには効果を発揮していた。それぞれの違いと言えば、パジー草を使うときは気を抜いていて盗賊を殺そうとしていたときは気を張っていた。おそらくこの違いだろう。

 ガリルは俺がスキルを使えていると言っていたが、それはやはり気を張っていたからであって、俺自身は使っているといった実感は持っていなかった。

 そうなると、気を張っているときだけスキルを使えるといったイメージを抱くが、ガリルの言い方を考えれば普段からスキルは使えると思ってもいいだろう。グリードが普段から気を張っていたとしたらその仮定は崩れるが、そんなことを言ってしまえば話は進まないため一旦その考えは置いておこう。

 まずこの世界の人間はある程度意識せずスキルを使っていると思っていいだろう。しかし魔法といったものは発動させるためのプロセスがあるため、発動するといった意思は絶対という訳ではないが必要だろう。


 今俺の持っているパッシブスキルと思われるものは五個あるが、ガリルとの戦闘ではそのうちの四つを使っていたはずだ。それは最初に言っていた気配察知に剣術、あとは格闘術に足捌き。普段の俺では絶対に出来ない動きをしていたのだ、しっかり発動していたとみて間違いはない。

 このスキルの発動は完全に無意識であり、発動させるといった意思も持っていなかった。そうなるとやはり意識せずともスキルは使えるとみていいかもしれない。

 しかし今の意識していない状態で気配察知が発動しているかと問われても、是と答えるのは難しい。

 鳥の囀りは聞こえるが、正確な位置まではわからない。となれば、気配察知のスキルを使うという意思を持ってみるとどうだろう。

 ……何かが変わったという感じはしない。何故だろうか、発動するという意思さえ持てばスキルは発動すると思ったのだが、どうやらそれは間違いだったようだ。

「あぁー……よくわからん」

 一先ずこの話しは置いておくことにしよう。俺一人の頭ではすぐに解決するとも思えない。


 そんな風に思考を巡らせていると、日が落ちてきていたようで葉の陰から見える空が橙色に染まっているのが見えた。辺りは依然として木々の感覚は広いため、適当なところで野営の準備をしよう。

 丁度よく座れそうな倒木があるところで野営の準備に入る。革袋の中から取り出した天幕を組み立て、結界石を天幕の近くへ置いておく。

 この結界石は使い捨てではなく、魔力を込めれば基本的に何度も使えるものだ。こういう野営をする場合にはとても重宝するもので、盗賊自体のグリードも使っている場面を見た。これでこの付近に魔物が寄ってくることはないだろうと石のかまどを作り、火を起こす魔道具で火を起こし枯れ枝をくべ、火の勢いを強める。

 野営の準備が終わった頃には辺りがすでに暗くなっており、昼ごろには奥まで見えた森も今ではこのかまどの火がなければ暗闇で数歩先までしか見えない。

 革袋には洞窟内にあった食料をある程度持ってきているため適当に取り出してかまどの火で焼き頬張る。正直この革袋がなければこの野営ですらまともに行えなかったと思うと、本当にあってよかった。

 食事を終えた俺はかまどの火を消し天幕の中へと入り眠る。


 翌日目を覚ました俺は食事をとり、すぐに出発するため天幕をしまう。

 仕舞い終わった俺は一息つき朝露が木漏れ日を反射しているようすを見る。この世界に来てからここまで心休まる時間がなかったためか、この光景を見ているだけで数日で荒んだ心が洗われるようだ。前の世界ではこういう光景を見るような機会はなく、いつまでも見ていたくなる気持ちに後ろ髪を引かれるが、流石にそういう訳にもいかず最後に結界石を革袋の中にいれ出発する。

 しかし魔物が現れるような気配が未だにない。木の葉の陰から差し込む光を見るとどうにも魔物が現れるといった想像が出来ないのだが、確かに魔物は存在するはずで、ただ運がいいだけなのだろう。

 日も真上に昇ってきたころ、不意に左耳が枝を踏み折るような音を拾う。多少気が抜けていたのか反応するのに数瞬の間があったが、飛び退り剣を抜き構えるまでに攻撃されることがなかったのは僥倖だろう。

 剣の先に見えるのは緑色の肌をした小人。顔は醜悪で腰ミノ一枚に棍棒を手に持つ、最近の小説などではよく見るゴブリンが四匹こちらを威嚇するように鳴きながらこちらを見ていた。

 距離自体はそこまで近い訳ではないが、この距離まで近づかれて気が付かなかったとなるとやはりスキルは発動していないみたいだ。しかしゴブリン程度であればスキルがなくとも遅れをとることはない。目の前にいるゴブリンたちは横に広がり、少しずつ俺を囲うように近づいてくる。こちらの様子を伺っているのだろうか。たった一人相手にそこまで慎重になるのかとも思ったが、今の俺は確かに強そうに見える。だが、こいつらにそこまでの頭があるとは思えない。

 とはいえ、一気にせめて来ないのであればこちらから攻めるまで。まずは左端のゴブリン目掛け踏み込む。本当に様子を見ていたのかと疑いたくなるほどにゴブリンたちの反応は遅く、俺が左端のゴブリンに剣を振る時を同じくして動き始める。しかしそれは遅く、目の前のゴブリンが棍棒を振る前に俺の剣がゴブリンの首をへし折り、ゴブリンが倒れるのを見ずに倒した反動で体を回し、後ろに迫っていたゴブリンの頭を砕く。

 残った二匹は目の前から同時に攻めてきている。右側のゴブリンが棍棒を振ってくるタイミングに合わせ右側に避け、ゴブリンの側頭部に向けて右腕を思い切り振りぬく。殴られたゴブリンは左側にいたゴブリンにぶつかり、共にバランスを崩したところを剣で突き刺す。


 この程度の敵にここまでしっかりと立ちまわる必要もなかった気はするが、魔物との戦闘は初で尚且つスキルが発動しているかわからない状態で、どこまで戦えるかの指標にもなったので無駄というわけでもなかった。

 一応周りを見渡しほかに敵がいないことを確認して剣を鞘に納める。こういった魔物の体内には魔核と呼ばれるものがあり、これを魔物の体内から取り出すと魔核以外の部分は霧となって消え去ってしまう。それは剣に付いた血や返り血も例外ではないが、魔力を込めたナイフなどで切った部位は魔核を取り出したあとでも残り続ける。

 とはいえこのゴブリンに使える素材はないため、心臓付近にある魔核を取り出し革袋にしまう。取り出した途端に肌に付いた血が霧に変わるが、正直気持ちのいいものではない。

 この魔核を加工したものが俗に言う魔石であるが、この魔核の状態でも魔石と同じく魔力を蓄える効果がある。しかし魔核を加工すれば、蓄えた魔力で様々な効果を付与できる。それはこの結界石のようなものに攻撃魔法を発動させるものなど、幅広く存在している。

 魔物の種類によって魔核の純度や大きさ、属性の違いがありそれぞれの属性で用途は変わる。火を起こす魔道具や風を起こす魔道具にも、この属性付きの魔石が使われていて、こういったものは魔力の消費量が少ないため小さな魔石でも長い期間使える。魔力を込めれば何度も使えると思われる魔石だが、実はそうもいかず魔石の純度により込められる回数や量もある程度決まってしまう。こういった簡易的な魔道具に使える魔石は純度は最低基準のもののため、基本は使い捨てだ。


 そのあとは何度かゴブリンとの戦闘があったが、それ以外の魔物に出会うことはなかった。記憶の中ではゴブリン以外の魔物とも戦っていたようだが、やはりゴブリンの数はほかの魔物に比べ多いようだ。

 そろそろ暗くなってきた、今日はこの辺りで野営することにしよう。今日は何度か戦闘があったが進んだ距離で言えば今日のが長かっただろう。早朝から歩いたのが大きいか。この体は丸一日歩き続け、尚且つその間に戦闘を挟んでも疲労をそこまで感じないのがいい。まぁそのアドバンテージを潰すほどに賞金首というものは俺の首を閉めているのだろうが。

 本当になぜ賞金首になってしまったのかと、元の体の持ち主であるグリードに恨み言を並べながら天幕やかまどの準備をして結界石を置く。今日の夕飯も変わらず革袋から取り出し火にかける。

 食事も早々に食べ終わり、結局今日もスキルの使い方はわからず終いだったなと思いつつ火を消す。

 あと一日二日歩けばそろそろ国境を越える。正直常に追われ続ける生活なんて続けたくはない。願わくばこの先の国で賞金首ではないことを祈りながら寝よう。

この話からあまり小説内の補足は行わないようにしていこうかな、と思いました。一話毎に補足されたとしても、流石に後書きを読むのが面倒くさいと思いまして。疑問に思った点は伏線であったりする可能性もありますので、疑問に思った部分は読者様方が各自脳内補完して頂けると幸いです。


ちなみに今回は無理やり尺を伸ばしました。はい。それでも4,500文字ですごめんなさい。


もしも気になることがあれば、答えられる事であれば答えることも可能ですので、お気軽にどうぞ。

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