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蒼太はそんな壮一に対し、舌打ちをした。
そんな蒼太の態度に気付かないまま、壮一は外から
自分のことを見詰めていた少女がいたところに向かったが
すでに少女の姿は何処にもなかった。
『気のせいか?……』
壮一が呆然とその場に立ち尽くしていると
「せ、先輩!……」
宮島の部屋から蒼太が叫んだ。
少女のことが気になっていたがとりあえず、蒼太のもとに
戻ることにした。
壮一が蒼太がいる、宮島の部屋に戻ると、部屋の中で
倒れているマンションの管理人を発見した。
倒れている管理人の手にはナイフがしっかりと
握り締められていて、部屋の中にいる蒼太の手にも拳銃が
握り締められていて、放心状態で座り込んでいた。
何が起こったのかわからない壮一は驚いた顔で
「何があった?……」
蒼太に訊いた。
だが、放心状態の蒼太は何も答えず、ただ首を横に
振るだけだった。
壮一は今の現状を【捜査】本部に報告した。
すると、すぐに宮島の部屋に向井が率いる捜査員らが
やって来た。
向井は怖い顔で
「お前が付いていながら、何をやっているんだ!」
壮一のことを睨み付け、怒鳴った。
壮一には返す言葉がなかった。
向井は苛立ちながら、
「もう良い!……」
というと壮一と蒼太を捜査から外した。
だが、壮一には自分のことをじっと見ていた
少女のことが気になっていた。
蒼太のことにより、監督責任を問われた壮一は
謹慎処分をくらった。
だが、壮一は少女のことが気になり、自宅から抜け出し、
向井などに内緒で単独で捜査を始めた。
しかし、何処を探していいのか、壮一には
まるでわからなかった。
壮一が街を宛てもなく、彷徨っていると……
「きゃあぁぁ…… 助けてぇ!」
と叫びながら、一人の少女が壮一の前に突然、現れた。
その女の子・茜は確かに宮島の部屋の前で壮一に
何かを訴えかけるように壮一のことを見ていた少女だった。
そんな茜の後ろから茜を追いかけるように
全身、黒ずくめの怪しげな男らが現れた。
壮一のことを見付けた茜は急いで壮一の後ろに隠れると
「怪しい人達に追われているの…… 助けてぇ!……」
壮一にしっかりとしがみ付きながら、躯【からだ】を
振るわせた。
壮一の後ろに隠れた茜を見た全身黒ずくめの男達は
悔しそうに舌打ちをすると逃げるようにその場から
立ち去った。
完全に黒ずくめの男達がいなくなったのを確認した
壮一は自分の後ろでまだ震えている茜に
「もう大丈夫!…… 一体、何があったのだ?
何でアイツラに追われていたのだ?……」
と訊いたが茜は首を横に振ったまま、
何も答えようとしなかった。
『困ったな……』
壮一が頭を掻きながら、
「君の名前は?……」
茜に訊いたが茜は同じように首を横に振るだけだった。
「じゃあ…… 住んでいる所は?……」
茜に訊いたが
「ご、ごめんなさい。 何もわからないの……
何故、私があの人達に追われていたのか……
自分の名前も住んでいる所も……」
茜は涙を流し、その場に崩れ落ちた。
困り果てた壮一はとりあえず、今回の事件捜査の
指揮をしている向井に報告をしようと服の内ポケットから
携帯電話を取り出し、向井に電話をかけようとしたが
壮一はすぐに今、自分が謹慎中の身分であることに気付き、
慌てて、携帯電話の電源を切った。
「困ったなぁ……」
困った壮一は泣き崩れている茜のことを見詰めながら、
「しょうがない。 アイツに頼むか?……」
と呟くと携帯電話から何処かに電話をかけた。




