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蒼太の横で怯えて、震えている綾野のことを海那は見詰めながら、
「今更、何を言っているのよ!…… ここでやめたら、
全てが水の泡よ!…… さあ、やるのよ!」
蒼太を嗾【けしか】けた。
「そうだなぁ……」
一旦は綾野のことを殺【あや】めることを決めたが
「やっぱり、出来ない!……」
土壇場で蒼太は綾野を殺すのをやめた。
「何をやっているのよ!…… こうやるのよ!」
不甲斐ない蒼太に代わり、海那は落ちていた縄を拾うと
躊躇なく、一思いに綾野のことを絞め殺した。
『とても快感だったわ…… 私が力を入れていくうちに
あの女が苦しそうな顔をし、息を引き取っていくのが……』
海那は声を震わせ、綾野を殺したことを嬉しそうに
壮一に話した。
『お前は狂っている!……』
壮一は遠退きそうな意識の中でそう思った。
息を引き取り、倒れ込んでいる綾野を見ながら、
「なんてことを……」
蒼太がそう呟くと
「良いのよ!これで…… この子【綾野】を処分しておいてね!」
海那は冷たく、蒼太に綾野の後始末を任せると
蒼太の前から立ち去った。
だが、心配だった。
『本当に蒼太が私の言うことに従うかが……
しかし、翌日のテレビのニュースで綾野の遺体が
見付かっているのを観て、私は笑いが止まらなかったわ……』
「それからだよ! 蒼太が決心を決め、私の計画に
忠実に従ったわ……」
壮一は怒りがこみ上げながら、
「お前はどうかしている!……」
海那に言った。
「ああぁ…… そうさ……」
海那は再び、壮一のすぐ横を拳銃に撃った。
「全ては順調だった。 お前さえ、あの少女【茜】を
私のもとに連れて来なかったら……」
海那は怒りを爆発させ、辺り構わず、拳銃を乱射した。
『こいつだけは俺が何とかしないと……』
壮一は海那を仕留めるべく、持っている拳銃を握り締め、
機会を待った。
お前が帰った後、あの少女【茜】が突然、私の顔を見ながら、
「お姉ちゃん、誰?……」
私の内側にある人格を見透かしたように私に
そう話し掛けてきた。
茜に見詰められ、そう言われた私は背筋が凍りつきそうだった。
『このまま、この少女【茜】を生かしておくとまずいわ……』
私は一思いに茜のことを殺そうと
「良い子だね!…… お姉ちゃんと向こうで遊ぼうか?」
笑顔で茜に近付こうとしたが、
「お姉ちゃん、怖い!……」
茜は私の部屋から逃げるように飛び出していった。




