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「お前も同罪だ!……」
蒼太は藤堂に向けていた拳銃を壮一に向けた。
「やめるんだ!…… 蒼太くん!」
峰岸は今にも拳銃の引き金を引き、暴走しそうな
蒼太を制止しようとした。
峰岸の声に寸前のところで蒼太は引き金を引くのをやめた。
「お前達に何がわかるんだ! 俺の母親がこいつに捨てられ、
どんなに苦労し、俺を育てながら、死んでいったのか……」
蒼太は再び、藤堂に拳銃を向けた。
「やめるんだ!……」
峰岸は再び、蒼太を制止しようとしたが
「峰岸! 良いのだ!…… 蒼太。私を撃って、
全てを終わらせるんだ!」
藤堂はそう言い、蒼太を強く見詰めた。
「う、うるさい!……」
蒼太は拳銃を持っている手を震わせながら、
拳銃の引き金を引こうとしたその時、
「やめろ!……」
藤堂と蒼太の間に壮一が立ちはだかった。
パーン……
乾いた銃声が建物内に響きわたった。
次の瞬間、壮一の右のわき腹から血が吹き出し、
着ていた白いシャツを真っ赤に染め、その場に壮一は崩れ落ちた。
「お、落ち着け!…… 蒼太……」
壮一は蒼太にそう言うと力尽き、その場に倒れ込んだ。
『大変な事をした……』
蒼太は拳銃を持ったまま、躯を震わせながら、
その場に力が抜けたように座り込んだ。
その時、壮一の居場所を突き止めた向井が部下の刑事らと共に
「鳥瀬! 大丈夫か!……」
と叫びながら、壮一らがいる、今にも崩れ落ちそうな
建物内へと入ってきた。
『もうダメだ!……』
向井らの姿を見た蒼太は逃げ切れないと諦め、
震える手で持っていた拳銃をこめかみに当てると
一思いに引き金を引いた。
「ま、待つんだ!……」
向井の声も間に合わず、
パーン……
乾ききった銃声が建物内へと響き渡り、蒼太のこめかみからは
血が吹き出し、蒼太はその場に崩れ落ち、倒れた。
次に壮一が気が付くと壮一は病院の病室のベットに
寝かされていた。
『俺は生きているのか?……』
壮一がまだ意識がはっきりしない、ぼんやりした状態のまま、
病室の天井を見詰めていると
「運の良い奴だ!……」
突然、壮一の顔の前に一番、会いたくない向井の顔が現れた。
向井はベットに寝かされている壮一の顔を見ながら、
「辛うじて、急所は外れているそうだ……
だが、しばらくは入院だそうだ!……」
冷たく言い放つと
「お、お兄ちゃん!……」
壮一が働いている警察署の一室から聡子と共に発見され、
助け出された壮一の妹の海那が壮一がいる病室内へと入ってきて、
ベットに寝かされている壮一に抱き付いた。
傷口に触れたのか、壮一は
「海那。 痛いよ!……」
ベットの上で痛がった。
「ご、ごめん……」
痛がっている壮一を見て、海那は慌てて、壮一から離れた。
そんな兄妹の光景を向井は横目で見ながら、少し微笑むと
「これは貸しなぁ!……」
何だか、少し嬉しそうに壮一の病室を後にした。
壮一は向井を見送った後、妹の海那に今回の事件の一端が
自分らの母親にあったことを告げようとしたが海那の屈託のない
笑顔を見ているとどうしてもそのことを話すことができなかった。
数ヵ月後……
怪我が癒え、退院した壮一は現場に復帰した。
だが、すでに壮一の勤めていた警察署には
壮一の居場所はなかった。




