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そんな私らの話を聴いていた女性が一人、いた。
『それは当時、同じ大学院で私らと遺伝子研究を
行っていた鳥瀬実夏くんだった……』
峰岸教授が言ったことに壮一は驚いた。
峰岸教授が言った、女性の名前は壮一の母親の名前だった。
『うそだろう!……』
「そんなのうそだ!……」
驚き、激しく取り乱す蒼太と驚いたまま、固まっている壮一を
後目に峰岸教授は話を続けた。
「当然、実夏くんは私らの話を聞いて、驚いていて……
始めはそのことを問題にしようとしていた。」
「頼む! 俺達に協力をしてくれ!……」
藤堂はダメもとで実夏に頭を下げ、頼み込んだ。
「イヤです! そんなこと……」
当然、始めは実夏は嫌がったがあまりにも真剣に頼み込む
藤堂に折れたのか、
「わかしました…… 協力します!……
ですが、私は無理です!…… その代わり、
協力をしてくれる人に心当たりがありますから……」
実夏は私らにそう言った。
数日後…… 実夏くんは私らの前にみすぼらしい
女性・京香を連れて来た。
あまりにもみすぼらしい京香に私と藤堂は驚いた。
京香は少し怯え、峰岸と藤堂のことを見ながら、
「ほ、本当にお金をくれるの?……」
実夏に訊いた。
実夏は一瞬、藤堂の顔を見ると
「ええぇ…… それなりのお礼はするわ……」
京香にそう言った。
実夏は峰岸から藤堂が良い所のお金持ちのお坊ちゃんと
聞いていた。
そのことを察した藤堂は
「ああぁ…… お礼はするよ!……」
実夏の後に続いて、京香にそう言った。
それを聞いた京香は顔を強張らせたまま、
「わ、わかりました…… 貴方達に協力をします!」
と頷いた。
その後、私はまだ何も聞かされていない京香に
これから協力してもらうことを説明した。
こんな馬鹿げた話を聞いて、みすぼらしいとはいえ、
まだ将来がある若い女性が
「はい! わかりました!」
と承諾してくれるとは思えなかった。
不安になった峰岸は
「やめるかい?……」
と京香に訊くと少し俯き、考え込んだ京香は顔を上げると
「わかりました! 協力をします! その代わり……」
「ああぁ…… わかっている! お礼は弾むよ!」
峰岸がそう言うと京香は顔を曇らせたまま、頷いた。
京香の承諾を得た峰岸はすぐに亡くなり、まだ火葬の前の
妹・加奈の卵巣から卵子を極秘に取り出した。
「後戻りはできないぞ!……」
峰岸は最終確認のために藤堂にそう言うと藤堂は強く頷いた。
覚悟を決めた峰岸は藤堂の精巣から精子を採取し、
妹の加奈の卵子に受精させた。
峰岸らが考えていた以上に体外受精は難しく、
中々、うまくいかなかった。
「また失敗か!……」
落ち込む峰岸と藤堂に
「次、がんばりましょう!……」
京香は優しく微笑み、峰岸らを励ました。
一番、辛かったのは京香なのに……
「気晴らしに美味しい物でもみんなで食べに
行こうか?……」
藤堂は京香らを食事に誘った。
「悪いなぁ…… 二人で行ってくれ!
俺はもう少し、頑張ってみるよ!」
峰岸はせっかくの藤堂の食事の誘いを断った。
「じゃあ。私も……」
実夏も断ったのでしょうがなく、藤堂は京香と二人で
食事に行った。
はじめはみすぼらしかった京香だったが何度か、藤堂と
食事やデートらしきことを重ねていくうちに京香は段々と
綺麗になっていった。
そんな京香に藤堂も徐々に惹かれていった。
そんな時だった間違いが起こったのは……




