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幻の戦闘機『陣風』誕生!!

作者: 筑紫

 山口多聞氏の「戦闘機創作大会2013夏」の参加作品です。

 幻となった戦闘機「陣風」の物語(?)です。

 一部を除いて固有名詞を省略しています。後はご想像にお任せします。

 作者は文才がないので変な文章と誤字等あると思いますので大目に見てください。(指摘を頂ければ暇を見て直したいと思います。)

 山口氏の規約に触れてましたので一部修正いたしました。(2013.08.30)

  

川西航空機 研究部室


 夕日が山の端にさしかかる頃、明かりもつけず薄暗い会議室の真ん中にある長方形のテーブルの周りに4人の男が立っており、全員浮かない表情にしていた。


「計画中止か…」

 責任者らしき者が椅子に腰を下ろし、ガックリとうなされる。


「主任…」

 部下達は主任の安否を気を遣う。


「すまないが、一人にしてくれないか。」

 部下達は一時戸惑いお互い表情を見るが主任の心理を察したのか何も言わず退室する。残った主任は机に両肘をついて手を組み、その上に額を乗せて思考の渦に陥るかように瞑目する。



 十八試甲戦闘機「陣風」


 日本海軍の計画された川西航空機の試作戦闘機であり、モックアップまで完成を漕ぎ着けたが、戦局の悪化により試作機種整理で「陣風」は計画中止、同時開発された紫電改は既に完成してるため高々度戦闘機として開発を進めることに決定した。しかし、主任は表情はすぐれなかった。


(我が社の威信をかけて設計したというのに計画中止とは…。)


 計画中止に決まった以上、覆すのは困難。私の力ではどうにもならない。なんとか陣風を完成したい。何か方法はないかと思考するが何も思い浮かばなかった。



「ふっふっふ…、お困りのようですね。」

 突然に正体不明の黒ずくめの男が主任の目の前に現れた。驚いた主任は椅子から飛び跳ねるように立ち上がり後へ退いた。


「だ、誰だ、キミは。一体どこから入ってきた。」


「落ち着きたまえ。私はそうだな、『会長』と呼んで頂こう。君を救済に来たのだよ。」


「会長?ふざけてるのか、何者か知らんがここから出て行きたまえ。」

 誰か呼ぼうと口を開くと、会長と呼ぶ謎の人物は右手を挙げて制する。


「まあまあ、私の話を聞いてから遅くはないだろう。陣風を完成させたくはないかね。」


「何っ。」

 主任は驚愕した。陣風を完成させる?何を言ってるんだ。


「どうかね、やる気があるなら我々が援助しよう。」


「なっ、ほ、本当か。」

 援助と聞いて主任は飛び付いた。陣風に開発できるなら藁をもつかみたい気分だった。しかし、本当に援助してくれるのかと、疑問をぶっかける。


「本当だとも。我々の手にかかれば容易いことだ。そうだな期間は一ヶ月あれば完成できる。」

 右人差し指を差し出す。


「なっ、まさか、こんな短期間で出来る訳が…」


「できるとも。」


「……」

 会長がキッパリと言い切られ、反論ができず口つぐむ。


「受けてくれるなら、機材や金属素材等を無償で提供しよう。発動機はどうだな、改良したハ43-21はどうかね。過給器付きで出力は二五〇〇馬力、高々度で七〇〇キロ位は出せる。50基位は用意しよう。」


「!……」

 主任は息を詰まった。陣風の発動機は誉エンジン(ハ45)に搭載することになってたが、会長はこれを上回る高出力エンジンを提供するという。しかも過給器付、気にならない訳がない。


「ほ、本当か、それなら……い、いや、この発動機を紫電改に搭載すれば…」

 一瞬よぎったのか思い留まり、開発中の紫電改を回そうと考えていたが、


「いや、それは後回ししてもらおう。我々はどうしてもこのエンジンを陣風に搭載して欲しいのだ。」


「う…な、なぜだ。」


「理由は君がわかってるはず。もし、紫電改を載せようとするなら援助は打ちきりだ。」


「っ……」

 援助打ち切ると言われたら黙るしかない。しかし、主任はわかっていた。設計の元に縮小した模型で風洞実験などのテストを行い、結果は紫電改より優れているのは実証済みだ。

しかし実物になるとどんな不具合が出るのかわからないのでいくつかテストを繰り返しながら改良や改修しなければ使い物にならない。


「な、し、しかし…海軍がなんと言うか。」

 計画中止が決まった以上、主任は強く口出せないでいる。


「心配はいらん、我々に任せたまえ。完成した暁には海軍に陣風の性能を見せつければ間違いなく目の色を変えて飛び付く。」


「……」

 主任は迷った。確かに陣風を完成すれば、紫電改より高性能であると証明できれば、海軍の考え方を変えるのは絶好のチャンスだろう。しかし失敗すれば……。考えたくない状況をできてしまう。


 長い沈黙が続く。ふぅと溜息を吐き決意したかように会長に睨みつける。


「本当にできるんだな。」


「二言はない。完成まで楽しみにしてたまえ。」


 すっぱりと言い切った。本当にふてぶてしい人物だ。主任はふっと笑い右手を差し出す。


「わかった、協力しよう。私も参加させてくれ。いや、部下達も参加させて欲しい。」


「いいだろう、歓迎する。」

 会長はそれを応え固く握り合った。



 翌日、製作所でどこから現れたのかハ43エンジンの50基や製作や量産に必要な工作機械や複数の機材などをいつの間にか運び込まれていた。驚いたことに過給器も製作できる工作機械がある。(現場にあった機材は全て廃棄処分されていた。)

 状況を掴めていないスタッフや作業員達は呆然と立ち尽くし、何やら分からず混乱していた。我帰ったスタッフ達は主任の元に説明を求めようとして殺到するが、返答を窮した主任は苦笑いするしかなかった。


 ちょっと波乱があったが、会長の協力や指導の元に新しい工作機械を使いこなしていった。使い慣れると前の機械工作より使いやすく作業が(はかど)るとわかり作業員達は大好評だった。


 翌月、通常では考えられない程のスピードで、試作『陣風』一号機から三号機まで完成した。


「まさか、ここまで。」

 主任や関係者、作業員達は信じられなかった。短期間でここまで完成できるとは思ってみなかった。あとは飛行テストするだけだ。


 数ヶ月期間をかけて、何度かテスト飛行を繰り返し、不具合や不備を修理・調整して完成まで漕ぎ着けることができた。



十八式甲戦闘機「陣風」の諸元


全長:10.2m

全幅:12.5m

全高:4.15m

全備重量:3,480kg(非武装状態)

動力:ハ-43-21改 空冷複星18気筒エンジン(過給器付)

離昇出力:2,450HP

最大速度:705km/h(燃料7割、非武装状態)

実用上昇限度:14,500m

上昇時間:12.10分/10,000m

武装:機関銃二〇mm機銃×6丁(主翼)(三〇mm機銃4丁計画あり)


 計画書より上回る好成績で残した。そのことを知った主任や関係者達は


「信じられない。紫電改より上回る性能だ。」


「この性能を見せつければ海軍が喜んで飛び付くだろうな。」


「そうだそうだ、我を二流呼ばわりした奴らの鼻をあかしてやろうぜ」


 ワイワイと騒ぎ、主任や関係者達はお互いに手を取りあって喜び合った。


 後日、海軍の審査員は最初は渋い顔にしてたが、陣風の性能を見せつけると審査員の目の色を変えさせた。

 高々度で七〇〇キロ台を叩きだし、B29を対抗できる唯一の機体であることがわかり正式に量産化を決定した。(陣風を量産優先となったため、紫電改は生産中止となった。)




 一九四五年X月 ようやく各海軍飛行場に新鋭機「陣風」を配置することができた。あの名高い三四三海軍航空隊も全機揃えている。


 同月、B29とP51の三〇〇機を超える戦爆連合が本土に襲来した。


「出撃命令が出たぞ!好き勝手にやった奴らに目を見せつける日が来た。侵攻するやつらを叩き潰せ!!」

 隊員達はそれを聞いて目を輝き奮い立たせ、「応!!」と気合いの入った返事した。


「よし、行くぞ。侵攻するやつは一機たりも逃がすな!かかれ!!」

 隊員達は待合室を飛び出した。


 回せ、回せーと叫びながら、それぞれの愛機を飛び乗る。整備員達の合図でエプロンから滑走路へ誘導、二五〇〇馬力絞り出すエンジンを唸り上げながら二機ずつ発進する。


 たちまち機首をあげ、蒼穹の彼方へ飛び上がってゆく。


 発進した陣風隊は約三〇機、高度一〇〇〇〇メートルまで約一三分を大幅に切る。同じく駆け付けた零戦や雷電等もいたがここまでついてこられる機体はない。


 高度一二〇〇〇メートル達したところ、編隊を組んで各機それぞれ機銃のチェックを行う。陣風の武装は二〇ミリ機銃6丁が殆どであり、三〇ミリ機銃4丁という機体も存在する。この機体を乗る者は隊長機や熟練者(ベテラン)のみしか許されていない。


 試射を済み、後は敵機を侵入するのを待つだけだ。

 しばらくすると飛行機雲を引くB29隊が見えた。目視できたのはおよそ五〇機。護衛機はいない。残りはどっかに分離して行ったであろう。


「見えた、B公だ。行くぞっ!!」


 隊長機が機体を傾けて、急降下に移る。僚機や他の隊の機も続く。


 敵機は高度一〇〇〇〇メートルを維持していた。高射砲の炸裂ははるか下でありここまで上がってくる日本機はないと侮っているのか上方の警戒はなく油断しきっている。


 1機を標的を捉えた隊長機は射点を占め、引き金を絞る。

「食らいやがれ!B公!」

 主翼に備えている五式三十ミリ固定機銃4丁が火を噴いた。発射時にの反動を受けて機体は押し戻される感覚。発射した三〇ミリ曳光弾は吸い込まれるように命中するのがわかる。

 隊長機はわずかに操縦棹を押してその斜め下に見える機影に機首を向ける。後方に確認するとB29は胴体が真っ二つ割れ爆発するのを見えた。

 他の標的を探すと、殆どのB29は被弾しており黒煙が激しく吹き出していた。生き残ったB29は統制が崩れたのかパニックに陥り、散り散りになって遁走していた。しかし、陣風隊は見逃すわけも無く、七〇〇キロ近い速度を誇る陣風隊があっという間に追いつき追撃した。

 陣風隊と遭遇したB29隊は不運だった。もし、別グループの護衛機がいれば数多くは助かっていただろう。


 陣風の活躍によって四〇機近いB29を殲滅した。(生き残ったB29の大半は再出撃不可能なダメージを負った。)味方機は損害無し。


 陣風の華々しい活躍で戦果を揚げて凱旋した。





__________________



2XXX年 NEO日本 NEO東京

 ○×△研究所 会長室


 陣風の活躍によって奮戦したが、アメリカの物量の前に苦戦を強いられ、補給もままならず消耗していった。

 一九四五年八月上旬、広島と長崎に原爆を投下。

 同年十五日、日本はポツダム宣言を受諾し、戦争に無条件降伏した。


「……か。まあ、これで陣風も歴史のひとつに刻んだから良しとしよう。」

 歴史書を閉じ、ふかふかの椅子に座ってブランデーグラスを揺らす。もちろん毛長種の猫が一緒に座って会長は満足げだった。葉巻?身体に悪いので吸わない。


「会長、やっぱり陣風が登場しても戦況は変わりませんでしたね。」

 白衣を着込んでいる男が立っている。面倒なので『助手』と名付けよう。ん?何やら不穏な気配したが気にしないでおこう。


「仕方があるまい。資源の乏しい日本がアメリカに勝つ事は到底無理なのだからな。」

 予想付いてたのか首を振るだけでブランデーグラスを見つめる。


「そうですね。原爆を2発も落とされたらおしまいですね。いくら陣風が活躍してもアメリカの物量の前では防げないかぁ。おまけに我々が提供した工作機械が空襲で破壊されると、もうお手上げ。」

 助手も落胆した様子もなく口をへの字に曲げ、両手を上げて降参ポーズを取る。本音は多少の変化を期待してたが歴史は変わらず残念がった。


「どうせなら大量生産できる工作機械や素材などを持ち込んで提供すればよかったんじゃないですか。なぜ現地で調達する必要があったんです?」


 川西に提供した工作機械は未来から持ち込んだものでなく、極秘で同盟のドイツと敵国のアメリカから購入して改良して提供したものだった。今まで日本が使用してた工作機械は戦前アメリカから輸入したもので中古品で品質の悪いものが多かった。アメリカはわざと中古品と粗悪品を日本に売ったとも言われている。しかし、日本はそれを疑問と思わずこのままに使用していた。呆れるほどに。

 未来の工作機械や大量の素材など提供すれば戦況が大きく変わってただろうと予想できた。しかし、助手の疑問は拭えない。


「馬鹿言っちゃいかんよ。日本の将来はどんな影響受けるかわからない。下手にすれば日本は大貧国になってるかも知れないのだよ。」


「ああ、そうか、バタフライ効果かぁ」

 助手は納得いった。確かに下手に介入すると未来の世界が大きく変わってしまう。それを避けなければならない。

 歴史では陣風は登場したが代わりに紫電改はほんの数十機しか生産されず、烈風は設計図だけで完成を見ることなく幻と化してしまった。これが歴史の修正力か。


「まあいいじゃないか。陣風を手入れたことで満足しよう。後もう一つのコレクションが欲しいな。」


「またですか、じゃあ次はどれにしましょうか。」

 会長の趣味は昔の大戦中の戦闘機を集めることだった。

 倉庫の中に大戦中に活躍した複葉機からジェット機まで、戦闘機や爆撃機などのコレクションを納められており、どれも飛行可能な状態に維持している。


「ふむ、前回は『震電』だったな、今度は『橘花』で行こうか。陸軍だと『火龍』か。」


「今度は初の国産ジェット機『橘花』ですか。いいですね、行きましょう。」

 助手は乗り気だった。


「そうか、よし、すぐ出発しよう。支度してくれたまえ。」

 椅子から立ち上がり、壁にかけてあった紳士服を着込む。


 助手は目の前にスクリーンが出現、何やらのパネルを操作している。すると天井の中央から左右へ拡がるようにスライドする。その上に銀色に輝く飛行物体が姿を現した。

 全長三〇メートル位の楕円で繋ぎ目が無くなめらかな流体で、まるでUFO未確認飛行物体と思わせるものだった。


「はい、準備はOKです。いつでも行けますよ。」


「うむ、よろしい。行こうじゃないかね。」

 飛行物体の真下へ移動する。突然、飛行物体の下部からビームのような光が2人(+猫)を包み込みスッと上昇して飛行物体の中に入り込む。


「目標は、一九四四年X月あたりでいいですかね。」

 操縦席に座った助手はコントロールパネルに設定する。


「いいだろう、始めたまえ。」

 会長はふかふかの椅子を座り、膝の上の毛長種の猫を撫でている。


「はい、行きますよ。カウントタウン……3、2、1、オン!」

 カウントを合わせてボタンを押した。すると飛行物体はゆらめきならがスッと消滅した。会長と助手の2人で一九四四年の日本にタイムトラベルしてゆく。


 その後、歴史にどのように変化していったのか、二人しか知らない。



         終わり。


  

いかがでしたでしょうか。楽しんで頂ければ幸いです。


陣風はモックアップ姿の写真と図面しか見たことがないので、もし完成していれば格好いい戦闘機だったろうと想像しています。

プラモデルも売ってた記憶があるんですが、存在してるんでしょうか?

あったらぜひ手入れて組み立ててみたいですね。


第二修正しました。(2014.03.26)

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