武勇伝2
この作品を読む前に、できれば「武勇伝(改)」を読んでください^^
序章 天神流
忍術━日本の古武術(忍術の中に武術が含まれ、古武術の中に流派によっては忍術が含まれている)で、その歴史は古く、その術は修験道の山伏によって、より高度なものに高められていった。彼らの呼び名は一般的には忍者、忍び、忍術使いとよばれているが、昔は乱破、透破、密偵、間諜間者、諜者、三つ物、隠密などと呼ばれていた。
また、聖徳太子は情報活動する者達を志能便と名づけた。
忍びが主に活躍したのは、鎌倉〜江戸時代だ。
また、あの魔王と呼ばれた天下人、織田信長が、一五八一年(天正9年)大軍を率いて伊賀に攻め込んだ。
「第二次天正伊賀の乱」である。
多くの伊賀者は惨殺された……
その生き残りで、後に天神斎と名乗る忍びが忍術を戦闘向けに編み出したのが天神流忍術である。
そのため逃げたり、身を隠したりする術は無い。
天神斎が何故天神流を編み出しかは不明である。
もしかしたら織田信長を殺すために編み出したのかもしれない。
だが、織田信長は、翌年の天正10年に、明智光秀の謀反により、本能寺で自害した。
そして、時代は流れ……
21世紀となり18代目を神威龍一が継いで、19代目には大空達也が継いだ。
そして数十年後の21世紀半ば……
20代目をある男が受け継いだ。
第1章 鉄也と恵子
エンジェル学園……
華奢で女子のような顔をした男子生徒が5人の生徒にいじめられていた。
いじめられている少年の名は初見鉄也(17歳)。
「こら!あんたたち、また鉄也をいじめている」
そう言ってきたのは山南恵子(17歳)という女生徒だ。
彼女は新戦会空手の門下生で、初段の腕前だ。
新戦会空手……
名古屋に本部があり、大阪や東京に支部がある実戦空手。
ほとんどの幹部達は年で引退しているが、かつて新戦会には館長の後藤勇や、四天王で師範の土方歳夫や同じく四天王で指導員の永倉新一や原田光助、そして龍一たちと共に凍矢とその影の者たちを倒した沖田一。
彼は後に後藤家に婿養子となり館長の娘で、一と同じく凍矢たちと戦った舞と結婚し、誠という子供を授かった。
この他にも多くの強者がいる。
彼女の一声で5人は逃げていった。
「恵子ちゃん、ありがとう」
「まったく。アンタも男ならやり返しなさいよ」
「だって、僕弱いもん」
「ハア……」
と、恵子はため息をついた。
「まあ、アンタは優しくて真面目なのが取り柄だからね。だからこれからも、私がアンタを守ってあげるよ」
その言葉に、鉄也の顔が赤くなった。
恵子は館長や兄弟弟子以外にも尊敬する格闘家がいる。
天神流18代目神威龍一と19代目大空達也だ。
また、格闘家ではないが、龍一の師匠でもあり妻でもある神威(旧姓月形)瑠奈も尊敬している。
だが瑠奈は40代後半で謎の死を遂げた。
彼女は瑠奈はもちろん、他の2人にも会ったことは無く、館長や幹部達から話を聞いたり、TVでの活躍を見たことがあるだけだ。
第2章 芹沢錦
下校時間
恵子と鉄也が帰宅途中、同じ学校の女子生徒二人が5人の不良に絡まれていた。
「鉄也、あれ、冬美と亜樹じゃない」
「本当だ」
正義感の強い恵子はすぐに助けに入った。
5人は黒山高校という不良学校の生徒達だ。
恵子はまず右正拳突きで一人を倒し、もう一人を左上段蹴りで倒した。
だが、その隙に一人が彼女の背後を取った。
だが、彼女の裏拳が決まった。
残りはあと二人だ。
一人は震えていたが、もう一人の男は笑っていた。
そして恵子は笑っている男の顔を見てこう言った。
「お前は芹沢錦」
「久しぶりだな。恵子」
「せ、芹沢さん、知り合いですか?」
「かつての同門だ」
「同門ですって!お前は破門された身のくせに」
どうやら芹沢も新戦会の門下生だったが、悪さをしすぎて破門になったようだ。
「冬美たちに何故手を出した?」
「そいつらが俺の肩に当たったから、慰謝料1万を請求したら拒否しやがるから、仕方なく手荒な真似をしただけだ」
「なにが慰謝料よ!許せない」
そう言って右正拳突きを放つが交わされ、逆に右下段蹴りを喰らい、さらに右上段蹴りまで喰らってしまった。
破門されたとはいえ、強さは本物のようだ。
「恵子ちゃん!」
鉄也が彼女に近寄った。
「鉄也、私はいいから、冬美たちを連れて逃げて」
「そ、そんな。君を置いて逃げるなんてできないよ」
「アイツは私より強いのよ」
「な、なら僕も戦うよ」
「馬鹿!逃げな」
「おい、逃げる相談か?だが誰も逃がさね~ぜ」
そう言って、恵子の鳩尾に前蹴りを放った。
「ぐは~」
「恵子さ~ん!くそ!今度は僕が相手だ」
「や、やめろ……鉄也……殺されるぞ」
「いつも僕は恵子ちゃんに守られていた。今度は僕が守る」
「鉄也」
「おもしれ~。じゃあ、遠慮なく行くぜ」
芹沢の容赦ない攻撃が始まった。
鉄也は手も足も出ない。
「(クソ!僕は何でこんなに弱いんだ)」
「おら、どうした小僧?」
「つ、強い。今の僕じゃ勝てない」
鉄也はすでにふらふら状態だったが、倒れることはなかった。
「芹沢、もうやめて。お金なら私が払うから」
「金よりも、お前がほしいな」
「えっ?」
「俺の女になるなら小僧もあの女共も助けてやる」
「……それは本当か?」
「ああ」
「分かった。お前の女になるよ」
「恵子さん」
芹沢は子分と恵子を連れて去っていった。
「恵子さ~ん!!!」
第3章 修羅へ覚醒
恵子が連れ去られてから1時間が過ぎた。
鉄也は近くの公園のベンチに座っていた。
「情けない。何で僕は弱いんだ。今の僕じゃ勝てない」
鉄也の目付きが鋭くなり、こう呟いた。
「師匠。今の僕じゃ勝てません。ですから今回だけは……」
そう呟き、歩き始めた。
恵子が連れ去られてから3時間の時が過ぎた。
その間に、黒山高校の不良たちが十数人何者かにやられていた。
「ぐは~!わ、分かった。芹沢さんの居場所を教える。だから助けてくれ」
とある倉庫
ここに芹沢と恵子がいた。
「近寄るな」
「おい恵子、お前は俺の女になったんだろう」
「クッ……」
芹沢は恵子に近づき舌で彼女の顔を舐め、キスをして服を脱がそうとした。
その時、鉄也のような華奢な体をした少年が現れた。
「山田!誰も入るなと言っただろう」
ニコニコしながら山田はこう言った。
「うちの生徒が何者かに十人以上倒されたそうですよ」
「なに?どこの者だ?相手は何人だ?」
「一人だそうですよ」
「一人だと!?」
「何でも僕みたいに、華奢な体をした男らしいです」
「チッ、クズ共目。役に立たないやつらばかりだ」
「(誰かが私を助けに?)」
「うちの生徒は悪さばかりしているから、天罰が下ったんでしょう」
「なにのんきなこと言ってやがる」
「まあ、一番の目的は芹沢さんらしいから……で、どうするんですか?」
「上等だ!俺がタイマンで決着を付けてやる。どこのどいつか知らんが俺に喧嘩を売ったことを後悔させてやる」
「ぐわ~!!」
「助けてくれ~」
「芹沢さん」
「こいつ、化け物だ」
倉庫の外から不良たちの叫び声が聞こえた。
「どうやら来たみたいですね」
「上等だ!」
「どんなヤツか楽しみですね」
男は倉庫の中へ入った。
現れたのは鋭い目付きをした鉄也だった。
「鉄也!」
「お前はさっきの」
「芹沢は俺を怒らせた。それがお前の敗因だ」
「鉄也?違ういつもの鉄也じゃない」
「ハッハッ……面白い冗談だ。俺に手も足も出なかったくせに」
「今は勝てる」
「鉄也!ハッタリなんか通用しない。だから逃げて」
「フン。どうせ仲間がいるんだろう?じゃなきゃ、うちのやつ等がやられるはずがない」
「芹沢さん、とんでもない奴に喧嘩を売ったんですね」
山田がニコニコとしながらそう言った。
「山田、アイツを知っているのか?」
「ええ、少しだけ」
「何者だ?」
「知らない方がいいですよ」
「チッ……小僧!てめ~の方こそ俺を怒らせたんだぜ!山田!恵子を逃がすなよ」
「はいはい」
ニコニコしながら山田は恵子の近くへ行った。
「大丈夫ですよ。僕は貴女には何もしませんから」
「……いつもの優しい鉄也じゃないけど、お願い勝って」
そして戦いが始まった。
先に攻撃を仕掛けたのは芹沢だ。
拳を強く握り、鉄也の顔面に直撃した。
だが、膝を着いたのは芹沢の方だった。
「えっ?何が起きたの?」
「芹沢さんのパンチを避けずに額で受けて、同時に芹沢さんの鳩尾へ前蹴りを放ったんですよ」
「ぐは~」
「立てよ。お前には生き地獄を味合わせてやる」
「こ、この餓鬼!」
芹沢は隠していたナイフで斬りかかった。
だが、鉄也は跳んで宙返りをし、片方の足でかかと落としをし、もう片方の足で蹴り飛ばした。
「あの技は確か大空達也が使っていた技だわ」
「天誅という技名ですよ」
「アンタも鉄也も何者なの?」
「すぐに分かりますよ」
「ば、馬鹿な。アイツは俺より弱いはず」
「言ったはずだ。今の俺なら勝てるとな」
「お前は何者?」
「大空達也の弟子だ」
「なに!?」
「嘘!鉄也が大空達也の弟子?」
「どうやら僕の番ですね」
相変わらずニコニコして、鉄也に近づいた。
「山田」
「芹沢さん。僕の本当の名は神威雷電です」
「神威だと!?」
「祖父は神威龍之介です」
第4章 天神流対神威流
神威龍之介……神威龍一の弟。
兄から天神流を学ぶが継承者にはなれず、代わりに龍之介や龍一の父、武蔵が天神流を破るために編み出した神威流総合武術の2代目を受け継いだ。
「僕は神威流の3代目です。父は僕が生まれてすぐ、19歳という若さで病死したため、じーちゃんから技を学んで僕が3代目となったんです」
「邪魔だ。雷電」
「久々の再会じゃないか。そう睨むなよ」
ニコニコしながらそう言って、右上段蹴りを放つが鉄也は紙一重で交わした。
「今の俺の敵は雷電じゃない」
「確かに。僕の敵は天神流の正当な継承者だからね。君は後継者になれなかったはず。天神流は継承者になれなかった者は、その後天神流を使う事を禁じられているはず。なのに君はさっき天誅を使った。祖父はちゃんと継承者になれなかった日から、天神流の業は使っていないと聞く」
「確かに俺は継承者になれなかった」
「20代目は確か達也さんの子供、大空光さんが受け継いだんだよね」
「ああ、2年前にな」
そう言って逆関節を決め、地面に叩き着けて、雷電の喉目掛けてかかと落としをしたが、雷電は交わした。
「今度は雷鳴かい」
「お前の名に相応しい業で終わらせようと思ったのに」
「二人とも凄い。これが大空達也の弟子と神威龍之介の孫の戦い」
今度は雷電が攻撃を仕掛けた。
右正拳突きを放つが受け止められた。
「これならどうだ」
そう言って鉄也はまた逆関節を決め、今度は頭から地面に叩きつけた。
天神流忍術落雷という技名だ。
雷電の頭から血が流れれ出てきた。
だがすぐに立ち上がった。
雷電の顔から笑みが消えた。
「怒りで天神流の掟も運命も関係ないという訳ですか」
雷電はそう言って、高く跳び一回転し、片方の足でかかと落とし。
だが鉄也は後ろへ下がって避けた。
「(体勢が崩れた今がチャンス)」
体勢の崩れた雷電に前蹴りを放とうとした。
だが、雷電は鉄也の左目を目掛けて口から含み針を吹いた。
「ちっ」
右手でガードをしたが、その隙に雷電は鳩尾へ前蹴りを放った。
「ぐは~……雷電の方こそ天神流を学んだわけじゃないのに、天神流の業を使うとは」
「天神流を倒すためには天神流の業を知らなければいけない。でもじーちゃんは教えれないから、僕のは独学なんで……さすがに天神流を学んだ者に天神流の技を決めるのは無理なようですね」
「そろそろ終わりにしてやる」
「(奥義龍神を使う気だな)」
「行くぞ雷電!」
「来い!」
だがその時「もうやめて!」と恵子が叫んだ。
「恵子……」
「どうやら熱くなりすぎたようですね」
「ああ、俺の敵は芹沢だからな」
そう言って芹沢に近寄った。
「た、頼む助けてくれ」
「ダメだ」
「そ、そんな」
「奥義龍神であの世に送ってやる」
「鉄也!ダメだよ」
「死ね!」
その言葉に芹沢は気を失った。
「フン……お前のような雑魚に奥義など使うかよ」
どうやら鉄也は最初から奥義を使う気はなかったようだ。
「芹沢さんの事は僕に任せて彼女のところに行ってあげな」
「ああ」
最終章 告白
「恵子ちゃん驚いたでしょう」
「ええ」
「10年前、僕は車に轢かれそうになったんですよ。で、助けていただいたのが、達也さん」
「そうなんだ」
「達也さんも子供の頃車に轢かれそうになったんだけど、南さんという方に助けられたんですって。でもその方はその時に亡くなったそうです」
「その話はよく雑誌のインタビューでコメントされているから知っているわ」
「そうですか」
「でも、鉄也が達也さんの弟子だったのには驚いたわ」
「助けてもらったあと、何度も頭を下げて、弟子にしてもらったんですが、2年前に達也さんのご子息、光さんと試合をして敗北してしまいました」
「それで天神流の業を禁じられたわけね」
「ええ、でも今日使っちゃいましたが……まあ、天神流が使えないと僕はやはり弱い男なんです」
「そんなことないよ。それに……それに私は強くて恐ろしい鉄也よりも弱くても優しい鉄也の方が好きだから!」
その言葉に鉄也の顔は赤くなった。
「じゃあ、これからも僕を守ってください」
「もちろんよ」
恵子は笑顔で答えた。
それから4年後、二人は結婚し、平和に暮らした。
鉄也もあれ以来天神流は使っていない。
だが、天神流は継承者達によって、22世紀末まで伝わるのであった。
1980年・・・瑠奈、武、凍矢誕生
1990年・・・神威龍一誕生
1995年・・・武と瑠奈の父良昭が凍矢との戦いで戦死
1997年頃・・・瑠奈が17代目となり、アルテミスと呼ばれるスイーパーとなる。
2000年・・・龍一が瑠奈の弟子となる
2007年・・・龍一が天神流の18代目継承者になる
2007年・・・修羅の者たちと凍矢と影の軍団との戦争
2008年・・・龍一と瑠奈が結婚
2009年・・・龍一と瑠奈の娘聖華が誕生
2017年頃・・・大空達也が19代目となる。この時二十歳でこの頃に結婚
2018年・・・達也が子供を授かり、龍之介も男子を授かる(龍之介はこの年に出来ちゃった結婚をした)
2028年・・・達也が二人目の子供を授かる。名は光
202?年・・・達也の最初の子供と瑠奈が死去
2036年頃・・・龍之介の子供が子を生む。名は雷電
2037年頃・・・龍之介の子供(雷電の父)が死去
2039年頃・・・鉄也が達也の弟子となる。
2051年・・・光が20代目となる。
2053年・・・雷電と鉄也が戦う