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ep.2:鎌持ち少女


 ここからどうするべきだ?

 このままでは何をされるか分かったものではない。

 しかし、この状況から助かるために必要なことを考えている間も男は着実に距離を詰めてくる。

 男の目は完全に正気ではなく、今にもこちらに飛び掛かってきそうだ。

 

 せっかく助かったと思ったのに、また死んでたまるかよ!

 どうにかこの状況を打破しないと!

 一か八か全力で逃げるか?

 いや、相手の実力が分からないうちは危険すぎる。

 それなら戦ってみるか?

 相手は剣を持ってるんだぞ!無理に決まってる。

 

 ……まずい。

 死の恐怖の緊張で思考がまとまらない。

 もう男は目の前にまで来てる。

 ここで終わりなのか?

 自分の正義が正しいのかも分からないのに?

 こんな未練残して死ぬのか?


「…………いやだ……死にたくない……まだ死ねない。」

「何をブツブツ喋ってんだ!!ま、まさか魔法か?おい!!下手な動きすんじゃねぇ!!」


 魔法?何を言ってるんだ?

 突然の意味不明の言葉を俺は気になってしまう。

 男の状態から精神異常者とも考えられるが、それにしては急な言葉すぎる。

 いや、いまはそんなことより……うん?何か聞こえる?

 俺は男の後ろの方から何かが聞こえた気がして、耳を傾ける。


 ……コツン……コツン……コツン


 なんだこの音?足音?

 まだこの男の他にも誰かいるとでもいうのだろうか?

 俺は音のしたほうへ視線を向ける。

 足音のような音は次第にこちらに近づいてくる。

 そして、音が間近にまで来た時だった。

 ”その人”は現れた。


「あれぇ~?声が聞こえたから来てみれば……。まさか”ターゲット”に出会えるなんて!今日はなんて運がいいんだろう。」


 男の背後の影から現れた”その人”はどこか楽し気な声を響かせ笑いながら姿を見せた。

 ……俺はその姿を見て、この男に似たような理由だが、それとは比べられないほどの”それ”に驚いた。

 その容姿は一言で表すなら”狂った修道女”が似合うだろう。

 着ている服装は黒色の修道服、袖の長いワンピースのような服と裾の長い頭巾、そして首には金色の十字架のネックレスを身に着けている。

 輝くような金色の長い髪に丸くて大きく髪色と同じ金色の瞳、輪郭は童顔で優しそうな印象を抱く。

 その顔は誰が見ても美少女と言うだろう。

 そう、黒い修道服を身にまとった金色長髪の美少女だ。

 しかし、そんな容姿からは想像できないような”それ”を彼女は手にしていた。


 ”それ”は男の”錆びた剣”なんかちっぽけに見えるほどの異形さを放っていた。

 その様相はあまりにも恐ろしく目の前のもの全てを無差別に傷つけるように思えた。

 そして、”それ”は彼女の容姿からは想像はできないが、自然と違和感を覚えることはなかった。

 彼女が軽々と回している”それ”は一般的に言うところの大鎌。

 映画に出てくる殺人鬼が持つようなサイズの鎌だった。

 それを持つ彼女の表情はまるでそんなものを感じさせないほどの笑顔で俺はその顔から目を離せなかった。

 目の前の男がこちらに走っていることに気が付くのに遅れるほどに。


「くそがぁぁぁぁぁぁぁぁ!!お前もみちづ」

「!!」


 男が突進してくるのを視認した瞬間、俺は自分の死を覚悟した。

 俺は思わず、目をつぶってしまう。

 

 ザッシュ……


 そんな何かが切れるような生々しい音がした。

 俺はきっと自分が刺された音だろうと思った。

 

「……………。」


 しかし、どれだけ経っても痛みを感じることはない。

 俺はゆっくりと目を開く。

 そこに映った光景を見て、俺は先ほどまでの驚きが消えるぐらい驚いて声が出せなかった。

 

 先ほどまで俺を殺そうとしていた男は四肢がバラバラに切られていた。

 よく見ると、心臓の箇所も穴が開いている。

 そして、その横には血の付いた大鎌を握る彼女の姿があった。

 それだけで俺がこの少女が男を殺したことを理解するのは難しくなかった。

 俺は自分が殺されそうになった恐怖と目の前で人が殺された恐怖、そして自分が助けられた事実が頭の中で渦を巻くように流れ続ける。

 

 あまりの情報量に立ち尽くしていると、先ほどまで立っていた彼女はいつのまにか鎌を置いて、正座をしていた。

 何をするんだろうと見ていると、彼女は目を閉じ、手を組んだ。

 

「罪深き魂よ。自らの罪の穢れを払い、次の生では清らかに生きなさい。」


 その姿はまさに修道女らしい祈りだった。

 先ほどまでの恐怖も感じられないような聖人の姿がそこにはあった。

 

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