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第67話:式典準備

「これは……招きすぎたんじゃない……?」

「はは……奇遇だな。ドコウ殿もそう思うか」


 俺は魔機研の事務室で、ヴァルさんが渡してくれた書類を見るなり、そう言った。

 返答したヴァルさんの顔色は良くない。

 ……ちゃんと寝てるんだろうな……?


 渡された書類に書かれていたのは、明後日行われる式典の来賓リストだった。


 ヴァルさん、レティと出会ったステラマーレからは、国王陛下御一行。

 ……まあ……ヴァルさんに縁のある国だしね……。


 ヴァルさんとレティの出身国であるレグナムグラディからも、国王陛下御一行。

 こちらは第三王子のカスパーさんの他、数名の王子達も一緒だと聞いた。

 カスパーさんはニナさんと手合わせをした人だ。

 ……まあ……こっちも当然だよね……ヴァルさんだけでなく、何と言ってもレティがいるのだから。


 ボレアリスからは、スゥの侍女を務めていたミヤさんが代表として参加するらしい。

 そもそもボレアリスからの支援は皇帝が個人的に行った非公式のもの。

 その辺りを考えての控えめな参加だと思うが……どうも心配だ。


 特に、土産を運ぶ名目で、ルビーベイから船団と言えるほどの船が出た、という情報が気になる。

 トニトルモンテを経由し、もうすぐ着く頃だと思うが……。


 そのトニトルモンテは国王と騎士団長を筆頭に、結構な数で来るそうだ。

 距離的に近いというのもあるが、どうやらマズイことになった。

 先日の亀のモンスターの件だ。

 感謝を示したいとか何とかビッシリ書かれた手紙には、それ以前に聞いていた分の倍以上の参加者名が添えられていた。

 ……滞在中の諸々は自分らで何とかするので対応は不要と書いてあったが……気にしない訳にはいかない。


 しかもどうやら、今度ばかりはヴァルさんの手柄にするのは無理があったらしく、俺のことを認識されているとのことだ。

 ……ちゃんと対応できるだろうか……今から怖くなってきた。


 そして少し驚いたが、関わりの少ないゼフィリアからも使者が来るそうだ。

 ゼフィリアは都市建設の援助をしていないので、招待客ではない。

 しかしどうも、友好的な雰囲気で参加を希望してきたらしい。

 こちらとしては、拒む理由はない。


 さて、そんな具合で、式典には各国のお偉いさんが多数集まる予定だ。

 ……これは想像していた以上に大規模なイベントになるな……。


「それで……準備の方は順調?」

「はは……」

「……ん? ヴァルさん、準備状況は……?」

「……極めて遅れている」

「え……」

「……隠しきれないと思うので白状しよう……。私含め主要なメンバーは、このところドコウ殿のことばかり考えていた。そのため、一週間ほど準備に手がついていないのだ……」


 そ、それは……。


「決してドコウ殿のせいにしたい訳ではないぞ! ただ恐らく、他の者から話を聞く際にも、疑問に思うだろうからな……」

「なるほど……。ほんとに、心配をかけちゃったな。……じゃ、俺にも手伝わせてもらおうかな」

「正直に言えば非常に助かるのだが、身体は大丈夫なのか? もしこれでドコウ殿を倒れさせでもしたら、私はレティに怒られてしまう」

「大丈夫大丈夫! 力仕事は代わってもらえるしね」

「おお、機人か!」

「そゆこと」


 ◇


 結局俺は、手が足りずに困っている各地を、ちょっとずつ手伝うことになった。

 ちなみに、式典に関する場所は、ほぼ全て困っているらしい。

 ……なんかそれ……全体の様子を見るだけになりそうな……。

 皆の様子は見たいと思ってた。

 一石二鳥と思うことにしよう。


 まず最初に来たのは、式典会場。

 ここには確か……。


「あ! ドコウさん!」

「おお、レティ。お疲れ様」


 そこでは、正門建設で現場の作業員と仲良くなったレティが、監督を務めていた。

 レグナムグラディの王女であるレティは、式典の完成イメージもしっかり掴んでいる。

 確かに適任だ。


「俺も何か手伝えないかな?」

「いいんですか? …………えっと、それなら……あそこの天井近くの飾り付け、お願いできませんか? 高いところの数カ所に付ける必要があるんですけど、いちいち足場を組まないといけなくって……。凄い時間がかかっちゃってるんです……」

「うん、お安い御用だ」


 俺は自分の足に魔岩を生成し、操作して宙に浮かぶ。

 それを見た周囲の作業員が驚きの声を上げた。


 作業はあっという間に完了した。

 飛べさえすれば、簡単だ。


「わぁっ! ありがとうございます! 飛べるって凄いですね……! 羨ましいです!」

「あれ、よく考えたら、飛べるのってマギアキジアで俺だけ……?」

「今更何を言ってるんですか。そんなの、この世界中でもドコウさんだけですよ!」

「えっ! ……確かに……?」


 そりゃあ、作業員たちも驚く訳だ。


「いつか私にも、出来ますかね……?」

「……レティ、もうやってるよ」

「え……?」

「こないだの岩の乗り物。あの操作と、この足に付けた魔岩の操作は同じ技術だよ」

「あ! 確かに!!」

「今度ちょうどいい乗り物を作って、練習してみよっか!」

「はいっ!!」


 高所の作業が全て片付いたことで、この現場にはかなり余裕が出来たらしい。

 レティに一言告げ、次の現場に向かうことにした。


 来た時より明らかに上機嫌なレティに影響され、現場全体が活気づいていた。

 何も心配はいらなそうだ。


 ◇


 さて、次に俺が来たのは、調理場。

 ここでは来客に振る舞うあらゆる飲食物の準備が進められている。

 ここを任されているのはやはり……


「おや、ドコウ様じゃないか! 様子を見に来てくれたのかい?」

「あ、マチルダさん、どうも。もし俺に出来ることがあれば手伝いたくて来たんだけど……」

「そりゃあ助かるね! とはいえ、何をお願いさせてもらおうか……おーい! スゥ様ッッ!!」


 マチルダさんの声が広い調理場に響き渡る。

 その声を聞き、遠くで忙しそうに指示を出していたスゥが、俺に気づいた。

 額の汗を拭き、身だしなみを手早く整えると、こちらに駆けてくる。


「おぬし! 何用でこんなところへ? いや、それより、身体は大事ないかの? まだ休んでいた方が……」

「スゥ、大丈夫だよ。普段通りだ。それに、俺も皆を手伝いたくてさ」

「そ、そうじゃったか……。ではここも手伝いに来てくれたのか?」

「うん。何か困ってることないかな? ……あ、気を遣わずに、まずは一番困ってることを教えてほしいな」


 俺とスゥのやり取りを見て、マチルダさんはニコニコしながら離れていった。

 料理長なのだから当然忙しいはずだ。

 俺はマチルダさんに軽く会釈して、スゥに向き直った。

 スゥは少し考えているようだ。


「……例えば、加熱魔岩は足りてる?」

「うむ。そちらはこれまでに作った分で足りそうじゃ。扱える者も、ドルフィーネから助っ人が来てくれたお陰で、何とかなりそうではある」

「……? まだ微妙に何とかなってないような言い方だね」

「うむ……。実は少し困っておるが……しかし……」


 聞き出したところ、困っているのは運搬だった。

 何しろ使用する食材の量が多い。

 保管している倉庫から調理場へ食材を運ぶだけで、かなりの人員を取られているらしい。

 また、調理すると出るゴミを廃棄場まで運ぶ必要もある。

 本来調理に専念させたい人材をこれらに割いているそうだ。


「よし、任せてくれ」

「し、しかし! これは力仕事じゃ! やはりそなたには頼みとうない!」

「ふっふっふ……スゥ、ここは研究都市、マギアキジアだよ?」

「……どういうことじゃ……?」


 俺は魔岩を用いて一体の機人を生成する。

 機人といっても今回は人っぽさがない。

 六本の脚で地面に立つそれは、虫のように見えるかも……。


「これも機人なのか……?」

「うん。……えっと……見た目は気にしないで欲しいな……。利便性を優先したらこうなっちゃって……」


 生成した機人は、膝下ほどの高さしかない小さめのものだ。

 床を傷つけないよう、素材も軽く変質させてある。

 背中は平らで、何かを乗せられそうだ。


「……あ、この方がいいか」


 俺はさらに背中を変形させ、外枠を作った。

 カゴが背中にくっついているように見える。

 これで乗せた物を落としにくくなるだろう。


「……これはもしや……荷運びが出来るのか?」

「その通り! 行き先は『調理場』、『倉庫』、『ゴミ捨て場』の三つでいいかな?」

「う、うむ……」


 俺は早速、魔力プログラミングを始める。

 この辺りの地図はヴァルさんのところで見せてもらっていた。

 それも既知情報として与えておく。


「……よし、これで動くはずだ」

「妾にも動かせるのか……?」

「うん、もうルールは教えてあるから、言葉で指示すればいいよ。他の従業員にはスゥから教えてあげてほしい」

「それはもちろんじゃ! ……試してみても……良いかの……?」


 スゥはワクワクした顔を向ける。

 手近にあった食材用の箱を機人の背中に乗せ、俺は頷いた。


「で、では。機人よ! 倉庫に向かうのじゃ!」


 スゥの指示を受け、機人は六本の脚を規則正しく動かし、歩き始めた。

 速度は人がゆっくり歩く程度にしておいた。


「……最初だし、付いていってみようか。時間ある?」

「うむ!」


 六脚機人は順調に通路を進んでいく。

 スゥは興味津々の様子だ。


「……どう?」

「うむ。可愛いのぅ……」

「ははっ! それは良かった! ……えっと、使えそうかな?」

「えっ!? あっ……! そ、そうじゃな!」


 慌てたスゥの足が軽く、チョンっと機人に触れた。

 機人は背中の荷物を落とさないように姿勢を調整しつつ、即座に脚を止める。


「ああっ! す、すまぬ機人よ! 止まってしまったぞ! ……うう、どうすれば……」


 泣き出しそうな顔で俺を見上げるスゥ。

 あのスゥがこんなに慌てるとは思わなかった。

 急いで説明してあげよう。


「大丈夫。もう一回、さっきと同じように指示を出してみて?」

「う、うむ。……機人よ、倉庫に向かってくれぬか……?」


 恐る恐るスゥが発した命を受け、機人は再び歩き始めた。


「……こんな感じで、人や物に当たった時には安全に止まるようにしてあるから。もし止まってたら今みたいに指示を出し直してあげて」

「か、賢い子なんじゃな……」

「本当は当たる前に避けるようにしたいんだけど、まだちょっと難しくてね。……お、あれが倉庫かな」


 一通りの説明が終わったところで、倉庫に到着した。

 機人の動作確認は問題なしだ。

 スゥのお陰で緊急停止の機能も確認できた。


 丁度いいので、ここから次の現場に向かうことにしよう。


 倉庫に居た従業員にスゥが事情を説明している間に、俺は同じ機人を追加で四体生成しておいた。

 区別するため、背中を少し変形させて番号を彫る。


「そなたは本当に何でもありじゃな……」

「今回ほど自律して動く機人はまだレティにも教えてないし、驚かれても仕方ないかも……。……よし。こっちから、太郎、次郎、三郎、四郎、五郎と呼んであげれば個別に指示できるよ」

「…………その名付けはやや気になるが、とにかく大助かりじゃ! 恩に着るぞ!」


 俺はスゥに手を振り、次の現場へと歩き出した。

 次は、賑やかなあの場所だ。

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