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第52話:逆

 弟子達の研究成果を聞き始めてから、どのくらいの時間が経っただろうか。

 あまりにも強烈な成果の連続に、俺は一度倒れたりもした。

 しかし、それも後一人。

 期待と寂しさを胸中に共存させつつ、俺は尋ねる。


「……よし。じゃあ、待たせちゃったね。スゥの話を聞かせてもらおうかな」

「うむ。……その前に、この加熱魔岩と、先程レティが使ったこの魔岩を繋いで貰えんかの?」


 そんなのは朝飯前だ。

 ……いや、今は昼飯前? あれ、もうすぐ夕飯か?

 俺は言われた通り、レティが魔力保存に使った魔岩の上に乗るように、加熱魔岩の一つを結合した。


「ありがとう。……では、これを、こうする」


 そう言ってスゥは、もう一つ別の加熱魔岩を手に取り、今付けた加熱魔岩に近づけた。

 加熱魔岩はガスコンロのゴトクのように、爪を持つ形状をしている。

 スゥは、二つの加熱魔岩の爪が互い違いになるように位置を調整しているようだ。


「それでは始めるぞ。よく見ておくのじゃ」


 スゥが手に持った加熱魔岩に魔力を通わせると、爪の間に光球が生まれた。

 ……ここまでは、もはやいつも通りの光景だ。

 しかし、決定的な違いがあった。


 スゥが持っていない方の加熱魔岩に接続された、拳大の魔岩の色が変化し始めたのだ!

 先程レティが魔力を込めたことで少し黄色みを帯びていた魔岩の色が、僅かに、しかし確実に濃くなっている。


「こ、これって……熱が魔力に……?」

「やはり、そなたにもそう見えるかの。詳しいことは妾にも分からぬが、どうやら発熱の逆の現象が起きておるようじゃ」


 スゥは光球を生じさせ続けているが、もう拳大の魔岩の変化は止まっている。

 以前にレティが言っていたように、一定量を超える魔力保存には、追加工が必要だからだろう。

 ……しかし今、量はどうでもいい。


 逆の現象?

 魔力を物理的な現象に変換する工程は、『魔動変換(まどうへんかん)』と呼ばれる。

 だとすれば、これは『動魔変換(どうまへんかん)』とでも呼べる現象だ。

 そんな現象を、今まで見たことがあったか……?


 一つだけ、思い当たることがある。

 俺自身が、基盤学校に通っていた頃に編み出した技術。

 自分が生成した魔岩を魔力に戻す技術だ。

 ……そうか……これは、動魔変換が理論上可能だと言うことを示唆する結果だったのか……。

 見逃していた。


「これは根拠の薄い考えなのじゃが……。これと同様に、様々な魔動変換の逆を考えることは出来んかの?」

「様々な…………はッ!!」

「またか!?」

「……」

「……大丈夫かの?」


 もし、スゥの考えが正しければ……。

 ロボットを作る上で足りなかった要素にぴったりかもしれない!


(ド、ドコウ殿……?)

(……スゥ、きっと我が主は何か(ひらめ)いた……。静かにしておこう……)

(そ、そうか……)


 動魔変換が出来る条件は何だろう?

 スゥが見せてくれた装置に、これまで以上の工夫はない。

 ……もしかして、今までも動魔変換は可能だった……?

 強いて言えば、魔岩を介していること……これは俺達にとっては普通のことだ。

 しかし一般的には、魔岩の使用自体が、これまでに無かった技術。

 よく調べられてなくても不思議ではない。


「ゴ……」

「む! なんじゃ?」

「ゴーレム作らないと! ゴーレムゴーレム!」

「お、おお! ここで作るでないぞ! この場所はゴーレムを動かす予定の部屋ではないのじゃ! 床が傷つく!」

「皆さん! こっちから裏手に行けます!」

「ゴーレムゴーレム!」


 レティに導かれるまま、魔機研の裏手に出る。

 そこは敢えて手を加えられていない、空き地のようなスペースだった。

 確かにここなら気を使うことはない。


 俺はすぐにゴーレムを作る。

 念の為、オール魔岩製にした。


(ゴーレムをどうするのじゃ……?)

(……ボクにも分からない……)


 俺はゴーレムの腕を持ち、自分の力で肘を曲げさせる。

 ……うーん、どうなんだ!?

 出ている気もするけど、微弱すぎる!

 ニナさんなら視えたかもしれないが……!


「……ドコウさん。何かありましたか?」

「ああっ、幻聴が……。そう……今ニナさんに視てもらえれば……」

「そのゴーレムを視ればいいんですね。」


 ……!

 振り返ると、ニナさんが居た。


(ニナ殿、いつの間に来たのじゃ……?)

(皆さんが、あちらの建物から慌てて出てくる様子が見えたので。)


 また音もなく!

 しかしありがたい!


「ニナさん! 今からこの腕を動かすから、魔力が生じないか視てもらえないかな?」

「分かりました。」


 俺はもう一度、ゴーレムの肘を無理矢理に動かす。

 手で動かしやすいように、もっと滑らかな関節を作ることも可能だ。

 しかし、今はそれでは意味がない。


「……どう!?」

「……微かですが、魔力が生じたようです。」

「ほんと!?」

「はい。しかしタイミングが……。」

「それはもしかして、ゴーレムの肘が曲がる時じゃなくて、その一瞬前に魔力が出たんじゃない!?」

「その通りです。」

「……おおお……!」


 物が動くよりも先に生じているもの。

 それは……力だ!


 ゴーレムの関節には、魔力を関節の動きに変換する仕組みが備わっている。

 これは土魔法の岩操作がベースになっているはずだ。

 だとすれば、これも魔動変換の一種。

 つまり、魔力を、岩にかける力へと変換する機構が組み込まれているのだ!


 そして、さっきスゥが見せてくれた現象と同じように、その逆である『動魔変換』も行われている!

 力を感知して魔力の……信号と言っていいだろう……うん、魔力信号に変換する……つまり、力センサだ!


「おお……おおおーっ! これは来たぞ! スゥ!」

「はい! ……あ」

「ありがとう! これはロボット実現に欠かせない大発見だ!」

「そ、そうじゃったのか?」


 ちょうど良かった。

 センサの実現はずっと気になっていた課題。

 ロボットの制御をレティに教えることになったので、一刻も早く解決したかったのだ。


「レティ!」

「は、はい!」

「楽しくなってきたぞぉ……。明日からの指導に期待して!」

「状況が全然分からないんですけど、楽しみです!」


 レティには順を追って説明しよう。


「……クレア!」

「はい。我が主……!」

「伸縮する魔岩が出来たら、魔力を通わせてみて欲しい。……もしそれで縮んだり、伸びたりする力が生じたら……そん時はお祝いだ」

「……! 分かった……!」


 周囲の音や景色が、認識できるようになってきた。

 魔機研の裏の空き地スペース。

 整地はされているが、地面は剥き出しのまま残されている。

 こういう時のために用意してくれてたのか。

 広い空間をぐるっと見回し……。


「……あれ!? ニナさん! なんでここに?」

「……慌てる皆さんが見えたので。」

「それで来てくれたのか……。凄く助かったよ」


(スゥさん、ニナさんにさっき聞いてましたよね……?)

(うむ。どうやらドコウ殿には聞こえておらんかったようじゃ)

(……考え事してると、たまに何も聞こえなくなる……。たぶんそれ……)


 空はいつの間にか、茜色に染まっている。

 充実した一日だった……。

 夕食を済ませたら、今日の報告内容をもう一度整理しよう。

 ……夕食……あれ!? 俺達の昼は!?


「……レティ、スゥ、クレア……俺達、昼ご飯食べ損ねた?」

「そうですね……」

「夢中になってしまったの……」

「……集中が切れて、お腹……空いた……」


 いかんいかん。

 師匠として、俺がペース配分を管理すべきだった。

 ご飯抜きだなんて……いかんぞ。


「もうじきのはずです。皆で行きましょう。」

「ありがとう。ニナさん。……そういえば、ニナさんは今日は何を?」

「頂いた土地を果樹園にする準備を。」

「果樹園! それは素敵だね……」

「まだ苗木を植えるところですが、今度来てください。」

「そうするよ! ……あ、明日はバルドに会う必要があるから、その後かな」

「構いません。」


 マギアキジアの正門が完成すると、正式な都市としてのスタートを記念する式典が行われる予定だ。

 それまでに、バルドと一緒に完成させなければならないものがある。


 俺達の家は魔機研の隣。

 すぐそこだ。


 俺達は談笑しながら、家路についた。

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