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雪山での戦い

 どうもシファニーです! 私、兄弟がいるんですよ。その兄弟が今日体調不良で学校を休みまして。どうして具合悪くなったの? と聞いたら、テストが嫌だから、だそうです。私とそっくりだと思いました。


 第95部、第3章第3話『雪山での戦い』です。どうぞ!

 やがて、俺はそこにある、というよりはいるものが何なのかが分かった。

 ただ、見えたわけではない。


 細く天に轟く咆哮が聞こえてきたのだ。

 まさに、狼の叫びだった。


「ついに魔物のお出ましか!」


 背中に欠けていた弓を手に取る。今の今まで手先を寒いままむき出しにしていただけあって、すぐに戦闘態勢を整えられる。

 ヒセも、リィナが蛇の皮を使って作った鞘から魔剣を抜き取り、構えた。


「ヒセ、数は6で合ってるわよね?」

「9。奥にまだいる」

「え? ……あれのこと? よく気付いたわね。でも、前衛は任されてくれるわよね?」

「ん、任せて。負けない」

「リネルは私と一緒に後方支援! ヒセが危ないようだったら手伝ってあげて!」

「お、おう!」


 あの、俺まだ敵の姿が見えていないんですけど……。


 リィナは魔力を見ているとして、ヒセは匂いでも嗅いでいるのだろうか。

 視界一面白く染め上げられているというのに、敵の数まで見抜いているなんて。

 ここに来て俺無能説が浮上しようとしているが、そうならないためにも頑張る必要がある。

 いや、待てよ?


「なあリィナ、そもそもあっちは俺たちを認識出来てるのか? この吹雪の中で?」

「あっちだって鼻が利くのよ。明らかこっちに意識を向けてるわ」

「そうか? あんまり殺意ってものを感じないんだが……」


 魔力は見えないし鼻も利かないが、何度も死線を体験してきただけあって殺意には敏感なつもりだ。だが、殺意をひとつも感じない。

 9体もいてどれも殺意を向けてこないだなんて、そんなこと……。


「行くっ!」


 ヒセが小さく叫び、踏み込む。

 その一歩は雪に足を取られながらもしっかりと地面を蹴り、吹雪の中へとヒセの体を向かわせる。


「リネル! 援護! 私も後ろから手伝うわ!」

「わ、分かった!」


 まだ、殺意は感じない。

 ごうごうと風が吹き、視界を埋め尽くす雪が降る。音も視界も封じられ、臭いだけで認識できるほどの嗅覚はない。

 誰がどこにいるのかも分からないまま飛び込んで、俺は思わず足を止めた。


「ああもうっ、まともに狙えやしない! 《リヴェラル・ノヴァ》ッ!」


 小さくリィナの声が聞こえた直後、頭上で爆音が鳴り響く。

 

 一気に視界が開けた。頭上を覆っていた雲、降り続いていた雪が強すぎる風に煽られて流され、視界が確保されたのだ。

 だから、リネルはしっかりととらえていた。


 ヒセの体が、数体の白色の狼と共に、落下していくのを。

 ヒセと、目が合ったのを。


「っ、ヒセ!」

「足場が! リネル! どうするつもり!?」


 雪崩だ。

 足元が不安定だったんだ。

 

 白色の狼。種族は分からないが、きっとこの辺に住み着いている種族だろう。

 あいつらやっぱり、俺たちを攻撃しようとしていたんじゃない。近づくな、こっちに来るなと吠えていたんだ。

 実際、その雪崩の規模は大きく、狼たちさえ巻き込まれていた。

 

 雪崩が起きそうだと気付いた時には、すでに巻き込まれる位置にいた。だから動かないようにしていた。そこにヒセが踏み込み、雪崩が起きてしまったのだ。


 反射的に体が動いていた。

 リィナが雲を飛ばしてくれたおかげで、幸い視野は確保できている。

 地面を踏み切り、風魔法で浮遊。


「《イグニッション・バーニア》ッ!」


 全速力の加速をかける。

 

 斜面を流れる雪と、同等の速度にまで体を速める。風は、全身を強く圧迫した。

 ヒセを探した。一瞬目を離した隙に見失ってしまっていた。雪は、大量に流れている。


「クソ、ヒセッ! どこだ!」


 聞こえるわけはない。そう思いつつも放った言葉に、返答があった。

 言葉ではない。黒色の刃が、雪の中から姿を出した。


「そこか! 今行くぞ!」


 もう1度加速をかける。雪の勢いは馬鹿にならない。ひとつミスをすれば、俺も巻き込まれることになる。

 だけど、そんな可能性を考えている暇はなかった。


「届けよ! ヒセッ!」


 剣が顔を出した、その増した。大量の雪が転がるその地点に、勢いそのまま突入する。

 手の感覚を頼りにヒセを探した。何か柔らかいものを掴んだ気がして、確認も無しに通過する。

 顔を雪にぶつけながら、やっとのことで雪から這い出れば、そこは激しい吹雪の中。夢中で飛び出すうちに自ら突っ込んでしまったらしい。

 視界は悪い。もうどこが山肌なのかすら分からない。


 けれど、両手にはしっかりとした重みがあった。


「リネ、ル……?」

「ああ。ヒセ、大丈夫……じゃないよな」


 両手で抱えたヒセは、力なく剣を握り、脱力しきってこちらを見上げた。

 吹雪の中でよく見えないが、顔色は決して良くない。厚い服越しにでも分かるくらい震えていて、すぐにでも温める必要がありそうだった。


「クソッ、どこか、休める場所は……」

「……あっち」

「ん? ヒセ?」


 ヒセは、ただ俺の左手側を静かに指差した。

 それ以降は、眼こそ開いているが脱力しきり、何も言わなくなってしまう。焦る気持ちを落ち着けて、ヒセの指さす方へと向かった。

 どうせ何も見えないんだ。ここはひとつ、野生の勘にかけてみようじゃないか。

 ちょっとくだらないことに気付いたんですけど、今日は2025年02月25日。ということで2と0と5がたくさんある日なんですよね。

 あ、はいそれだけです。


 それでは!

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