道のりは険しい
どうもシファニーです! そう言えば今日祝日だったんですね。起きて初めて知りましたよ。
第94部、第3章第2話『道のりは険しい』です。どうぞ!
さて、休憩もそこそこに俺たちは雪山の探索を再開する。
「いい? 私たちの作品はこうよ! まず現在地、シンラシンラを覆うように北から西へと続く雪山のだいたい中央のはずよ」
「まあ、地図によるとそうだな」
「そして、お父様の本を参考にするのなら、ここから北方面の、更に山の高いところに、私たちが探し求める果実があるはずなのよ!」
「果実……美味しい?」
「美味しくても食べちゃ駄目よ。私たちはお母様のためにそれを採るの。代わりに帰ったら私が育ててた果物を思う存分食べていいわ」
「ん、頑張る」
そんな感じで、俺たちの探索は進行していく。
「って、何も見えないじゃない!」
「こりゃ、凄い吹雪だな……」
「風、びゅーびゅー」
小屋を出てから1時間ほど。感覚を頼りに進み続けていたのだが、吹雪が深いところに来てしまった。
運よく風上からの勢いがある吹雪は崖を背にすることで防げているのだが、それにしたって視界が奪われたり風の影響で進むのが遅くなったりしてしまう。
「ああもう、どうしてこうも険しいのよ!」
「険しい場所に来たからだろうよ。ここは、滅多に人が訪れない極寒の山岳地帯。野生動物だって滅多にいないし、いたとしても強力な種族じゃないと生き残れない。人類が立ち入るのことのない、文字通り秘境なんだよ」
「それは分かってるけど……にしても1日目からこれなんて、幸先悪すぎるわよ。さっきみたいに木が生えているならともかく、そうじゃないと小屋を造るなんて私でも無理だし……」
あの、世界中の冒険者と建築士を泣かせてしまうような技術には一応制限があったらしい。と言っても、植物が生えていなさそうな場所と言えばこの雪山と魔の荒野、あとは不毛の大地と呼ばれる、魔族の住んでいる土地くらいのものだろう。
もし人間の国に行くことがあれば、建築業で食べていけるのではないだろうか。
なんてことを考えるくらいの余裕は、実はあるのだ。
というのもリィナが作った防寒対策は割と完璧で、吹雪に覆われていてもあまり寒さを感じない。流石に露出している指先は悴み始めているが、それだってある程度は何とかなっている。
雪に足が取られることもあまりないし、文句を言いながらも着実に進めているのは、なんだかんだリィナの功績のなせる業だった。
それを正直に口にするとそれはそれで面倒くさそうなので、すべてが終わったら存分に褒めてやろうと思う。
「でもまあ、魔力が見えるおかげである程度道筋は分かるのよね……」
「そうなのか? どんな感じだ?」
「え? そこそこはっきり見えてると思うけど、見えない? ほら、ここを真っ直ぐ、ちょっと上の方まで」
「……み、見えない」
リィナに言われ、目を凝らして見るが欠片も見えなかった。やっぱり、魔力を見る力についてはリィナに敵いそうもない。
この雪山は、シンラシンラが風属性の魔法の力を高めてくれるように、恐らくは水や土属性の魔法の力を高めてくれるのではないだろうか。
雪は元を辿れば水だし、山そのものは土で出来ている。リィナに見えているのは、恐らくそのどちらかの魔力の痕跡。それが連なっているというのなら、確かにそこには道があるはずだ。
と、そうなればもしかして、リィナの水属性、土属性の魔法の実力を上げるのにはもってこいの環境なのではないだろうか。
こんな悪環境の場所で何を、と言われるかもしれないが、対応する属性と根深い関わりがある地での修業は効率が良い、というのは昔から言われていることだ。
隙を見て練習させるのも、俺自身が練習するのもありかもしれない。
そんなことを考えながら、俺たちは更に進む。そうは言っても1時間で1キロも進まない程度の牛歩だ。進捗はあまりない。
「文明は痕跡も無いし、魔物も見ないわね。植物も、ところどころに野イチゴが生えている程度……あ、あとで回収しておかないとね」
「帰って育てるのか?」
「ええ。これはコレクションには無かったもの。……じゅなくて。背が高い気もあるにはあるけど滅多にないし……これは、見つけたら小屋を建てて休憩、ってしていかないと何時間も歩きっぱなしってことも考えられるわね」
「そうかもな。ヒセはまだ大丈夫か?」
「ん。まだ、元気」
この前使った小屋は、すでに普通の木に戻っている。
本当にリィナの魔法、リヴェラル・クラフトで手伝ってくれた植物は、こちらの用が済めば元の姿に戻る。ただ、基本的には植物側も条件を提示してくるらしく、今回の場合だと葉っぱに被った雪や、根っこを覆う雪を払って欲しい、ということだった。
そのため払ってあげ、お別れしたのだが、そのくらいで雪風を防いでくれるのなら万々歳。大した手間でもないので見つけたたびに休憩するのは体力温存の意味でも正解かもしれない。
「じゃあ、木を見つけたら報告……あら?」
「リィナ、ストップ」
「ええ、分かってるわ」
「……」
……何が、分かってるんだ?
なんか、俺の気付いていない何かにふたりとも気付いているらしい。
ふたりの気付いているものに気付くため、俺は必死に真っ白な視界に目を凝らした。
実は、この作品以外に連載しているいくつかの作品、今まで休載していたものもあったのですが、再開することにしました。ただ、全部を毎日更新は難しいので、この作品だけ毎日、他を曜日ごとに分けて更新することにしました。
何が言いたいのかと言えば、いろいろ更新してますのでどうか他作品も読んでください。お願いです。感想のひとつでもいただければこれからの私の成長につながるはずですので、何卒。
それでは!