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登山開始

 どうもシファニーです! 週末がまた終わってしまった!


 第93部、第3章第1話『登山開始』です。どうぞ!

 俺たちは、新たな衣服に身を包み風林車に揺られていた。

 基本的には今までと同様の材質で分厚くなっただけなのだが、要所要所蛇の皮で補強され防寒対策が施されている。

 コットンを詰め込んだフードを被り、俺もリィナもヒセも全体的に丸くなったフォルムで風林車の荷台に固まっている。細かい作業が出来るように両手だけ開けているが、他に露出は顔くらい。

 

 そんな暑苦しい格好で、俺たちはシンラシンラに沿うようにして雪山を目指していた。

 と言うのも、シンラシンラ内を通ろうとすると道が整備されておらず、直線距離での移動が難しい。逆に、家の近くからシンラシンラを出て、森を迂回するように北に向かえば遮るものなく進めるという理屈だ。

 シンラシンラが近いおかげで風属性魔法も安定しやすい。やはりシンラシンラの中にいるのと外にいるのとでは風魔法の出力が段違いなのだ。けれど、その問題も解決。理想的な移動方法となっていた。


 ちなみにそれでも到着までにかかる時間は大体1時間ほどだと言われた。結構かかるわけで、今から着込む必要も無いと言ったのだが、慣れておくべきだと言われて断られてしまった。


 そんなわけで若干汗をかくまま風林車に揺られ1時間。シンラシンラから離れながら、見上げるほどに大きな雪山を目指していた。

 少しごつごつとした草原。いくつかの小さな起伏を越えながら、シンラシンラを離れたこともあって揺れが激しくなった風林車の荷台にしがみつき、山を見据えた。


「これが……噂には聞いていたが、やっぱり大きいな」

「ええ、壮観。ここまで近づいてくると、本当に探索しつくせるのか、心配になるくらいだわ」

「……寒い」

「吹雪が近い……私が送り届けられるのは、ここら辺までかと思います」


 空は白く染まろうとしていた。まだ昼時だというのに薄暗く剣呑な雰囲気を漂わせている。


「そう。ならここまででいいわ。一応感謝を伝えておきましょう」

「ありがたきお言葉です。……皆様に置かれましてはご武運のありますようお祈りしております」

「ええ、受け取っておくわ。さ、リネル、ヒセ、行くわよ!」


 ちょうど雪原に入るか入らないかと言ったあたりで風林車は停車。俺たちは荷物をまとめ、降りることとなる。

 その後リオネルは間もなく去っていく。レイカが心配しているだろうから、少しでも早く帰って俺たちの方針を伝えてもらうためのリィナなりの配慮らしい。だったら最初から心配をかけてやるなとも思うが、俺も共犯者なので強くは言えない。


 俺とリィナは横に、ヒセは上にとんがりを付けたフードを深く被り、底冷えの雪山に向かって歩き出した。


 それから、3時間後。


「足が痛いわ!」

「さ、寒い……」

「頼むからもうちょっと頑張ってくれって……」


 ふたりは早速疲労していた。まあ当然と言えば当然だ。なんと言ってもここは極寒の上雪に足を取られて動きづらい。

 疲れる気持ちは十分に分かるが、もう少し頑張って欲しい。だって今――


「俺たち絶壁の上にいるんだぞ? もうちょっと頑張ってくれよ」

「そうは言っても疲れたわよ! なんで雪ってこんなに重いの!?」

「うぅ、寒い……」


 見下ろす先は断崖絶壁。200メートルはある崖が足元には広がっていた。

 なぜこんなところにいるかと言えば、とりあえず上を目指そうと言うことになり、その途中で上へ続く道が見つからなかったところ、最後に残されたのが道幅1メートル未満の、右手には断崖絶壁の最悪の道だけが残されたのだ。

 そうしてその道を歩き続けて早30分。終わりが見えないこの細い道は、そろそろリィナとヒセに絶望を植え付けようとしているらしかった。


「ヒセはやっぱり暑いところで暮らしてただけあって寒いのは苦手か?」

「ん。嫌い。休憩しちゃ、駄目?」

「も、もうちょっと待ってくれ。こんなところで足を止めたら最悪足を滑らせることになる」

「……ん、頑張る」


 ヒセはいやいやと言った風にではあったが、物分かりの悪い子ではない、力強く頷き、気合を入れ直すように軽く頬を叩いた。


 そんなこんなでさらに30分。俺たちはようやく開けた部分にたどり着いた。

 そこはすでに雪山の中腹。雲が近く感じるくらいの場所まで来ていて、空はずっと暗がりだった。足元の雪は30センチほど積もっていて、開けていても歩きづらいことに変わりはない。

 一先ず、体を休めるべく、洞窟か何かがないかと探してみる。


「ってもそう簡単に見つからないよな」

「リネル? 何を探してるの?」

「いや、雪除けのために洞窟でもってええぇぇ……」


 そう言えばさっき、寂しく咲く1本の木を見かけた気はした。

 けれどまさか、その木を使って即席の小屋を造るとは思わないじゃないか。

 いやもう、本当に。


 シンラシンラの俺たちの家、その俺の部屋よりも少し狭い程度の本当に小さな小屋。中に入れば何も家具はなく、窓もなくあるのは扉だけ。しかし雪風を凌げるのは間違いなく……。


「さ、小一時間ほど休憩しましょ」

「寝ても、いい?」

「……まあ、これなら良いか」


 俺が知っている探索とは違った気がしたけど、これはこれでしっかりと休憩できるし文句は言うまい。

 と言うわけで登山探索です。これ、ちゃんと1章分続けられるかは少し不安ですが、頑張って行こうと思います!


 それでは!

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