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英雄、発つ

 どうもシファニーです! 2月が終盤ってマジですか?


 第89部、第2章第43話『英雄、発つ』です。どうぞ!

「リィナ?」


 シンラ・アースの中を覗く。相変わらず、いろいろな植物が茂っていた。ちゃんと管理されていたみたいで何よりだ。

 振り返れば、俺がリヴェラル・ノヴァで抉ってしまった地面もちゃんと直っていた。レオン達の言う通りだったな。

 ただ、シンラ・アース全体を覗いてみても見当たらない。それはそうだろう。背が高い植物が多いし、そもそも広いのだ。この中だけでもそう簡単には見つからない。


 俺は隅から隅まで探してみることにした。

 リンゴの木、ミカンの木、ブドウの木。人間の国でも、どれも別々の地域で栽培される果物。それを一挙に育てるんだから、本当にここは凄い。

 本来開花の時期が違う花たちや収穫の時期が違う植物たちもいっぺんに育っていて、一面の紅茶畑なんかはやっぱり壮観だ。


 そしてそんな紅茶畑の少し奥。そこに、小さな小屋があるのが見えた。シンラ・アースの外から見えるのとは違う、もっと小さなやつ。小屋と言うより、休憩用の屋根だけが置かれたようなもの。

 歩いている道の先、その側面だけ見えていた。焦ることなく歩み寄り、中を覗く。そこには、ベンチに腰掛けて古びた本を読むリィナの姿があった。


 俺が声をかけるより先、リィナは顔を上げてこちらを見た。


「あら、リネル。案外遅かったわね」

「遅かったって……こっちは結構頑張って探したんだけどな。……落ち着いたか?」


 真ん中に座っていたリィナは、何も言わずに奥にずれる。

 空いたスペースに座る頃には、リィナは再び本に視線を落としていた。


「落ち着いたわよ。と言うか、元々落ち着いてる」

「そうは見えなかったが?」

「じゃあリネルの目が節穴なのよ」

「相変わらず毒舌だな」

「そろそろ免疫がついてもいい頃よ」


 いつも通りの切れ味。どうやら、落ち込んではいないらしい。むしろ少し元気に見えるくらいだ。

 ちょっとだけ、意外だった。


「……ねえ、リネル」

「ん? どうした?」


 リィナがこちらを見ないので、俺もリィナの方は見ない。代わりに、目の前に広がる紅茶畑を眺めていた。

 この緑の葉っぱたちが紅茶になるなんて、正直信じられないよな。もっと緑色の飲み物になりそうなものなのに。って言っても、緑色の飲み物なんて飲みたくなくなるかもしれないが。


「私、決めたわよ」

「何をだ?」

「お母様を治すの」

「どうやって?」

「それを探すのよ。そうすることを決めたの」

「ああ、なるほど……それで? 見つかりそうなのか?」

「そんなすぐに見つかったら苦労しないわよ」


 そりゃそうだ。そう返そうとした言葉は、しかし静かに遮られた。


「でも、手がかりなら見つけたわ」

「え? どんな?」

「どんな影でも治す万能の果実。そんなものが存在しているらしいのよ」

「……聞いたことも無い。何かの御伽噺か?」

「いえ。……お父様の、冒険譚よ」


 気配を感じて横を向く。すると、リィナは手に持っていた本の表紙を見せて来た。

 そこには、前代国王の名前がしっかりと刻まれていた。


「お父様は、見つけていたの。その果実を」

「本気で言ってるのか? 冗談じゃなくて?」

「お父様が冒険好きなのは事実だし、お母様が証明している。そして、この本に乗っている冒険譚のいくつかをお母様は実際に体験しているらしいわ。お父様と一緒にね。でも、もちろん中にはお母様が一緒に行かなかったものもある。そのうちのひとつが、その果実についての冒険なのよ」


 凄いでしょ、と得意げに笑う。

 含みの無い笑みを見て、リィナが外の世界に憧れ続けていた理由を思い出す。


「私、それを見つけるわ。この本によれば、お父様は結局それを手に入れられなかった。どうしても取れない場所にあったのよ。それを、今度は私がとって来るの。お父様の見たことが無い景色を、成し得たことのないことを達成する。……お母様の怪我の治癒と私の念願、ふたつとも叶って一石二鳥だと思わない?」

「まあ、上手くいったらな」

「当然上手くいかせるに決まってるでしょ?」

「ひとりでか?」

「それこそあり得ないわよ。ねえ、リネル」


 リィナが浮かべたのは、挑戦的な笑みだった。これから見る景色を楽しみにするようなその笑みに、もう迷いも弱さも見えなかった。


「私たちでその果実を見つけましょう。そしてお母様を救って、こう呼ばれるようになるの」


 それはトキめきを覚えた乙女のような、夢を語る少女のような。そんな、空を見上げて放つ、楽しげな声。


「エルフの英雄、って。ね? 素敵だと思わない?」


 はっとする。

 呼ばれるようになる、か。


 もう呼ばれているって言ったら、リィナはどんな顔をするだろうか。認めないだろうか。それとも、口では色々言いながらも喜ぶのだろうか。

 いや、違うだろう。


 リィナならこう言うのだ。

 誰かに言われてなるのが英雄じゃない。自分で掴み取り、英雄になるのよ!


 実にリィナが言いそうなセリフだ。リィナの声で想像するのがあまりに簡単だった。


「そうと決まればさっさと冒険に出かけるわよ! もう私たちを止める人はいないもの!」

「いや、リーヴァは生きてて……」

「今は誰も何も言えないって意味よ!」

「まあそうかもしれないけど。どうせレイカが止めるぞ?」

「あの子はごり押せば何とか出来るわよ!」

「ひでぇ言われようだぁ」


 実際そんな気がするから何とも言えない。


「でも、どこにあるんだ? 目的地も分からず探し回るなんてことは流石に無謀だぞ?」

「そんなことは私だって分かってるわよ! でも大丈夫! ここにヒントがあったからね!」

「ヒント? ああでも、見つけたってことは場所は分かってるわけだもんな」

「ええ! だからリネル、まず行く場所は決まったわよ!」

「まず? どういうことだ?」


 何かを経由しなくてはいけないのだろうか。

 そんな疑問を抱いた俺に、リィナは堂々と言い放つ。


「リオネルのところよ!」

 今タイトル見返したら機動戦士ガンダムのタイトルみたいでしたね。え、そこまで似てないって? 雰囲気だけでも似てれば似てるでいいんです。

 そのくらいガンダムが好きな私は半年くらい前に見返したばかりのはずのガンダムOOをまた1から見ているという。私何やってるんだろ。


 それでは!

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