かくれんぼ
どうもシファニーです! 今日も今日とて独り籠って小説を書いていた私。ついに曜日感覚が狂って来たかと思えば毎日投稿しているおかげで実はそんなことないという。今日は水曜日ですね。
第88部、第2章第42話『かくれんぼ』です。どうぞ!
レイカの言葉に導かれ、俺はリィナを探すためシンラ・プライドを見て回っていた。
階層が多いうえに複雑で、数年ぶりに来ると造りをほとんど覚えていなかった。
そうは言っても心当たりはいくつかあり、最初にリィナの部屋、次に図書館を探したのだが、どちらも空振りだった。まあ分かってはいた。ひとりにして、と言ったリィナがそんな分かりやすい場所にいるわけはない。
ひとりにしてと言えば本気でひとりになろうとする。本心で寂しがっていたとしても、言葉通りに行動する。
そんな、頑固で不器用な子だ。でも、そこが魅力でもある。どれだけ自分を追い詰めてでも有言実行する。並大抵の精神力で出来ることじゃない。
ただこと今回に限ってはその行動力が厄介としか言いようがない。聞き込みし、実際に見て回って探して見てもどこにも見つからない。怒られるかもしれないと思いながら神林弓のあった場所にも行ったが、そこでもなかった。
「リィナ、本当にどこ行ったんだよ……まさか外じゃないだろうな?」
これでヒセの所に戻ったなんてことがあったらいよいよ面倒くさい。と言うか、1度疑い始めるとその可能性が過ぎり続けてしまう。かなりの距離があるのにそっちも空振りで終わったら最悪だ。
最悪何度も行き来することだけは避けたいし、シンラ・カクを徹底的に探しつくす必要がある。
シンラ・プライドはあらかた探し終え、俺はシンラ・カクの街に出る。
しっかりと見て回るのは祝賀会以降初めてとなる。懐かしい雰囲気だ。
相も変わらずざわついてはいる。リーヴァの現状を知った今となっては、これらが根も葉もない噂によるものだなんて口が裂けても言えなかった。
街中を見渡す。何人かは、きっと俺のことに気付いている。背丈も顔つきも変わったが、俺をリネルだと分かるエルフは分かるだろう。それでも誰も聞いてこないのはそれがエルフなりの気づかいだからなのだろうか。
それとも、真実を知りたくないという、逃避なのだろうか。
分からないが、分からなくともやるべきことは変わらない。もし街の方に出ているのなら、それこそ俺よりも顔も名前も知れていたはずのリィナ。見かけたエルフがいるはずだろう。
聞き込みをしようと思って人を探していると……見覚えのあるふたり組が見えた。
レオンとロイラ。俺をこの街に連れてきた張本人で、出会ったときは氷を運ぶ仕事をしていた。
そう言えば、リィナが壊した馬車はちゃんと直してもらえたのだろうか。謝罪と感謝もかねて、声をかけてみるのもいいかもしれない。
少しあった距離を詰め、名前を呼んでみることにした。
「レオン、ロイラ、今いいか?」
「え? お、おお! リネル殿下じゃないか! 久しぶりだなあ!」
「うわ、背高くなったなぁ! 俺なんてそろそろ越されちゃうんじゃないか?」
「ああ久しぶり。ふたりとも元気そうで安心した」
相変わらずの好青年っぷり。流石はエルフ、どれだけ年をとっても老けた様子はない。
初めて会ったときは大きかった身長差も、もうほとんど埋まっていた。
「元気なのはリネル殿下とリィナ殿下のおかげだろ? お礼を言おうと思ってたのに急にシンラ・カクを出て行くって聞いて、言えず仕舞いだったんだよ。リィナ殿下には一応行ったんだけどな」
「そうそう。改めて、ここを守ってくれてありがとうな。まあ? リネル殿下をここに連れてきた俺たちも称賛ものだと思うけどな?」
「それな!」
なんて言いながら、ふたりは楽しげに笑う。
街の雰囲気なんて吹き飛ばすような豪快な笑い声に俺までつられて頬が緩む。
「そう言えば、その殿下ってのはやめてくれよ。俺はまだ王家に入ったわけじゃないんだから」
「いやいや、親しき仲にも礼儀あり、節度あってこそだからな」
「なんて話をするんなら敬語を使うべきなんだろうけど……そこはまあ、許してくれよな」
「まあ、そういうことなら。もちろん好きにしてくれていい」
集団意識が強いエルフと言えど王族との線引きはちゃんと引くものらしい。まあそりゃそうだよな。そうでなければ王族なんて立場に意味は無くなる。このふたりですら節度って言葉を使うんなら、きっとそれは共通意識なんだろうな。
「にしいても、英雄とこうしてまた話せるなんてな。てっきり、もう殿上人になっちまって、俺たちになんて興味無いと思ってたぞ」
「まさか。ふたりに拾ってもらわなきゃ死んでいたかもしれないんだ。それに、8年前、リィナを俺のところまで運んできてくれたのはふたりが使ってた風林車だろ? 色々と助けられてるからな」
「お、それはいいことを聞いたな。俺たち、英雄を助けたらしいぞ!」
「らしいなレオン! 自慢できるんじゃないか?」
「ああ、存分に自慢してくれ。……あああと、風林車はちゃんと直してもらえたか? ちょっと気になってたんだ」
世間話もそこそこに、リィナの探索もあるので本題に誘導する。本当はもっと話してみたいこともある。エルフについては、まだまだ俺も知らないことが多い。
けど、今はリィナが優先だ。
「ん? ああ、あの後すぐにな」
「今でも元気に動いてるぜ! 氷運びに物資運搬。あああとは開拓隊がたまに借りてって雪山に行ったりもするな」
「風林車は数が少なくて貴重だから、何も俺たちだけのものってわけでもないしな」
「そうだったのか?」
「まあ、みんなそんなに使わないから、実質俺たちのだけど」
「それは知らなかったな。でも、使えてるならよかった。リィナが壊しちゃったし、謝りたいと思ってたんだ」
「いいっていいって、俺たちの仕事道具くらい、みんなの危機に比べればずっと安いもんよ」
「そうそう。って、そう言えばそのリィナ殿下はどこなんだ? リネル殿下が返って来たってことは、いるんだろ?」
「あ、ああそれは……絶賛迷子でな。探してる」
ということはふたりは知らないのだろう。
「そうなのか? せっかくならシンラ・アースをお見せしようと思ってたのに」
「シンラ・アース? ……ああ、あのドームか。それがどうかしたのか?」
シンラ・カクにいた頃、リィナが面倒を見ていた植物園みたいなもの。紅茶を主に果実や花などシンラ・カクでは生息できないものを、リィナの魔法なんかを使って管理していた。
そう言えば、その管理はどうなったんだったか。
「いやな、目の前に出来た穴は埋めたし」
「リアサさんの協力もあってみんなすくすく育ってるんだよ」
「それを見てもらいたかったんだけどな。ほら、こんな時だからこそ、元気出して欲しいだろ?」
「……そうだな。俺も、見かけたら声をかけるよ」
こんな時、か。
レオンは濁したが、リーヴァのことを言っているんだろう。
確かに、あれだけ植物が好きだったリィナだ。見れば喜ぶかもしれない、って――
「そうか! すっかり忘れてた!」
「うおっ、どうしたんだ?」
「な、何か急ぎの用か?」
「いやいやそうじゃない。リィナの居場所分かったんだよ。ふたりとも、ありがとな!」
「お、おう?」
「どういたしまして?」
ふたりは首をかしげているが、説明している暇はない。
そうだ、そうだった。リィナが大好きな場所があったじゃないか。すっかり忘れていた。
と言うか、いそうな場所の第一候補だったから、すっかり頭から抜けていた。部屋や図書館にいない時点でそこもないだろうと除外していた。
シンラ・アース。
幼い頃のリィナが、唯一自分をさらけ出し、心安らげた場所。いるとしたら、そこ以外にないだろう。
前書きで今日は水曜日ですねと言ったな、あれは嘘だ。ってことで火曜日です。ゴミ出しは私の使命なのでちゃんと曜日は把握してます。
そんな私ですが新作作りに熱中しすぎているんですよね。新人賞に出す用の作品なんですけどこれがまあ楽しいんです。こういったサイトに投稿するのは連載を意識してますが、新人賞用は本にすることを意識します。だから10万字以上の全体像を見て形を整えるんですよね。その分作業は大変、難しいことも多くなりますが、矛盾や不明点が無くなり完成された作品を読み直すのは本当に楽しんです。
まあ、そう言う作品は大抵火を置いて読み直すと誤字脱字ばっかり、文法がおかしい、面白くない。って思えちゃうので勢いあるうちに書き上げてさっさと出して結果待ちになりましょう。決して日を開けて読み直してはいけません。ドツボにハマります。
それでは!