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帰還、それから

 どうもシファニーです! 新作はかどってますよ! え、この作品? ……が、頑張ってますよ?


 第85部、第2章第39話『帰還、それから』です。どうぞ!

 シンラ・カクにたどり着くと、すぐにソワソワとした雰囲気が伝わって来た。

 みんな仕事に手が付かず、上の空のような様子。もう、リーヴァの話が広まっているのだろうか。


 だが、それを確かめるために足を止める暇はない。着地はしたが、速足にシンラ・プライドへと向かい、そのまま昇降機に乗り込んだ。


「……ここも、全然変わらないわね」

「そうですね。変わりません。昨日まで、おふたりが旅立った時と何ら変わらぬ生活を送っていました」


 昇る最中、出来た間を埋めるようにリィナが言えば、リアサがそれに応じる。ふたりからは決して悲しさや怒りの気配は感じない。けれど、緊張感を身に纏っているのは分かる。リアサでさえ、背筋を正しているようだった。


 なら、今俺の胸を掻き立てるのは何なのだろうか。

 緊張感、ではない。でも、焦燥や苦痛とも違う。

 後悔、とも、少し違う気がする。


 味わったことのないぐちゃぐちゃとした感情が、体の中をはい回って気持ちが悪かった。


 それから最上階にたどり着き、リーヴァの部屋まで向かう。扉の前には、ライラが立っていた。


「あ……リィナ殿下、リネル殿下、おふたりとも、お久しぶりでございます」

「ええ、ライラも久しぶり。元気そうね」

「おかげさまでございます」


 ライラも、変わらぬ外見で立っていた。疲れた様子も特にない。本当に、突然のことだったのだろうということだけが分かった。

 リィナと何ともなしにやり取りするのを、俺は遠巻きに眺めることしか出来なかった。


「お母様は中に?」

「はい。今はローラ様とレイカが」

「そう。入るけど、いいわよね?」


 ライラは何も言わずに目を伏せた。

 もしかしたら、ローラには止められているのかもしれない。

 リィナも何も言わずにローラを見た。ここからじゃ見えないが、笑みを浮かべて感謝を伝えているのだろう。


 リィナは、小さく息を飲んだのち部屋の中へと踏み入った。


 部屋の中は淡い輝きに包まれていた。明るすぎず、暗すぎない。リーヴァが寝やすいようにしているのだろう。

 部屋の中に視線を巡らすと、ベッドのすぐそばにローラが座り、それを少し離れたところからレイカが見守っているようだった。ふたりともこちらに背を向けていて、入室に気付いた様子はない。

 振り返ると、リアサは入って来ていなかった。俺も出ていくべきかと考えたが、少し悩んだ末、止める。俺には、リーヴァの現状と向き合う責任があるような気がした。

 

 こつ、と、リィナが足跡を立てた。

 それに反応するようにレイカが振り返る。ローラは、リーヴァに手をかざしたまま動かない。


「あ、リィナ殿下。それに、リネル殿下も……」


 俺たちを見つけたレイカは、右手を伸ばしかけ、すぐに止めた。それを引き戻して拳を握り、不安気に左手で撫でる。


「そ、その、今は検診中で、リーヴァ殿下はお休みになられております。ですので、また期を改めて――」

「ローラ、触ったりしなきゃいいでしょ?」

「――あ、ああっ、リィナ殿下!」


 レイカが止めようとするのを、リィナはするりと躱してベッドに身を寄せる。ローラが返事しなかったのを見て、校庭と受け取ったのだろう。

 俺も、レイカの隣まで進む。

 やがてリィナからこちらに移った視線。レイカは、どこか揺らいだ視線で俺を見た後、ゆっくりとぎこちない笑顔を浮かべた。

 その視線にどこか違和感を覚えたのは、いつの間にか、俺の背丈がレイカを越えていたから。ずっとレイカの顔を見上げていたのに、今じゃ、レイカが俺を見上げている。


「その、お久しぶりです。しばらく見ないうちに、背が大きく成られましたね」


 小さな声でそう言われ、俺は頷くことしか出来なかった。

 レイカも、変わらぬ顔をしている。背は変わらず、髪も定期的に整えているのか大きく変わった点はない。

 8年も前に、1カ月も一緒にいたわけでもないはずなのに、どうしてここまで鮮明に覚えているんだろう。それとも、記憶と同じ過ぎて、覚えていると勘違いしているのだろうか。

 その表情の陰りが鮮明に見えたのは、レイカの顔をよく覚えていたからだと思う。

 その陰りを必死に隠そうとしているのも、分からなかったはずだ。


 息を飲み、ベッドの方に目を向ける。ちょうど、ローラが翳していた手から出ていた光が収まるところだった。


「……悪化したりはしていないみたいですね~。ですが、まだまだ安静にしていたほうがいいです~」

「そう。……回復の見込みは、あるのよね?」


 ここからではリーヴァの顔は良く見えない。けれど、遠目ではどこか変わった様子があるわけでもなく、静かに寝ているだけの様だ。わずかに聞こえる息遣いも一定のリズムを刻んでいる。

 だから、ローラの言葉を少しだけ、信じられなかった。


 信じたくなかった、の方が正しかもしれない。


「いえ、ないですね~。少なくとも自然治癒は見込めないです~。肉体の回復機能を大幅に上回る傷です~」

「っ!? ど、どうしてそんなにあっけらかんと言えるのよ。それってつもり、お母様はもう……」


 心臓が、握り締められるような圧迫感に包まれた。リィナが零した言葉の続きなんて、考えるまでもなく分かった。すぐにローラの否定が入らなかった時点で、事実なのだ。


「待ちなさいよ。リアサは命に別状はないって」

「ええ、ありませんよ~。現時点では、まったく」

「……じゃあ、どれくらい、なのよ」


 リィナは、抑えつけるような声で言った。

 ただそれは、ローラを責めているというよりは、焦る気持ちを静めようとしているように見えた。


「10年と少しだと思われます~。その間、今回みたいに倒れてしまうこともある華とは思いますが、基本的には日常生活に支障はないはずですよ~。なので安心――」

「安心できると、本気で思ってるの?」


 怒気の含まれた声で言って、リィナはローラを睨みつける。


「……少なからず、リィナ殿下が一人前になられるまでの時間はあると思いますよ~」

「っ、殿下って……ローラあんた、普段そんな風に呼ばないでしょ」

「はい~。ですが……遅かれ早かれ、自覚してもらうほかないのです~」


 普段は柔らかい印象を与え、心を休めるはずの助長な語尾も、今はリィナの苛立ちを加速させるだけだった。


「何もうお母様が死ぬみたいな話をしているの? 何も方法がない、なんて言わせないわ。そもそも、何が原因なのか、私は聞いた覚えがないわね」

「リィナ殿下、それは――」

「私はローラに聞いてるの。レイカは口出しをしないで」

「っ、リィナ殿下……」


 また伸ばしかけた手を、レイカは力なくしまい込む。そんな仕草が見ていられなくて何か言おうとして、リィナの視線がこちらを射抜いた。

 何も言うな。そう、強く訴えてきていた。


「ねえ、ローラ。言い辛いことでも何でも言いなさい」

「……リーヴァ殿下のこの症状は、8年前、魔人が攻め込んで来た頃から始まっていたのです。魔人の放ったあの魔法。肉体に遺伝子レベルの傷を負わせるものだったのです。リーヴァ殿下は直前に防御魔法を発動しましたが、それでもほとんど直に食らっていたのです。ずっと生活に支障はなかったのですが、今日特別」

「それを隠していた理由は、聞くまでもないわね」

「ご想像にお任せするです~」


 最後には再び語尾が間延びするようになり、普段の微笑みを取り戻していた。


 けれど、その場には重たい雰囲気が漂う。

 NolaPVついたって話を一応。


 日夜小説を書き続ける私にとってゲームは最高の息抜きです。ただたまに小説にかける時間とゲームにかける時間が逆転するんですよね……どうにかしたいところです。


 それでは!

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