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巨蛇

 どうもシファニーです! ソシャゲの原神が新バージョンです。最近やってなかったですが、ちょっと開いてみました。えーっと、爆死です。


 第82部、第2章第36話『巨蛇』です。どうぞ!

「調子のいい目してるな、おい。そんなに見て、何か面白いもんでもついてるのか?」


 問いかけるが蛇は返事をしない。当然と言えば当然だ。こいつには喋るような脳どころか人語を理解する脳すらないだろうから。


「いいぞ、本気で相手してやる本気で相手してやる」


 背中の指に手を伸ばす。

 神器。神が創生せし最強の武器。本気を出すのなら、使わない手はないだろう。

 握ると同時、にわかに力が流れ込んでくるのが分かる。


「ん? ……やっぱり、真に選ばれし者じゃないと力を発揮しきれないのか」


 苦虫をかみつぶしたような感覚だ。最強の力が手元にあるのに、自分は使いこなすことが出来ていない。

 どころか、お前は選ばれし者じゃないと堂々と告げられているんだ。ムカつきもする。


 だが、今すぐ自分に合う神器を見つけるなんて無理な話だ。どっちにしたってこれで頑張るしかない。


「行くぞ! 蛇!」


 宙を蹴って動き出すと同時、それを待っていたかのように蛇も動き出す。

 巻いたとぐろをバネにして、勢いよくこちらに顔を向かわせてくる。


「《エア・ブースト》ッ!」


 右側に跳び、向かって来た口を躱す。すれ違い、後方に流れた蛇の顔に振り返る。


「《エア・シュート》ッ!」


 その後頭部目掛けて矢を放つ。

 空気を切る音と同時に突き進む矢は、迷わず蛇の皮膚に触れるが、弾かれた。


「硬いッ! っ!?」


 蛇が胴体の半ば程からうねり、向かってくる。

 どちらかの先端からしか攻撃が来ないと油断していたため食らうことになるが、とっさに後ろに向けて風魔法を使ったことで軽減する。


 なるほど、どうやら全身を鞭のように使えるらしい。ただ長くて速いだけだと思ったが、トリッキーなこともやって来るらしい。ますます厄介だ。

 硬いうろこにしなやかな体。ただでさえ攻撃を受けにくい肉弾武器を持つ上にあの速度と幅の利く戦闘スタイル? こいつがこの森でここまで大きく成長した理由がよく分かる。 

 種族からして強そうだが、固体としても優秀なんだろう。砂漠地帯の砂の王と同じ。特定地域内の主的な存在。


「つまり、お前を倒せば敵なしってことなんだろ!」


 見上げる。

 飛び跳ねた蛇は、浮き上がった体の勢いがようやく死に、落ちてくるところだ。もちろん落下中も俺目掛けて首を伸ばし続けている。執念深さは賞賛に値する。


 大きく開かれた口が向かってくる。一直線に落下してきて、無理に躱そうとすれば体にもかなりの負荷が掛かるだろう。すでに、寸前まで迫っている。

 だが、よく言うじゃないか。ピンチはチャンス、なんて。


「《リヴェラル・トライ・リリース》ッ!」


 全魔力の半分ほどを籠めた一撃。それも鱗じゃなくて口内だ。まともに食らえばこの巨大蛇とは言えただでは済まないはずだ。


 届く音が葉を揺らし、森全体がざわつく。

 葉擦れの音に包まれながら蛇に向かった3本の矢は、弧を描いて頭へと収束する。その直前、蛇は口を閉じて体を捻る。矢は頭部に向かわず、付け根あたりに激突した。一瞬阻まれるように輝いた後、勢いを逸らされ、天高く舞い上がった。


「これも凌ぐか!」


 身のこなしだけじゃない。判断力もずば抜けている。

 体の固い部分に、それも添わせるように当てることで勢いを逃した。それもとっさに、だ。無理に避けるより、当たっても問題ない当て方にすることで被害を最小限にする。

 実際、蛇の皮膚は少し抉れて肉が見えるが、決して致命傷ではない。


「慣れてるな、こいつ!」


 今までにも俺たち以外のエルフとの交戦経験があるのだろうか。明らかに、分かっている。


 俺は今の一撃で致命傷を与えてやる算段でいた。だが、今のが通じないとなれば決定打が失われたも同然なんだ。すでに魔力は半分消費している。


「クソッ! やっぱり遠距離攻撃は性に合わない!」


 魔術師になったときも思ったが、俺は遠くから魔力を消費して攻撃する、ってのがどうにも苦手だ。

 そんなことするくらいだったら近距離で戦って、身を削ってでも泥臭く戦う方がよっぽど似合っている。

 ……いや? 今ならあるじゃないか。そんな泥臭い戦いをさせてくれるものが。


 傷を負った蛇は、いったん俺から離れた場所に着地し、体勢を立て直すように大きく迂回した。

 それを見て、俺はリィナが向かった方向に急ぐ。

 魔力消費は気にする必要はない。もう、大袈裟な魔法を使う予定はないからな。


 向かい出してすぐどこにいるのかが分かった。

 目を凝らすまでもなく幹に大きな傷をつけた木があったからだ。その足元に、リィナ、そしてヒセがいた。


「リィナ!」

「リネル!? 蛇は!?」

「時間を稼いだ! それよりそっちはどうだ!」

「い、一応命に別状はないみたいよ。でも、結構傷が……ど、どうすれば。私、治癒魔法なんて使えないわよ!?」


 近づいてみる。

 ヒセはどうやら上手く受け身を取ったらしい。幹に着いた傷からして全身ボロボロでもおかしくなかったが、背中から血を流す以外目だった傷は見えない。意識も保っているらしく、通路ながらも目を開いていた。

 その眼は、やがてこちらを見る。


「落ち着け。家に帰れば調合した治癒薬がある。場所、教えてあるよな?」

「え、ええ……で、でもリネルはどうするのよ!」

「ひとりで何とかして見せる。倒せなくたって出来ることはある」

「そ、そんなの駄目よ! 私が言いだしたことだもの! 残るなら、私が――」

「馬鹿言うな!」

「っ!?」


 リィナは肩を震わせて目を見開いた。ヒセも、驚いたように肩を揺らす。


「何度無茶すれば気が済むんだよ! リィナが残って、それで傷だらけになって俺が喜ぶとでも思ってるのか!」

「そ、それは……でも、責任は私にあるし、それに、それはリネルだって同じことで」


 きっと負い目があるのだろう。申し訳なさそうに俯いて、呟くようにリィナは言う。後悔のまみれた声は控えめだったが、叩きつけるように吐き出されていた。


 別に、ヒセはそこまで大怪我を負ったわけでもない。そんな状態でもこれだけ後悔するのなら、初めから大きな口なんて叩かなければいいものを、と思ってしまうことくらいは許して欲しい。

 そしてその代わり、そんな弱気を許してやるのだ。


「馬鹿言うな! 俺はリィナよりもずっと強いんだよ! リィナに出来ないことが俺に出来る。忘れるんじゃない、俺はまだ、リィナの師匠なんだよ」


 リィナははっとした様子でこちらを見上げる。

 そこに浮かんだ不安気な顔を見て、似合わないなと思ってしまった。だから普段通りを取り戻してほしくて、残しておいた本音を言う。


「それに、リィナを置いて逃げたら格好付かないだろ? たまには俺に見せ場をくれよ」

「リネル……ええ。ええ、そうね。たまには格好つけてもらわないと、王子としての威厳も失われるってものだわ! 私はヒセの傷を見る。だからリネル、その間時間を稼ぎなさい!」

「ああ。任せろ! ヒセも、リィナの言うことちゃんと聞けよ?」


 リィナはヒセの体を抱き上げる。魔剣は右手に力なく握られていた。

 抱き上げられたことで視線が上がったヒセは、横に目を向けながら頷いた。


「ん、すぐ戻る。美味しいもの、くれるんでしょ?」

「当然だ。だが、傷があるなら無理しなくてもいいぞ」


 言うと、ヒセは首を横に振った。嫌だ、と言いたいらしい。


「このくらいの傷じゃ、本当は気にしない。でも、薬塗れって言うから、塗る」

「そうか。俺たちの言うことばっかり聞いてもらって悪いな」

「ん。だから代わりに、美味しいものもらう」

「任せて置け。とっておきの物を準備してあるからな」

「……楽しみ」


 小さく微笑み、ヒセは返事する。


 遠くの方から、蛇が木々を倒す音が聞こえてくる。これ以上話をする余裕はないだろう。リィナもそれを分かってか、ひとつ頷いてから飛び立とうとする。だが、それをヒセが直前で止めた。


「ヒセ? どうかしたの?」

「ん。……リネル、これ、貸したげる」

「これは……」

「リネルなら使える、んでしょ?」


 ヒセが差しだしてきたのは漆黒の剣、魔剣。

 かつて俺を苦しめ、死まで追い詰めた剣。


 受け取りながら、ヒセを見つめる。ヒセは表情ひとつ変えなかったけど、代わりに頼もしく頷いた。


「大丈夫。今度こそ、上手くやって見せて」

「……ああ、必ず」

「ね、もういいわよね? ヒセ、行くわよ」

「ん。じゃあリネル、生きて」


 生きて、か。

 いつか、ヒセに言った言葉だったのを思い出す。


 まさか、あの時とまるっきり逆の状況になるとはな。

 口元に自然と浮かんだ笑みは、楽しげだっただろうなと、そう思えた。


「もちろんだ」

 No(以下略


 今日は機械音痴の友人から相談を受け、それに答えていたらこんな時間に。ちょっと更新が遅くなってしまいましたがお許しを。

 と言うか、普段3000字書かないようにって心がけてるのに4000字近くまで書いちゃったの何ですか? 正直2話に分けてもいいボリュームなんですけど。書けるのはいいことでしょうけど書きすぎるのも欠点ですよね……。

 と言ってもやめる気は無いわけですが。

 

 それでは!

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