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思い出した使命

 どうもシファニーです! なんか今日また一段と寒かった気がします。昨日までと同じ格好で外に出たら凍えるかと思いましたよ。いえまあ、私は普段外に出ないので知らないんですけど。


 第81部、第2章第35話『思い出した使命』です。どうぞ!

 採集の最中、ヒセの耳が大きく揺れるのが見えた。

 ちょうど、木の高い位置になった木の実に手を伸ばしているところだった。


 ヒセは、首を巡らせた。


「ヒセ? どうかしたのか?」

「ん……おっきな魔物、いる」

「おっきな……ああ、あの蛇か。そう言えば、テリトリーに近いかもな」

「強いの?」

「砂の王と同じかそれ以上だろうな。無用な戦いは避けたいし、ここはいったん戻るとしよう。リィナ!」


 名前を呼びながら、リィナを探す。

 木のもっと高いところ。エア・フライトを使ってようやく登れる場所の木の実を取りに言っていたリィナが、魔法を解除して落下、直前で再発動をして着地して合流した。


「なに? 魔物でも出たの?」

「蛇だよ。近くにいるっぽい。出会うと面倒だし、戻るぞ」

「ああ、そういう。分かったわ、すぐに……いえ、やっぱり戻らなくてもいいんじゃない?」

「え? どうしてだ?」


 問いかけると、リィナは籠を下ろして辺りを見渡す。


「今の私たちなら倒せるんじゃないの? あのデカモグラだって倒したんだし」

「何言ってるんだ。あれだって、ちょっと運が良かっただけだ。慢心するべきじゃない。それに、砂の王は慣れてない土地で戦ってたんだ。なんであんなところにいるのか、俺にだって分からない。それと比べて蛇はここを縄張りにしてる。本気で戦って来るんだ。相手しないに越したことは無い」

「あらあら、なに、ビビってるの?」


 リィナが挑発的な笑みを浮かべて聞いてくる。


「いや、そういうわけじゃない」

「じゃあ何よ。私たちは十分な力を付けた。そして、ヒセもいるのよ? 何も怖がることは無いでしょ?」

「……」


 不意に思い出したのは、出会って間もない頃のリィナの姿。

 ひとりで何でもできるようなことを言い、実際そんな風に振る舞った。けれど自分が力不足だったことに気付き、努力することを決めた姿。

 今、リィナは力を付け、強敵を倒したことで再び過去のリィナに戻ろうとしている。過剰な自信を付けている。


 もちろん、自信が付くのはいいことだ。けど、それも行き過ぎればただの無鉄砲になる。リィナには、それが分かるようになったと、思っていたのだが。


 リィナは魔力を籠めながら周囲を警戒し、それに触発されてかヒセも剣に手を伸ばした。すでに戦闘態勢は整っている。いつでも戦える状態だ。

 まるで、昔の俺を見るようだ。強くなるためにどんな危険も顧みず、ただただ真っ直ぐ突き進むだけ。自分が犠牲になるだなんて考えもしない無謀な挑戦の数々が頭をよぎる。

 何度も生き返れる俺だからよかったが、ふたりはそうじゃない。たったひとつの命なんだ。もっと大切にするべきなんじゃないか?


 ただ、そんな俺の問いを掻き消すように鳴り響いた地面の揺れる音が、すべてを飲み込んだ。


「あら、本当に来たじゃない」

「ん……美味しい?」

「さあ。でも、大きいから食べる部分は沢山あると思うわよ!」


 今ならまだ逃げ切れるはずだ。この前だって逃げ切れた。ふたりを抱えるのは難しいかもしれないが、何とかしてみせる。

 なんたってこっちは連戦になる。まともな準備もしていない。この後、ヒセに剣を教えるって約束もしたんだ。リィナとの結婚だって、まだなのに――


 ――いや、違うだろ。

 俺は何を当たり前の幸せを望もうとしてるんだ?

 違う、そうじゃない。俺の使命は、俺が幸せになる事じゃない。

 俺を、そしてもっと多くの人たちを苦しめた魔族を倒すことじゃないか。ゆくゆくは魔王を倒し、滅ぼすことのはずだろう。


 ああ、そうだ、そうじゃないか。俺は何を勘違いしてたんだ。


 俺はもう、戦うための兵器じゃないか。


 蛇の巨体が木々を掻き分けてくるのが見えた。森の巨木を次々と砕き、倒して突き進んでくる。あの巨体が俺たち3人のために暴れていると考えると、少し滑稽だ。食ったところで腹も満ちないだろうに。

 それ以前に、食べることなんて叶わない。自分から死に向かう姿は、あまりにも哀れだった。


「さあ、かかって――って、リネル?」

「リネル、どした?」


 前へ出る。このふたりに任せるわけにはいかない。

 端から負けるつもりはないが、犠牲になるなら俺ひとりでいい。だって俺は不死身の戦士だ。何度だって蘇り、指名のために鍛え直す。死んで得た教訓は、次の人生で活かせるのだ。


「さあ、俺を強くするための生贄になれ。お前の全部を、俺に刻ませろ!」


 両手の拳に魔力が籠る。

 3度目の人生の頃からのくせだった。拳闘士としての人生を歩んでいたせいで、力むときにまず拳に魔力を込めてしまう。強敵を見たら真っ先に突っ込んで、ボロボロになるまで戦うのだ。

 そうやって鍛えた日々のことは、今でも心に刻まれている。体の傷は受け継げないが、心の傷ならずっと残り続ける。そして、それが俺の力になる。


 魔力が拳に始まり全身に巡り、奮い立たせる。

 久しぶりの感覚だった。きっと、俺は今日まで全力を出していなかったんだ。無用に怯えていた。温かすぎるエルフの環境に甘えていた。

 俺の命なんてどうなったもいい。なら、全身全霊で挑み、命を賭して力を得る。


 そして、獲物が顔を出す。


 相変わらずどでかい図体をしている。ちょっとやそっとの傷じゃあビクともしないだろう。そもそも俺の今の拳でダメージを与えられるかどうか。だが、通らないならそれはそれでよし。

 また鍛え直して立ち向かえばいいだけの話。


 巨木を倒し、蛇がその大きな口をめいっぱいに開いた。そして、そのまま俺たちを丸のみしようと突撃してくる。


 俺は、その場で踏み切る。

 一気に足元まで入り込み、地面を蹴って横に跳ぶ。そして木の腹を蹴って三角跳び。蛇の頭上に到達する。

 殴りつけても良かったが、ちょうど足に力を込めたところだ。そのままの勢いを、全力で叩きつける。


「しゃらああぁぁっ!」


 頭上に足を叩きつける。

 骨を響かす振動が、厚い皮膚を通して返ってくる。激痛が脳まで震わす。耳鳴りがした。魔力の弾ける音がする。


 ずんっ、と重く空気を震わす音が響き、蛇が開いた口を閉じて頭が下がる。


「流石に地面に叩きつけられる、なんてことはないか。っと」


 蛇は、勢いよく頭を抑えつけられたことで動きを止め、体を捻って俺を見上げた。長い舌が覗き、甲高い咆哮を上げる。

 巨体を震わせる。それをバネにして体を浮かせ、上空にいる俺へと襲い掛かる。

 宙を蹴って上昇し、間一髪で躱す。風属性魔法を使えた良かった。

 そう思うのも束の間。蛇は更に巨体を震わせてより高く飛び上がる。その上昇速度は、俺が上昇するよりも速かった。


「《リヴェラル・ノヴァ》ッ!」


 爆風が鳴り響く。その風は、飛び上がった蛇の体を押しのけ、横に倒す。長い舌が足に届く寸前のことだった。

 爆風の発生源に目を向ける。そこには、魔法を放った余韻を纏うリィナが宙に浮いていた。


「ちょっと! 勝手に突っ走ってるんじゃないわよ! 援護するから、私の邪魔しないように戦いなさい! ヒセ! 出番よ!」

「ん!」


 そんなリィナの足元を通り、ヒセが倒れた蛇に向かって駆け寄る。すでにマントは外し、剣は両手で握っていた。


 ヒセが飛びかかる。ちょうど蛇が体勢を整え、とぐろを巻きながら起き上がるところだった。

 ヒセの正面に蛇の顔が現れる。ヒセはとっさに剣を振るう。それは蛇の脳天へと吸い込まれるように向かい――


 直前、風を切るような速度で何かが横切り、ヒセの体を拭き飛ばした。

 一応剣の腹で防御したように見えたが、ヒセの小さな体は簡単に吹き飛ばされ、100メートル以上離れた巨木に激突し、粉塵を散らばらせた。

 よく見てみれば、蛇の巨体、その末尾に当たる部分が、とぐろを巻いたことで露になっていた。今まであの大きな頭から逃げるばかりで見たことは無かったが、固く、鋭い。どうやらヒセはあの部分に攻撃されたようだ。

 鞭のようにしならせることで破壊的な威力を出したようだ。


「ヒセ!」


 リィナが慌ててヒセの下へと向かうのを見て、俺は再び蛇を見据える。


 鋭い眼光が、赤く輝いて俺を見つめた。

 Nola(以下略


 バイトしろって言われちゃいました。今Web応募を終わらせたところです。基本引き籠りな私にバイトをしろとか親は何を考えてるんでしょうね。あ、社会貢献しろってことですか。ちゃんとしたこと考えてましたね。

 出来るだけのことをしてきます。得た資金はすべて本に捧げます!


 それでは!

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