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魔剣

 どうもシファニーです! 皆さん黒い剣は好きですか? 私は大好きです。あと、ちっちゃな女の子が明らかに身の丈に合わない剣を軽々と振り回したりするのも好きです。

 そう、ヒセちゃんは私の癖です。


 第75部、第2章第29話『魔剣』です。どうぞ!

「その剣は……」


 俺は、ヒセの握る剣を見て、先程まで感じていた威圧感の正体に気付いた。


 神器、魔剣。

 俺の持っている神林弓に匹敵する力を持つ、神の創生せし武器だ。

 18年以上前に遡れば、俺が扱っていた物。そして死に際、小さな獣人の少女に託したものだった。


「じゃあ、君は、あの時の……」


 蘇る前世の記憶。

 魔物の大群に襲われ、身動きの取れなくなった俺の前にボロボロの姿で現れた生まれて間もない獣人の少女。もしかしたら、灰色の髪だったかもしれない。血に染まって目で見た景色は、あまり覚えていなかった。

 そして、主であった俺の血さえ養分にして力を増し続けた魔剣を少女に手渡した。ノエルに話によれば、彼女こそ選ばれし者だ。正しい魔剣の貢献者。ありとあらゆる試練を引き寄せ、それを乗り越えさせて主を成長させる悪魔の様な武器。


 それこそが、彼女がひとり旅を続ける理由なのだろう。弱いものを置いていく理由なのだろう。


 誰かといれば巻き込んでしまうから。

 当時、魔剣を手にしていた時代の俺の孤独を、ヒセも感じているのなら。


 俺は、それを癒したい。

 恐怖に固まり、動けなかった体。けれど、気付けば足の震えは無くなり、強く握りしめた神林弓から確かに力が流れ込んでくるのを感じた。


「リネル! ヒセが!」

「ああ、分かってる!」


 すぐ左を見る。俺を庇うように少し前に出て、リィナが抱き着いて来ていた。そのことを忘れたまま、砂の王の一撃を受け止めたヒセを見て悲鳴を上げる。

 リィナだって必死になって声を荒げている。なら、その期待に応えなければいけない。そうだろう、俺。


 目の前で悲しむ女の子を助けたいなんて不純な動機で勇者になったんだ。その思い、最後間で真っ当しなきゃノエルに怒られてしまうというものだ。


「リィナ、援護頼む! 俺がヒセ狙いを引き付ける!」

「っ、分かったわ!」


 俺の声を聞いて、リィナはすぐさま体を離し、魔法を構える。

 自由になった体で地面を蹴り、俺は高く跳躍して弓を引く。


「食らいやがれ! 《エア・シューター》ッ!」


 ただ押し出すだけのエア・ブーストと違い、威力を増し、速度を増す一撃を放つこの魔法は、多くの魔力を消費する代わりにニケロイアのような強力な魔族の外骨格すら貫く。

 それなら、砂の王の肌を貫けない道理はない。


 矢を放つと同時、爆発音のようなものが響き渡り、ソニックムーブを引き起こす。

 強烈な風がリネルの髪を書き上げると同時、矢は目標へと命中していた。

 

 狙いすました1本の矢が、ヒセに向かって振り下ろされていた砂の王の手に触れ、掠める。そうして、腕の一部を抉り取った。

 矢の太さとでは比べ物にならない程の傷をつけた一撃は、その後地面にぶつかって地面を抉る。


 砂の王が巨体を捩らせた。

 振り下ろしていた腕を掲げ、苦痛のあまり咆哮を上げる。野太く、重圧的な叫びが鼓膜を震わした。


「ヒセ! 今だ!」

「っ、ん!」


 ヒセがこちらを見上げ、すぐさま返事をして駆け出す。

 砂の王は痛みに驚いているのか足元を見ていない。巨体の下に潜り込んだヒセの存在に気付いたのは、更なる痛みを味わってからだった。


「んっ!」


 ヒセの攻撃は、やはり型も構えもなっていなかった。

 けれど、獣人の少女が全力で魔剣を振り下ろす。その威力は絶大なものだ。

 地中から飛び出た砂の王、その腹部に向かって放たれた一撃は、砂の王に触れると同時、反発した余波によって周囲の地面に亀裂が走る。そして、俺でも分かるほどの魔力が溢れ出した。

 きっと、リィナにはもっと濃くはっきり見えているはずだ。


 その黒い刀身を赤く染めて来た、何百、何千という血肉によって力を増した、真っ赤な魔力が。


 赤の波動が、砂の王の肉を割く。

 蓄えられた脂肪が多いからか、骨までは届かなかったらしい。返り血を受けたヒセが赤く染まった。


 再び砂の王が暴れ出す。

 見たところかなり大きな傷になっていた。その上、深い。砂の王の全質量から見れば大したことは無いかもしれない。それでも、指先や足先を怪我したわけでも、皮膚が剥がれたわけでもない。

 腹部を抉られたのだ。その苦痛は尋常ではないはず。


 暴れまわる砂の王は、やがて両手を地面に突き刺し、掘るような動作を始めた。不利と悟って撤退を選んだのだろうか。

 普段ならその動作を数度繰り返すだけで地面に大きな穴が開き、目にも止まらぬ速さで逃げられていただろう。だが、今砂の王は右手を負傷している。思うように掘り進められず、逃げあぐねていた。


「リィナ! 地面を掘れないようにしてやれ!」

「で、でも、私の魔法じゃすぐに崩されちゃうわよ!」

「逆だ! 泥にしてやれ!」

「それって……え、ええ! 分かったわ! ヒセ、下がりなさい!」


 リィナの声を聞いて振り返ったリィナは、迷わず砂の王に背を向けてリィナの背後まで撤退する。

 何をしようとしているのか分かっていないだろうに、適切な判断をしている。


 それを確認してから、リィナが叫ぶ。


「《アクア・プリズム》ッ!」


 リィナが叫ぶと同時、砂の王の下半身を覆うように水の球体が出来上がった。

 それは地面に埋まった砂の王の下半身を包み込むように広がり、乾いた大地を一瞬にして潤していく。

 そして大量の水は決まった形の中で渦を巻き、地面の土をかき混ぜて行く。


 緩く脆くなった地面は反って掘り進むのが難しくなっていく。

 そもそも、砂の王の鋭い爪は硬い地面を貫くことに特化している。土を書き上げたり、どかしたりするのには適していないのだ。

 その上下半身が地面に取られてしまったため、身動きが取れなくなっている。必死に両手を振り回しているが、ますます抜けられなくなっていくだけ。


「ヒセ! リィナ! 一気に終わらせるぞ!」

「ええ!」

「ん!」


 あの巨体を貫いて、一撃で倒すだけの威力を籠める。


「俺の全魔力を受けやがれ! 《リヴェラル・トライ・リリース》ッ!」

「《リヴェラル・ノヴァ》ッ!」


 3本の矢が束となって突き進み、砂の王の顔の外骨格へとぶつかる。

 砂の王が一瞬仰け反り、それでも勢いが殺されない矢は、やがて外骨格を砕くが、貫通するには至らない。

 しかし、そこに追い打ちをかけるように暴風が吹き荒れた。砂の王の体は、乗除に小さな傷を蓄積していく。


「ヒセ!」

「《ファントム・レイ》」


 魔剣に魔力が籠り、黒色の光が放たれる。

 それは、光を染め上げる影の輝き。地面を踏みしめ、高く掲げられた剣が振り下ろされた時。黒い閃光が、質量を持って解き放たれる。


 砂の王は、頭上から一直線に切り裂かれていた。あたかも、その部分だけ丸ごとこの世界から消えてしまったかのように。

 まるで空間を断絶したようなその一撃は、砂の王が巨体であることなんて気にも留めず、容赦なく沈めた。


 地面に静かに降り立つ中、俺はその威力に驚愕する。

 今ヒセが使ったのは、暗黒属性の魔法だ。基本5属性から逸脱し、通常の修業では取得できないとされる派生属性の闇属性。それよりも強力な特殊属性だ。

 獣人が扱える属性ではないので、魔剣の力によって得た力なのかもしれない。


 砂の王の巨体が、轟音とともに地面に倒れ、ピクリとも動かなくなる。


 ヒセは、砂埃を振り払ってこちらを向いた。その手に握る黒い剣は赤く染まり、返り血を浴びた顔にも、べったりと赤いものがへばりついていた。


「これ、美味しいかな」

 さて、先日に引き続きNolaを使ってみているのですが。どうやら投稿機能もあるらしいですね。読者層がどうとかよく分かっていない中ですが、試しに投稿してみました。作者名は据え置きです。

 読者側として楽しむ上では、いいね以外に反応の種類があるのは嬉しい部分だったかもしれませんね。感動とかアツいとか。作者的にも具体的な反応を受け取りやすくなるのは良いかもです。ただ、やはり読者は少ないのかなぁ、と言った印象。

 結局投稿するならなろうが最強、ってことで。


 でも執筆がはかどるのは事実なので、作者としては嬉しい部分です。今日の所はこんな感じ。


 それでは!

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