リベンジ
どうもシファニーです! 昨日はすみませんでした。突然の腹痛に襲われ、座るのもやっとだったんです。現在同時投稿中のもう1作品は何とか仕上げましたか、2つは厳しくて……。ですが、今日から復活です! まだまだ頑張ります!
第68部、第2章第22話『リベンジ』です。どうぞ!
日の出と同時、俺たちは目覚めた。
ほとんど同時のタイミングで扉の開く音が聞こえる。
ちょうど正面の部屋、その扉の先に、少しだけ寝癖を付けた寝間着姿のリィナがいた。
「おはよう」
「ええ、おはよう。今日の食事当番、どっちだったかしら?」
「俺だよ。今日はこの前釣った魚を捌くつもりだ」
「へえ、いいわね。楽しみにしてるわ」
「ああ」
そんな会話を交わし、俺はキッチンへ、リィナは洗面所へと向かう。
これも、だいぶ慣れた光景だ。5年と言う時間と共に過ごす。それこそ最初の人生の時の家族や近所の人たち、2度目の人生のアーロくらいしか覚えがない。その上、ここまで親密に、かつ2人きりでの生活なんてものはほとんど初めてだ。
お互い相手の行動パターンをなんとなく覚えてしまったし、だいぶ信頼関係を築けてきた気がする。生活の中で役割を決め、支え合いながらの生活を続けられていると思う。リィナの宣言していた10年間も、意外とあっという間に過ぎるかもしれない。
それから朝食を済まし、着替えを終えれば準備は完了だ。魔法使いの利点のひとつは、手ぶらで戦闘に挑めることだったりする。俺は弓の手入れを終えているので、準備に時間はかからないのだ。
「さあ! 今日はリベンジを果たす日よ! リネル、準備は良いんでしょうね!」
「もちろん。リィナこそ、気を抜いてたら命とりだからな」
「5年前の私ならともかく、今の私ならそんな間抜けなことはしないわ。これまでの努力、ひとつだって無駄にはしない」
「ああ、そうだな」
拳を握り締めるリィナは、きっと今日までの日々を思い出しているのだろう。
毎日毎日同じ魔法を繰り返し練習して、使えるようになったら今度は最適化を目指してまた繰り返し。そうやって魔法をひとつずつ覚えて行って、段々と習得速度も上がっていった。多くの魔法を覚えたことで元々扱えた魔法の練度も上がって来たし、元々の魔力量の多さも相まって実力は十分だ。
魔の荒野に望むのには、きっといい頃合いだ。
「さ、出発よ!」
意気揚々と扉をあけ放つと同時、暖かい風が吹き込んでくる。リィナの顔を照らす陽光は、その青い瞳をさんさんと輝かせていた。
そして、俺たちは魔の荒野に足を踏み入れる。5年前に初めて足を踏み入れ、いつだったか、この辺の主だと思われる蛇にちょっかいを出し、逃げる時に不可抗力で立ち入って以降1度も来たことは無かった。歩いて数十分の目と鼻の先にあったが、ずっと堪えてきたのはリィナが満足してくれなかった。
自分の実力を、自分が納得いくまで高めたい。それが最近のリィナの口癖だった。5年経ってようやく納得いったらしいが、果たして、リィナの力はどれくらい通用するのだろうか。
そして、通用するしない、の話をするのなら、それは俺にも言える。
この5年ではっきりしたのだが、俺の実力は格段に落ちていた。
扱える魔法の種類が減っていたし、威力も弱まっていた。体力筋力が落ちたのは肉体が変わったから仕方ないとして、鍛えても鍛えても昔のような感覚には至らなかった。これはもしかすると、風属性の魔法に生活を頼っているエルフの遺伝子の問題なのかもしれない。
近接戦闘は前世までの様に熟す、と言うのは難しそうだった。
ただ代わりに、弓の実力はみるみる伸びていた。目がいい、集中力が高いというのはエルフの長所で、神器としての補助を成しにしても一人前1歩手前くらいまでは来れた気がする。ずっと独学だから仕方ない部分はあるが、いずれ、シンラ・カクの戦士たちにも見てもらいたい。
そんなわけで、俺もリィナも、自分の実力を試すという目的をもってこの地に赴いた。実際、人間時代も冒険者としての登竜門を言われることもあった場所だ。相応しいだろう。
荒れ果てた大地には、相変わらず赤っぽい岩々が散らばっている。草木はほとんど見えず、水場なんて以ての外。遠くに見えるオアシス以外、安易に腰を許すのも許されないような土地だ。太陽は容赦なく照り付けているし、見渡しが良すぎて空を飛ぶ魔物などに狙われれば逃げ場はない。
それに、魔の荒野が広大なためか、この地の魔物たちは比較的足が速い。ソニックワイバーンを代表に、瞬く間に距離を詰めてくる捕食者が多いのだ。だから一瞬だって気を抜かず、常に周りを警戒する必要がある。
前回はそれを怠って危ないことになったが……何度も同じようなミスをする俺じゃない。普段以上に意識を高めながら周囲を警戒し、リィナの後ろをついて歩いていた。
「ああもう、熱いわね。魔物に会う前に疲れちゃうわよ」
「そんなこと言うなって。これまで体力を付けるために運動して来ただろ? 水も食料も用意してきた。適度な休憩も入れるから、もう少し頑張れ」
「言われなくても分かってるわよ。ただ言ってみただけ」
「それもやめたほうがいいな。口に出したことは体にも響く。熱い、疲れたと言えば言うほど熱く感じるし疲れやすくなるものだ」
「……分かったわよ、次からは気を付ける」
リィナの返事を聞いて、不覚にも感動しそうになった。
普段のリィナなら、ここで嫌みのひとつでも言って来たものだ。あんたも今言ったじゃない、とか、私は言葉に影響されるほどやわじゃない、とか。だが、真面目にやらなければいけないと分かっているのだろう。リィナは素直に頷く。
成長を感じるというか、純粋に嬉しかった。俺の言葉を正面から受け止めてくれるようになったことが。
「ああ、頼むぞ」
だからだろうな。そう返事した俺の声は、リィナと同じく疲れかけていながらも、明るかった。
魔の荒野に足を踏み入れてからどれくらいの時間が経っただろうか。太陽の位置を頼りに考えれば、3時間くらいかと思われる。
それだけの時間が流れた頃。何度目かの休憩をしようと場所を探していた時に、獲物を見つけた。
「いた! いたわよ、リネル!」
「何? どこだ?」
先程まで浮かべていた疲弊の表情はどこへやら。リィナは目を輝かせ、はしゃぐようにある方向に指差した。その指先を追ってそちらを見ると、確かに大きな群れが見える。この辺りであの規模の群れを成す魔物と言えばアークバイソン以外にいないだろう。
「流石だな、全然見えなかった」
「ふふっ、目の良さには自信があるもの」
「ほんと、頼りになる」
王族はエルフとしての力が強い、と言うことなのだろうか。
手の器用さ、魔力量、視力の高さなど、リィナはエルフの長所として語られる特性を水準高く備えている。それに加えて物覚えもよく努力家であるため、多くのことに一線級の才能を発揮していた。
音の聞きわけや痕跡を探す腕についてはまだまだだが、こういった遠距離での索敵では、きっともうリィナに敵わないことだろう。
アークバイソンまでの距離は目算400メートル。狙撃するには少し遠い。
「もう少し近づきたいな。アークバイソンの周りは強力な魔物も多い。警戒しながら行くぞ」
「ええ」
さあ、5年前と同じ状況が出来上がった。
今度こそ2人で成功させるぞ、と言う意思を込めて、互いに頷き合い、獲物に向かって近づき始めた。
過去に失敗したことにもう1度挑むというのは、中々に難しいことではないでしょうか。
前は無理だったし、と言う感情は、以前の朝鮮から期間が開けば開くほど増して行くものだと思います。例えば、昔無理だった絶叫系が、今ではトラウマのようになって絶対に乗れない、みたいな。ここ最近は試して無いのに無理と言い続ける、食わず嫌いとも取られてしまいかねないことになっていたり。
それでも、目標を持ち、努力を続けてやるリベンジはきっとモチベーション高く取り組めるものですよね。
何が言いたいかと言えば、私は一生絵はかかないだろうということです。自分のキャラ、自分で書いてみたいんですけどねぇ。
それでは!