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確かな成長

 どうもシファニーです! 週末って無情にも過ぎ去ります。たった2話投稿するだけで終わるなんて、儚いですね。


 第66部、第2章第20話『確かな成長』です。どうぞ!

「リィナ、そろそろ髪切ったらどうなんだ?」

「は?」


 ソファに腰掛け、机の上に置いた弓を手入れする傍ら、ダイニングで手元に魔法を代わる代わる発動させて遊ぶリィナの後姿を見る。

 

 そこに伸びる綺麗な金髪は、そろそろ地面に着くんじゃないかと言うくらいに伸びている。外に出るときは結ってまとめているとはいえ、それでも邪魔になりかねない長さだ。

 そう思って声をかけると、心底不服そうにりぃなが振り返った。


「あのねえ、髪は女の命って言葉聞いたこと無いわけ?」

「つってもそれ、もう2年も切ってないんだろ? この生活始めてから切ったところ見てないぞ」

「枝毛は落としてるし邪魔な分は切ってるわよ」


 リィナの頭の上には相変わらず白い花が咲いている。どれだけ時間が経っても腐った様子が無いのは、どうやら魔力で保護しているからだと言う。

 それと打って変わって好き勝手に伸びた後ろ髪は、今は椅子の背もたれを覆いつくすように広がっていた。


「それ以上長くすると戦闘で邪魔になる。いや、今のままでも十分すぎるくらい邪魔だ。戦闘中に何かに引っかかりでもしたら笑えないぞ」

「……じゃあ何? バッサリ切れって言ってるの?」

「そこまでは言わない。2年前くらいの、背中半ばくらいの髪の長さだったらどうにかなる」


 元々リィナは魔法を使って戦う遠距離の戦闘を行っている。だから多少髪が長いくらいでは何ら問題は無いのだ。けれど、あまりに長くなりすぎるといざと言う時に足を引っ張りかねない。

 そのことの危険性を事細かに説明しようと、手元の作業を止めて立ち上がろうとした時、スッ、と鋭い風の音が聞こえた。


 音のする方を見ると、金色の髪が、パラパラと地面に向かって落ちて行くところだった。


「ほら、これでいいんでしょ?」


 顔を上げる。

 2年前と比べて背丈がいくらか伸び、顔つきもどこか大人びてきたリィナが、出会った頃を思い出させるような髪の長さで背筋を伸ばし、肩にかかった髪を払うところだった。


 色々言いつつ、やっぱり素直なんだよな。

 そんなことを思いながら、口元に笑みを浮かべた。


「ああ。髪の長さじゃ大差はないけど、そっちの方が可愛いと思う」

「お世辞はいらないわよ。さ、支度で来たなら出かけましょ。時間がもったいないわ」

「分かってる。行こうか」


 終わりかけだった作業をさっさと済ませて振り返ると、リィナはまさに家を出るところだった。

 その時にみえたリィナの横顔には、どこか嬉しそうな笑みが浮かんでいた。


 2年、と言うとそれなりに長いものだ。それはエルフとして転生し、寿命が延びても変わらない。

 もしかしたらあと何十年も生きれば違うのかもしれないが、今のところは、人間時代と大差ない感覚だ。

 その年月で大きく成長し、実力を上げる。それに十分な時間が流れた。


「《アース・ホール》ッ!」


 ずっと叫び続けてきた魔法の名前を、リィナは胸を張って口にする。

 それと同時、リィナの足元の地面が沈み始める。


 周囲一帯穴だらけ。元々は平地だったのに、今では耕された畑のようにふかふかだ。

 そんな地面ではあるが、魔法の難しさは土の柔らかさや質によって変化するものではない。

 だから、自身の足元にちょうど人ひとり入れるほどの大きさの穴をあけたリィナの魔法の実力は、誰もに見せても恥ずかしくない、立派なものだと言えるだろう。


「リィナ、ほんとに成長したな。土属性魔法をここまで操れるようになるなんて、正直思ってなかった」

「ふふっ、当然よ! これならリネルよりも腕は上って言えるんじゃないかしら?」

「ああ。間違いない。風属性と水属性だけじゃなく、土属性まで越されるとはな」


 悔しさと同時、それ以上の喜びが沸き上がってくる。


 胸を張り、腰に手を当て鼻高々の様子のリィナ。何度も見た自慢げな表情だったけど、今日はまた一段の得意そうだった。でも、当然だろう。

 基本5属性の内、すでに3属性に置いてリィナは俺よりも練度高く魔法を扱えている。

 かつて大魔術師として名を広めていた頃の実力を取り戻しつつある俺を、だ。


「本当に凄い。正直、ここまでとは想像していなかった」

「その称賛、素直に受け取っておくわ」


 余程機嫌がいいのか、普段みたいに嫌味を言ってくることは無い。こうやって素直に喜んで笑っていれば、もっと可愛いと思うのだが。

 なんて思っていたからか、不意打ちに思わず驚いてしまった。


「でもまあ、これは私だけの実力ではないわ。質の高い指導があってこそだもの。今日くらいは、お礼を言ってあげるわ。ありがとね、リネル」


 そう言って、リィナは純粋無垢な笑みでこちらを見上げてくる。

 この2年の間、見たことのないほどに綺麗な笑顔。それに思わず見とれ、頬が熱くなる。それに気付かれたのだろう。リィナの笑顔は、たちまち悪戯っぽいものへと変わっていく。


「あら? 照れてるの? 可愛いじゃない」

「て、照れてなんてない。感動しただけだ。あれだけ素直じゃなかったリィナが、やっとお礼を言えるようになったんだなって」

「はぁあっ!? どういう意味よ!」

「そのままの意味に決まってるだろ? 今日まで魔法を教えてきて、お礼の言葉なんてほとんど聞いたことが無かったぞ」

「そりゃそうよ! お礼って言うのは成果を上げてから貰うものだもの。それともあれかしら? 私に魔法の実力で敵わなくなって、悔しくなってそんなことばっかり言ってるのかしら?」

「な、なにをぉ!?」


 嘲笑うように口元に手を添えて手を上げるリィナに、思わず頭に血が上る。拳を振り上げそうになったが、それを見ても動じないリィナを見て、落ち着くために深呼吸を繰り返す。


「ふぅ……確かにリィナは実力をどんどんつけていると思う。だけど、慢心は禁物だ。実戦経験は全然足りていない。狩りも最近じゃあて慣れてきたが、まだ魔の荒野で安心できるとは言い切れない」

「もちろん慢心なんてしてないわよ。いつか魔の荒野には再挑戦するし、最終的にはあの蛇だって倒して見せるわ」

「あれは無理だと思うけど……まあ、目標を高く持つのはいいことだな」


 あの蛇は正直この世界の神、つまりはノエルだが、あいつが嫌がらせのために産んだとしか思えない強さを持っている気がする。例え神林弓の強さを完全に引きだせても勝てないような気がする。


「で? 次はどうするわけ? そろそろ新しい魔法に挑戦してみたいのだけれど」

「でもな、そうは言ってもリィナは雷属性と火属性の魔法を扱えなかっただろ?」

「それは、そうだけど……」


 属性適正テストの結果、リィナは何をどう足掻いても火属性と雷属性を扱えないことが分かった。と言うのも、エルフとは根本的に相性が悪いらしい。

 

「魔法は使う人の好き嫌いによって変わってくる。火や雷が苦手な人は、どうやっても使えない。その苦手をゆっくりと克服して行けば使えるようになることもあるが、生まれつき苦手だったのを本心から受け入れるのはそれなりに難しい。だから、もともと火属性と雷属性の使い手は決して多くないんだよな」

「それを使える俺は凄い、ってこと?」

「そんなことは言ってない」

「あらそう、邪推してごめんなさいね」

 

 なんて言いつつ、リィナはちょっと不満気だ。


 俺は2度目の人生で大きすぎる魔法の才能に恵まれた。そのおかげでどんな属性の魔法でも使えるようになり、そのときの感覚が残っているおかげで今でも使えているが、大抵の人はそうはいかない。あと、使える属性ばかり多くても魔力が足りなければ使えない。


「まあ、こればっかりは努力じゃどうにもならない部分が。これからはより早く、そして的確に使えるように練習して行こう」

「そうね。分かったわ。これからも一応よろしく、と言っておくわ」

「こちらこそ」


 そしてまた、俺たちは魔法の修業を続けて行く。

 落ちで分かる人は分かるでしょう。そう、また時間を飛ばそうとしています。

 このままいくとグダグダになりそうだったので、スキップ挟みつつ2人の成長を歩んで行く所存です。

 と言うわけで今回はここまで。


 それでは!

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