特訓開始
どうもシファニーです! 再び家族が感染症で寝込んでしまいましたが、私は元気です。
第63部、第2章第17話『特訓開始』です。どうぞ!
翌朝、俺とリィナの魔法特訓が始まった。
「さあ、やるわよ!」
拳を掲げ、生き込んだリィナと共に外に出て、家から少し離れる。
開けた場所に出て、周囲に他の生き物がいないことを確認し、足を止める。
「まずは何から始めるの!?」
「じゃあ、属性適正テストから始めよう」
「属性適正テスト?」
リィナが小首を傾げるのに、よくぞ聞いてくれました、と俺は答える。
「魔法を使おうと思ったら、まずやるべきことだ。自分がどんな属性が使えて、どの魔法が使えないのかを調べる。こうすることで、より効率よく魔法を身につけるんだ」
「よく分からないけど、役立つなら早速始めましょう!」
第2の人生で魔術師学園に入学するにあたり、俺も受けたものだった。ただ、内容は特段難しかったり複雑だったりはしない。いたってシンプル。
「俺が今から使う、基本5属性の魔法の内、出来そうなものから真似してみてくれるか?」
「分かったわ!」
と言うか、リィナのテンションが高い。魔法を上達させられることがよほど嬉しいらしい。
「じゃあまずは風属性魔法からだな」
「そんなの余裕よ!」
「だろうな。それじゃあ……《エア・フロー》」
声とともに魔力が流れ、小さな風が森に消えて行く。低木たちがわずかに揺れる程度の、風属性の中でも特に簡単とされる魔法だ。戦闘に置いての実用性はあまりないが、細かい場所の掃除なんかには使える。
そんな俺の魔表を見て、リィナは鼻を鳴らして得意げに唱える。
「《エア・フロー》っ!」
俺のよりも少しだけ強い風が吹く。確かめるまでも無かったが、しっかりと扱えるようだ。
「よし、合格だな。次は水属性だ」
「それならたぶん行けるわよ! いくつか使えるのがあるもの」
「へえ、そうだったのか。それは知らなかったな。じゃあ、見せてもらおうか。《アクア・ドロップ》」
地面に向けた手のひら、その中央部分から零れたのは、ちょうど両手ですくえる程度の量の水。地面について音を立てて弾け、土に跡を付けてじんわりとしみこんでいく。
「それなら余裕ね! 《アクア・ドロップ》っ!」
リィナの手のひらからも同程度の水が生まれ、地面に落ちて土を濡らした。
「水属性も良し、と……じゃあ、次は土属性になるか。これは使ったことないんじゃないか?」
「確かに無いわね。まあ、ひとまず見せて頂戴」
「もちろんだ。《アース・ホール》」
腰をかがめ、先程水魔法で濡らした辺りの地面に手を向ける。淡い魔力の光が放たれると同時、地面に手が入るか入らないか程度の小さな穴が開く。
「この魔法は土を押し開き、小さな穴を作るというものだ。主に洞窟探索とかで、壁の向こうに何かないかを調べたり、物を置くスペースを作ったりするために使われるな。マニアックなものになると、土作りの家を作った時に装飾なんかでも使える」
「ふぅん、使い道がありそうでないわね。でも、とりあえず使えればいいんでしょう?」
「ああ。やってみるか?」
「ええ! ……《アース・ホール》」
屈んだリィナは、俺を真似して地面に魔法を唱える。
魔力の光がわずかに放たれ、土に、ほんの小さな、小指も入らない程度の穴が開いた。
「う、うーん、これは成功と言える、のかしら?」
「あー、一般基準だとこれは不合格だな」
「そりゃそうよね……も、もう1回、いいかしら!?」
「ああ、好きなだけ試していいぞ」
これが学園への入学試験ならともかく、個人的に行っているもの。言われなくたって、リィナが出来るようになるまで、何度も挑戦してもらうつもりだった。
それから2時間ほど、リィナの魔法を唱える声が響き続けた。
「あ、《アース・ホール》っ!」
流石に疲れてきたらしい。行きを乱しながらのリィナが、もう何百回目になるか分からない魔法を放つ。
相変わらず魔法の光は出たが、土に開いた穴はようやく丸めた小指が入る程度。
「う、うぅ……案外出来ないものね」
「一朝一夕で出来るようなものなら、誰だって苦労はしないだろ? 安心しろ、こんな短時間で目に見える成長が出来ているだけリィナは呑み込みが早い方だよ」
「そう? まあ、励ましとして受け取っておくわ」
はあ、と溜息を吐きながら立ち上がったリィナは、軽く両手を叩いてから腰にあて、同じく立ち上がった俺に言う。
「それじゃあ、ご飯を取りに行きましょう。お腹が空いたわ!」
「それもそうだな。じゃあ、狩りに出るか」
空を見上げれば、恐らくは昼の少し前。朝ご飯も食べていないし、流石にお腹が空いて来た。
「シンラシンラの中にいる魔物って言えば、狙うとなるとホーンディアーなんかか?」
「そうじゃない? 私たちもよく食べるし」
ホーンディアー。他の一般的なシカ型の魔物と違い、その角が真っすぐで渦を巻いている。生体はあまり変わらないが、その長い角で高所の木の実を取って食べるなど器用な部分もある。
シンラシンラに来て初めて知ったが、割と世界中のどこにでも生息している種族らしい。俺の記憶が正しければ、ちょうど大陸の反対側の方の森の中にも生息していたはずだ。3度目の人生の時に食料としてお世話になった記憶がある。
この世は弱肉強食。こっちでもお世話になるとしよう。
アークバイソンと違って他の魔物と競争になることはあまりないし、ホーンディアー自体が強かったりもしない。リィナの標的として相応しいとも言えるだろう。
「生息域は分かるか?」
「知らないわね」
「堂々と言うなよ……ここの王女だろ?」
「そんな何から何まで知っているわけないじゃない。ずっとシンラ・プライドの中にいたんだから」
「まあ、それもそうか。じゃあ、気長に探すとしよう。1体だけでも、俺たちにとっては十分だろう。ついでに野草や果物なんかも探して、見つけたら持って帰ろう」
「分かったわ。じゃあ、籠を取って来るわね」
「ん? あるのか?」
俺の取りに答えるよりも早く、リィナは家の方に走っていった。俺は元々神林弓も用意してあったのでその場で待つこと数分後、リィナがかなり大きめの籠を背負って帰って来た。
子どもが背負うには大きく、少ししゃがめば地面についてしまいそうなほどに大きかった。
「どう? これも作ったのよ」
「本当に器用なんだな」
「ふふっ、何度もやってるからね! シンラ・アースでの収穫もこれでやってるから、慣れたものよ!」
リィナは何とも頼もしい笑顔で言った。大きすぎて少し心配だったが、慣れているなら問題ないのだろう。
どこか遊びに行くかのような楽し気な笑みを浮かべるリィナを見て、得物を探すために出発する。
どうやら昨日のことを引きずったりはしないらしい。図太いというかなんというか。でもまあ、こういう性格の子ほど成長したりする。これは将来に期待できそうだ。
クリスマスにも掛かってるんですよねぇ。私はもらってない。と言っても最近どっかでかかってすっごく苦しかった記憶があったりなかったりするわけですが……今が元気ならそれでいいですよね! 喉元過ぎれば熱さを忘れる、なんて言葉がありますが、時間が経てばその時の苦しみなどどこへやら!
私ってたぶん生きやすい性格してますね。
それでは!