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明日から

 どうもシファニーです! Web連載とは別に月初めに書きだした10万字を書き上げてしまった……新年早々頑張ってると思います。


 第61部、第2章第16話『明日から』です。どうぞ!

 リィナと静かな午後を過ごした。と言っても、穏やかと言うよりは、怠惰的に時間を過ごしてしまった。シンラ・カクを離れて1日でこんなことになるなんて思わなかった。

 しかしなってしまったものは仕方ない。日暮れが近づき、暗くなり始めた空の下で野草集めに励み、帰ってきたら残っていた最後のハンバーグを食べる。流石に3食連続は飽き始めるかと思ったが、添える野草によってそれなりに味のバリエーションが生まれていた。

 昼食を取っていなかったこともあって、俺もリィナもすぐに食べ終えた。


 食器を片付け終え、空は完全に暗くなる頃。俺とリィナはダイニングテーブルを挟んで向かい合っていた。


「特訓するわよ!」


 腕を組み、こちらを見つめたリィナが言い放った。


「えっと、何のだ?」

「当然戦う特訓よ! このままじゃ駄目だって分かったわ! こんな弱い私じゃ冒険者なんて務まらない。だから、強くなるために特訓するのよ!」


 リィナは拳を握って力説する。


「なるほど、話は分かった。でも、具体的にどんな特訓をするんだ?」

「それはリネルの考えることよ! 私が強くなるために必要な特訓を教えなさい!」

「ええ……」


 その意思は素晴らしかったが、肝心なところで人任せとは。でもまあ、確かに初心ががむしゃらに努力するより、人を頼るというのは正しい理屈ではある。


「うーん、でも、何から始める? リィナ、弓の扱いは出来るのか?」

「いえ、無理ね。戦闘使える能力と言えば、魔法だけよ」

「となると、魔法をより洗練させるべきか?」


 部屋に広く浅く鍛えるより、狭く深く鍛えたほうがいい場合は多々ある。リィナの場合、特に魔法の扱いに関して言えば一線級なのだから、ひとまず魔法の腕をより磨き、実力を高めたほうがいいだろうか。

 吾人で技量を磨くことは何度もあったが、誰かに教える機会は無かったから勝手は分からない。


 顎を抱えて悩んでいると、煮え切らなさに限界が来たらしい。リィナが身を乗り出して詰め寄ってくる。

 思わず仰け反り、距離を取る。


「何でもいいわよ! 私は早く強くなりたいの!」

「わ、分かってる! でも、効率のいい成長方法と言うか、そういうのがあるんだよ。行き当たりばったりでやるより、いろいろ考えて順序だててやった方がいいはずだ」

「そんな頭ばっかり働かさないで、体動かしてればいいんじゃないの?」

「そんなわけない」


 なんか、もしかしてリィナは思っていたよりずっと単細胞な気がして来た。思慮部下そうだと思っていたが、案外直情的なのかもしれない。いや、考えてみたらそういう姿の方がよく見せていた気がする。最初の、怖くてクールな印象が先走っていただけと言うわけだ。


「……ちょっと、今何か失礼なこと考えてたでしょ。顔見れば分かるわよ」

「じゃあ分かってないな。失礼なことなんて何も考えてない」

「ふーん、じゃあ、何を考えていたか言ってみなさい」

「リィナって案外単細胞だよなって」

「考えてるじゃない!」


 頬を膨らませ、いら立ちをあらわにしたリィナを制するように両手を前に出し、話を逸らす。


「まあまあ、それはそれとして、特訓だったな? とりあえず魔法を特訓して戦えるだけの力を付ける。そこから始めるのはどうだ?」

「……まあ、それには賛成よ」


 納得いくと同時に今日を削がれたのか、リィナは不機嫌そうな顔で腕を組みながら、乗り出していた身を引いて椅子に座った。


「で? 具体的に何をすればいいの?」

「まずは使える魔法の種類を増やそう。風属性魔法は大体使えるだよな?」

「ええ。あと、リヴェラル系、つまり自然属性も大体使えるわ」

「なるほど。流石はエルフの王族って言ったところか?」

「ふふんっ、伊達じゃないってことよ!」


 自然属性とは、簡単に言えば風属性の上位属性に当たるもの。基本属性の風、水、火、電気、土にそれぞれ上位属性が存在し、派生属性として光や闇をはじめとする様々なものがある。その中でも基本5属性から正統進化を遂げたものを上位属性、それと同等の派生属性を特殊属性と呼ぶ。

 そして上位属性、特殊属性の習得にはかなりの努力と才能が必要とされているのだが……リィナの年で扱えるのは人間の価値基準で言えば天才と評されてもおかしくない偉業となる。エルフの場合は多少価値観が変わってくるはずだが、それでも凄いことだろうと思う。その魔力量の多さもそうだが、本当に幼い頃から魔法に触れてきたのだろう。些細な努力で成せることではない。

 そういう地道な努力を続けているんだろうなってことは、普段のリィナを見ていればよく分かる。


「じゃあ明日から早速、いろいろな属性の魔法に触れるところから始めよう。狩りも、魔の荒野じゃなくてシンラシンラの中で少しずつ慣れて行けば、練習にもなって一石二鳥だな」

「分かったわ! なら、今日は早めに寝るとして……」


 と、そこまで言いかけて、リィナは頬を赤くした。どうしたんだろうと顔を見ると、勢いよく逸らされた。何だ? と首を傾げたところで、ピンときた。

 どうやら昨日の夜のことを思い出したらしい。


 思わず口元が緩んだところを、リィナに見つかった。目を見開き、顔を真っ赤にして身を乗り出してくる。


「か、勘違いしないで欲しいのだけれど! 私は決して寂しいわけでもリネルと一緒にいたいわけ絵も無いから! 寝ぼけてた、そう、寝惚けてただけ! 私は昔から寝相が悪いの!」

「だ、大丈夫、分かってるから落ち着け、危ないから!」

「分かってないわ! いい!? 私ね――きゃっ!?」


 言わんこっちゃない、と思うと同時、体が動く。

 体を前に倒しすぎたリィナは、椅子が倒れそうになって慌てて後ろに体重をかける。後ろに戻ったはいいが反動が大きく、椅子に乗り上げていたことで足を突くことも出来ないで後ろに倒れる。

 椅子もろとも後頭部から落ちそうになり、リィナは思わず目を瞑った。だが、リィナが頭をぶつけることは無い。


「……いったぁ」

「リ、リネル?」


 椅子の下敷きになった俺は、リィナの体重に押しつぶされながらも涼しい顔をしていた。リィナ、やっぱり軽いんだよなぁ。大きな魔物たちの体当たりを何度も受けてきた身からすれば、これくらいは屁でもなかった。

 頭から滑り込み、うつぶせになって背中で椅子を支えた。リィナが頭をぶつける直前で何とか角度を保ち、床に着いたのはリィナの長い髪だけだった。


 首を捻り、体の向きを変えられないまま無理やりリィナを見る。

 椅子の上に膝立ちしたそのままの姿勢で横になったリィナは、割と間抜けな顔をしている。


「大丈夫か?」

「え、ええ……えっと、リネルこそ、大丈夫?」

「まあな。でも、出来れば早く降りて欲しい。痛い」

「っ、わ、悪かったわね、重くて!」

「いや、言ってないが……」


 リィナは文句を言いながらもすぐ立ち上がり、椅子を俺の上からどけてくれる。

 さて立ち上がるか、と思ったところ、目の前に白くて細い指が、それの連なる手が差し出されていた。


「そ、その、ごめんなさい。また私、リネルに無理させて……」


 恥ずかしさと、辛さだろうか。

 うまく読み解けなかったが、いくつかの感情が混ざり合ったような表情で目を逸らしながら、リィナはそんなことを言って来た。

 俺はリィナの手を取って立ち上がりながら、そんな言葉を笑い飛ばす。


「支え合って生きるんだろ? ならいいよ。今は俺ばっかりが支えているように見えたとしても、いつかリィナに頼る時が来るはずだからな」


 言って、リィナの目を見る。逸らされていたけど、ゆっくりとこっちを向く。そして、優しい笑みを象った。

 が、それはすぐさま形を変え、真っ赤に染まった顔で不機嫌そうに細められる。


「は、はあ!? 誰が支えられてばっかりですって!? この家を作ったのも家具を作ったのも私よ! 誰のおかげで生活できてると思ってるのよ!」

「あー……はいはい、分かったから。ならなおさら、これくらい気にするな」

「ば、馬鹿にして!」


 なんて言って襲い掛かってくるリィナの攻撃を躱す中、なんか楽しいだなんて、そんな風に思った。

 異世界と言えば魔法なわけですが、その世界に取って魔法がどんな存在なのかを考えてる時って正直異世界物かく中で一番楽しいまであるんですよね。筆を執ったことがある人、共感してもらえませんか?

 設定を考えること自体、ただ小説を書くよりも楽しいと感じることがよくあるのですが、その中でも魔法は格別だと思っています。特に今作魔法の要素多めなので楽しいんですよね。

 皆さんにたくさんの魔法をお見せできたらと思います!


 それでは!

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