初めての狩り
どうもシファニーです! 1月も3分の2が終わりました! え、マジです!?
第60部、第2章第14話『初めての狩り』です。どうぞ!
朝食後、完全に日が登った頃になって、リィナが俺を家の外に連れ出した。
何事かと思っていると、リィナが嬉々とした笑顔を浮かべて振り返った。
「狩りよ!」
暖かい風が頬を撫でる中、目を輝かせたリィナはウキウキとした様子で言って来た。
言っている意味は分かったが、いまいち、どうしてリィナがこんな表情をしているのかが分からない。
「昨日狩って来た牛? がいたわね! 私もあれを狩る手伝いをするわ!」
「いやいや、止めといたほうがいいぞ」
「……なんで?」
キラキラした目はどこへやら。鋭く睨んでくるリィナに、俺はなんと説明しようか悩む。
リィナは狩りを楽しい物か何かのように勘違いしている様子なのだが、そんなことはまったくない。
「なんて言ったらいいか分からないが……狩りはリィナが思っているほど簡単じゃないぞ?」
「一緒にニケロイアと戦ったでしょ? 私の力不足なんてことあるの?」
「いや、力不足ってわけじゃないんだよな。うーん……じゃあ、実際にやってみるか?」
聞くと、リィナは再び目を輝かせてこくりと頷いた。
俺は、どこか子どものしつけをするような感覚に陥りながら、装備を整えてリィナと共に魔の荒野へと繰り出した。
リィナとリーヴァの約束では、魔の荒野には出ないとなっていたはずだった。しかしまあ、まともに食料を確保しようとするのなら、魔の荒野に出たほうが効率的だ。シンラシンラにも多種多様な生物がいるが、俺的には魔の荒野の方が慣れているし生態系も把握している。
そんなわけで、生きるための最善手が魔の荒野に行くことだった。リィナの外を見たい、と言う夢もわずかながら叶えることが出来て、一石二鳥とも言える。
リィナが魔の荒野を外の世界と思っているかは分からない。だから、ほんのちょっとの自己満足だと思っておくことにする。
「ここが魔の荒野ね! こんな荒れ果てた場所で、本当に生物が生きて行けるの?」
「荒れ地には荒れ地なりのメリットがあるんだよ。それに、森と違って生存競争が激しいから、強い魔物がたくさんいる。気を付けないと酷い目あうからな?」
「なに言ってるのよ。エルフの王族たる私が、高々荒野の魔物に後れを取るわけがないでしょ?」
リィナは侮っている。
この、一面の岩肌の中にある弱肉強食の世界。そこに生きる魔物たちを。
一部の魔物が強い以外、シンラシンラの中には大きな力量差はない。理由とはして食料も済む場所も潤沢にあるから、生存競争がそこまで激しくないここと、エルフと言うあまりにも大きすぎる集落があることが上げられるだろう。
だが一方魔の荒野は、食料が少なく、日光の厳しい荒れた土地。隠れる場所もろくに無く、産んだ子どもはすぐに食べられる。空から丸見えなので飛行できる魔物より弱い魔物はすべて淘汰され、それに対抗するように上空の魔物たちもどんどんと強い種族に入れ替わっていく。
その陰で、本当に弱小な種族や、数が多い種族は見逃されている。強い魔物と言うのは必然的に知能が高く、食物連鎖の仕組みを理解し、利益のために生かすという生存方法を確立している。例えばアークバイソンは、その巨体が魔物たちにとって恰好の餌となるため、例え襲われても群れが全滅、なんてことはあまり多くない。
実際肉は上質で、量も多いから俺も好んで狩っていた。決して強かったり足が速かったりしないのも狩りの標的としてふさわしい理由だ。
だが、ライバルは多い。
上質な獲物ならば、それを狙う魔物もその分多くなる。だからこそ互いに妨害し合い、多く数が減らないように、少しでも自分たちの種族の食料としてあてらえるようにと争奪戦が始まるのだ。
実際、昨日の今日で俺は獲物を奪い合う敵として、当たりの魔物たちから警戒されていることだろう。
リィナにそれをちゃんと説明してもよかったのだが、たぶん実際に体験してもらった方が早いだろうと思った。本当の恐怖を知らなければ、どうしたって好奇心に負けてしまうことがあるのが生き物だ。特にリィナなんかは向上心も好奇心も人一倍なのだから、しっかりと分かってもらう必要がある。
もしこの場前現れたパラソルポイズンでも出てくれば、リィナも狩りの恐ろしさを分かってくれることだろう。
荒野を一緒に歩くリィナは、結構軽い足取りだった。岩場なんて歩き慣れていないはずだが、特段疲れた様子も見せない。そろそろ歩き始めて半刻になるが、獲物も見つからない退屈な時間を、リィナは満喫しているようだった。
景色だって変わり映えしないはずなのに、ずっと楽しそう。
「リィナは、冒険者に向いてるかもな」
「冒険者? 冒険する人ってこと?」
「大体あってる。人間の国では、冒険し、そこで得たものを売ったりして生きている人を冒険者って呼ぶんだ。太古の遺跡を探索したり、未開の土地に足を踏み入れたり、偉人の軌跡をたどってみたり。気の赴くままに世界を巡る人たちのこと。どうだ? ピッタリだろ?」
「そうね! 私にこそ相応しいと思うわ!」
冒険者は決して楽な職業ではない。ただの好奇心だけでは自然の脅威にさらされて生きていけないし、力ばっかりあるのなら傭兵でもやっていたほうがまだ生計を安定させられる。
だから、冒険者は好奇心と向上心を持ち合わせ、相応の力があるものにこそ相応しい生き方。わざわざ考え直さなくても、リィナとは相性最高だった。
「もしお母様に許可をいただけて世界を見て回ることになったら、私は冒険者を名乗ることにするわ!」
「それがいい。もしよかったら、その時は俺も連れて行ってくれ。俺も、まだいろいろ見てみたいところがある」
「そうね、荷物持ちとして連れて行ってあげてもいいわ!」
「そりゃいいな、よろしく頼むよ」
上機嫌で言うリィナは、冒険者になった未来を想像しているのか、楽し気な笑みを浮かべていた。
「ん? ねえ、あれ何?」
「どれだ?」
笑顔を引っ込め、小首を傾げたリィナの指差したほうを見る。そこでは大きな砂埃が広がっていて、何かいることがすぐに分かった。
「お、見つけたかもしれないぞ」
「なに!? ご飯!?」
「い、いやまあ、ご飯ではあるが……アークバイソン。ここらでは食料として重宝されているのはそうだが、一般的に見れば筋力が高く、その突撃は容易に人間を殺すほどだ。もちろんエルフも例外じゃないから、油断すれば群れの下敷きになって即死だ」
「ふぅん、結構強いってこと?」
「そうなるな」
俺くらい慣れてしまえばそんなことは無いが、狩り初心者だと返り討ちに合う事例も少なくない。と言うか、そもそも魔の荒野は環境が過酷すぎて大抵の生物は多少鍛えた人間よりもはるかに強い。だから初めて魔の荒野に行くときは、経験者が同伴するのが基本となる。
そんな話を、何度か魔の荒野に足を踏み入れてから知った俺は、良く驚かれたものだった。勇者時代ですら単独で探索していたものだから、まったく違和感ないままに探索していた。だが、確かに今思えば自殺行為だ。実際に死にそうになったことは少なくないし、最終的には魔の荒野で魔物に襲われて死んでいる。
そう言えば、あの時出会った少女は結局どうなっただろうか。死んだ直後に生まれ変わったとしたら、ちょうど10歳くらいになるのだろうか。順調にいけばステージ1、もしくはステージ2まで成長していても不思議はない。
「リネル? 何やってるの? 早く行かないと見失うじゃない」
「ああ、悪い。行く」
元気に生きていたらいいななんて思いつつ、リィナの声に返事して砂埃の見えた方へと向かった。
共通テストの自己採点ってあるじゃないですか。確証はないですが、大体点数はあってるはずで。そこでいい点を取れているか、取れていないかで心持って大分変って来るんですよ。ですが、二次試験の結果によっては共通テストの結果が悪くても合格できる可能性があります。
なので、もしそうだったとしても諦めずに頑張ってもらいたいですね! ま、受験生はこんなもの読んでる暇なんてないはずなのでこの声援は意味ないんですけどね!
それでは!