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新婚生活?

 どうもシファニーです! 3連休が終わってしまう!?


 第53部、第2章第7話『新婚生活?』です。どうぞ!

 祝勝会直後。みんなが片づけをしている中、俺たちはリーヴァの部屋に集合していた。

 俺たち、というのは――


 まずソファに俺が座っていて、その隣にリィナ。そのリィナはとても不機嫌そうな顔を浮かべて腕を組み、目を補足して口元をむすっとさせている。

 そして俺の後ろに俯き、申し訳そうな顔をしたレイカ。普段通りに無表情なリアサが立っている。レイカはチラチラとリィナの背中を見ており、意識しているのがよく分かる。

 そして俺とリィナの対面のソファ。その上に、急に呼ばれたことで困惑した表情を浮かべるリーヴァと、その後ろにライラ、あとはリーヴァ達と一緒にいたロイラがついて来ていた。


 ちなみに収集をかけたのはリィナで、ここにいるエルフたちの中でその理由となんとなくでも察しているのは俺とレイカだけなのではないだろうか。


 そう言うわけなので、当然のようにリーヴァから質問が放たれる。


「えっと、リィナ? 突然どうしたの?」

「お母様に伝えなければならないことがあります」

「は、はい」


 リィナに纏う、不機嫌さの中の真面目さに、リーヴァも飲まれてしまっているらしい。背筋を正して返事した。

 その雰囲気に満足したのか、リィナは堂々と言い放つ。


「私とリネルは、シンラ・カクを出て行くことに決めました」

「「ええーっ!?」」


 重なったふたつの声は、リーヴァとレイカから放たれたもの。その実俺も驚きでいっぱいだったのだが、叫ぶのだけは何とか堪えた。

 ライラとローラも目を見開いて驚いており、この場で驚きを露にしていたのは俺を抜けばリアサくらいのものだろう。いや、本当に表情ひとつ変えてないな。流石と言うべきかなんと言うべきか。


「ど、どどどどうしてですか!?」

「レイカ、黙ってなさい」

「ひっ!?」


 どもりながら聞いたレイカに、リィナは容赦ない言葉と鋭い視線を突き付ける。レイカは一瞬にして怯み、声を静めて恐ろしそうに目を瞑った。それを少し気の毒に思っていると、もうひとりの悲鳴の出所、リーヴァが口を開いた。


「きゅ、急にどうしたの? 私たち、ずっと駄目って言って来たわよね?」

「それは分かってます。だから、出るのはシンラシンラではなく、シンラ・カクなのです」

「えっと……どういうこと?」


 なおも疑問符を浮かべるリーヴァに、リィナは丁寧に説明する。


「シンラ・カクを出て、シンラシンラの中で生活します。これは、今度王、そして王女として生活を共にすることになるリネルとお互いをより知り、信頼を高めること。そして誰にも頼らず生きる術を学ぶことを目的とし、10年継続という必須事項と設けます」

「え、えっとぉ……」


 その、誰に否定されても曲げない断固たる意志を示すような物言いに、リーヴァは困り顔で視線を彷徨わせる。その行く先がこちらに向いた時、俺は申し訳思いながら肩を落とすことしか出来なかった。

 俺ももちろん事前に知らされたりはしていない。今ここで色々話を聞いて、そのことに対して聞きたいことも言いたい文句も山ほどある。ただ、どの言葉も届かないだろうと思ってしまったら、諦めるしかないのだった。


 俺のそんなあきらめを察してか、リーヴァも苦笑いを浮かべて肩を落とした。そして、困ったようで、それでいて嬉しそうな雰囲気を纏いながら頷いた。


「ええ、分かったわ。リネル君からも言いたいことは無いみたいだから、許可するわ。シンラシンラから出るならともかく、森から出ないことを約束してくれるなら、私も安心だからね」


 リーヴァも嬉しそうな雰囲気の正体は、リィナから提示された妥協案に対してだったらしい。

 ときに、交渉の場では先にとても悪い条件を示した後で、それから少し条件を良くすることで、多少悪い条件でも飲みやすくなることがあるという。

 今回の場合がどうなのかは分からないが、リーヴァがリィナの話術に丸め込まれていないことを祈るばかりだ。


「え、えっと、そのぉ……せ、せめて私どもだけでも、お供すると言うのは――」

「駄目よ。それじゃ意味がないでしょ?」

「うぅ……」


 レイカの小さな訴えは、あっという間にいなされた。 

 そして、その意味がない、という言葉の裏に隠された意図を俺は知っている。


 きっと、他の人はそれじゃ私たちが成長できないでしょ? みたいな意味で取られているはずだ。しかし、その実恐らくは、俺とレイカを引き離すための提案なのに、レイカが一緒じゃ意味がないでしょ? と言っているのだと思う。

 あれからずっとリィナの機嫌が悪いし、俺とレイカを引き離すし、ずっと監視されている。でも、考えてみれば当然のことだ。王族の婿として迎えようという男に、女性の給仕が身を寄せている。人間時代にも見聞きしたことがある、ドロドロの性欲にまみれた貴族たちの裏の顔。

 ……あれ、もしかして今俺その帰属ポジションか?


 これ以上考えるのが怖くなり、俺は思考を止めた。


 それからリィナとリーヴァが詳細を詰めていき、シンラシンラの魔の荒野方面。その端あたりに小屋を建てて10年間ふたり暮らしをするとのこと。付添人は無し、衣食住はすべて自給自足、しかし近況報告やどうしても必要な事情があれば、帰ってきたり、シンラ・カクから人を派遣したりをともに了承。

 あと、シンラ・アースの管理は暇になるであろうレイカとリアサに引く次ぐことが決まり、話し合いは終わりとなった。


 そして解散となった直後、リィナが俺の腕をしっかりと掴んだ。

 レイカと一緒に部屋に戻ろうとした俺は、いきなりの行動、触れ合う肌、そして注がれる殺意に鼓動を速めながらリィナの顔を見る。


「ど、どうした? これから支度して今すぐ出るわよ。余計なことをすればその場で気絶させて連れてくから」

「ひゃ、ひゃい……」


 上擦った声で返事すれば、リィナはひとつ頷いて俺の体を引きずる。助けを求めるように振り返ると、悲しそうな顔を浮かべるレイカと、相も変わらず無表情なリアサが、ただただその場に佇んでいた。

 どうやら俺を助けてくれるエルフはいないらしい。


 こうして、俺とリィナのふたり暮らしが決定したのだった。

 まさかの展開ですね。まったくの予想外でした。まさかこれからよろしくお願いしますね、と言ったその日のうちにはレイカとリネルが引き離されるなんて。でも浮気は良くないので、リィナの行動は正しかったと思います。

 これからふたりがどんな風に過ごすのか、楽しみですね。


 それでは!

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