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母親として

 どうもシファニーです! 1月11日。1が多いですね。だから何ってわけじゃありません。


 第51部、第2章第5話『母親として』です。どうぞ!

 リーヴァはようやく暇になったらしく、俺の隣にやって来た。


「リネル君、今大丈夫?」

「大丈夫ですよ。どうかしたんですか?」


 リーヴァと話をするのは、神林弓を受け取って以来初めてとなる。リーヴァからしてみれば、言いたいことも聞きたいこともたくさんあることだろう。もちろん、俺だって言いたいことは色々ある。でもひとまずはリーヴァの話を聞くべきだろう。


「じゃあ、ちょっとだけ時間もらうね。……まずは、ありがとうから、かな。この場所を、私たちを、リィナを。命がけで助けてくれてありがとう。王女として、リィナの親として、そして私自身の本音として、感謝を伝えさせて」


 リーヴァは優しい笑みを浮かべていた。いつもよりも穏やかで、包み込むような笑顔。その若々しい美貌の裏に、確かに母親としての抱擁感を見せるその笑顔は、真っ直ぐと俺にだけ向けられていた。

 そこに本気が伝わってきて、思わずたじろいてしまう。こちらまで恥ずかしくなって、返事がぶっきら棒になる。


「まあ、出来ることをやっただけです」

「ふふっ、リネル君なら、そんな風に言うんじゃないかって思ってたよ。でも、あれだけのことをしてくれて、有頂天になってもおかしくないと思うのにいつでも誠実で、やっぱり、リィナが認めただけはあるんだよね」


 自然と悪戯っぽい笑みに変わって、今度は違う意味で俺を困らせる。


「それは……ちょっと、買いかぶられている気もしますけどね」


 本当に、今の俺がリィナから向けられている信頼は、出会ったばかりの頃と比べたら厚くなっている。今までの人生で向けられた、正直どんな信頼よりも大きいんじゃないかと思えるほどに。そして、俺も、もっとリィナを知りたいと、そう思っている。

 婚約って言葉にその気にさせられているだけだって言うのは分かっているが、それでも、そうなる未来を想像してしまっている。

 そういう部分があることは認める。


 それでもきっと、そうなる未来は現実にならない。

 俺はあと十年もすれば死に、生まれ変わることになる。そうしてまた新たな人生を歩むのだ今までのように、これからも。

 大切にしたいと思った人をせめて守れるようにと、生きていくしかない。


 それを覚悟しているような、半ば確信しているような俺をリィナが好いてしまったのなら、それはきっと、俺を見誤ったからなのだろう。


 言った後にそんな考えばかりが頭を巡る。

 それに負い目を感じて視線を下げていた俺に、リーヴァはこんな言葉をかけた。


「もうちょっと、今の自分に素直になってもいいんじゃない?」

「え?」

「リネル君は、いろいろ考える癖があるよね。それが悪いってことじゃないのよ? そうしてきたからこそ今のリネル君があると思うから。でも、たまには素直になってもいいと思うな。だって、まだ子どもなんだから」


 そこに再び浮かんだ母親の優しさに、俺は思わずはっとした。


 俺は、ずっと大人であり続けようとしていたように思う。

 だってそうだ。1度20年以近く生きた身で、何時までも子どものふりなんて出来るわけも無かった。

 何度も繰り返す人生の中で、俺はどれだけ押さなくても大人でいた。今だって、10歳でありながらもその責任をすべて背負い、戦っていた。

 だから、忘れていた。100年も生きていない俺なんて、エルフたちからしてみればまだまだ幼くて、子どもだってことを。


 もちろんリーヴァは俺の転生なんて知らないだろうし、これから改めて子どもを演じるつもりはない。でももしかしたら、どれだけの時間を生きたって、甘えてみてもいいのかもしれない。

 人に話せない秘密をいくつも抱えた身だけど、世界の常識に反した存在だけど、それでも――


「……いいん、ですかね。思ったことを、とりあえず言ってみたりして」

「もちろんだよ。それが、私に当たられた使命だと思ってるし、母親としての責任だと思ってる。でも、それ以上にリネル君のこと、大切だから。好きなだけ、思ったことを言っていいんだよ?」

 

 ……気付けば、口元が緩んでいた。たぶん、違和感がない自然な笑みだ。

 本当に、この人には敵わない。そう言えば、母親らしい母親と過ごす時間は、5度の人生を通しても短かったのかもしれない。リーヴァは俺の母親ではないかもしれないけど、リーヴァはそうあろうとしてくれている。


 少しの我が儘が許されるなら、俺はなってもいいのかもしれない。

 今の人生を、今の俺として幸せに生きようとするような、そんな身勝手な人間に。いや、エルフに。


 その時不意に聞こえた音には、聞き覚えがあった。

 草原や森でふくような、心地いい風のざわめきのように聞こえた。それは今までは知らなかったけど、ここになら確かにある音。森の、暖かく、優しい風の音だった。


「リネル君は今、私たちの家族なんだから」


 そんな言葉で救われそうになって、俺は、思わず自分に驚いた。

 ああ、そうだったんだな。何度転生を繰り返したって、自分じゃ感情が薄れていると思っていたって、どこか、寂しかったんだ。


「そうかもしれませんね。もう少しくらい、素直になってもいいのかもしれない」

「うんうん。出来れば、それをリィナと共有して、一緒に素直になってくれた方が嬉しいな。たぶん、こういう時リネル君よりもリィナの方が頑固だから」

「あー、それは、確かにそうですね」

「あ、やっぱり分かる?」

「自分の価値観は、なかなか曲げないだろうなとは」

「そうそう。もうちょっとかわいげがあってもいいんだけど、たぶん、そう言うところもリィナの良さなんだと思うからさ。そこは、これから一緒にいるリネル君にお願いするべきかなって」

「……善処します。約束は出来ませんよ」

「それで充分。きっと少しずつ、みんな変わっていけるから。良い方にも悪い方にも、ね。だからリネル君にはリィナの隣で、リィナがよりよく変わっていけるように、見守っていた欲しいの」


 そう締めくくって、リーヴァは両手を背中に回した。

 そしてあどけなく笑って見せた。

 それは、外見年齢同様の幼さで、大人だからこその余裕で。不思議な調和が生み出した美麗な笑顔は、小さく、そして確かに願いを言った。


「リィナを、幸せにしてね」

 新年からしばらく経って、いつも通りの日常が帰って来たかなと思うわけですが、私はいつだっていつも通りに執筆を。というわけにもいかなくてですね。

 私事ではあるのですが、ちょっと10万字ほど書かなきゃいけなくなってしまって。どうにかこうにか合間を縫って書いてます。こっちの毎日投稿も並行して頑張りますので安心してもらって大丈夫ですが、投稿無かったら、まあ、察していただけると。

 察させないために頑張ります!


 それでは!

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