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2人の挑戦

 どうもシファニーです! こうならりゃやけなので学校の休み時間中も小説を書いてやります。


 第46部、第1章第46話『2人の挑戦』です。どうぞ!

 リィナが右手を掲げた。そこに集まった魔力量は絶大で、リヴェラル・ノヴァにも匹敵するその塊は、空へ打ちあがって広がった。


「私がリネルを照らす光になって見せる! 《リヴェラル・ワームス》」


 暗黒が快晴に上書きさえ、瞬いていた星々の明かりが太陽にかき消される。


 辺り一面が明るく照らされる。

 周囲は荒野になっていて、今ようやく戦場を正しく認識した。ここは魔の荒野。俺を何度も苦しめた因縁の地だ。

 そんな荒野は乾いた砂に覆われいて、見るものなんてほとんどない。

 俺は、ニケロイアを見上げた。


 照らされた黒いローブからは緑色の血が染みついている。黒い魔力が目に見えるほどに濃度を上げ、紫電が音を立て続けている。そして照らされた顔には、真っ赤な瞳が怒りに迸っていた。


「貴様が、貴様があの森を照らした元凶だったか!」

「そうよ! あんたなんかの暗闇に負けないんだから!」

「小賢しい! 貴様のような小娘に我が計画が頓挫させられただと? ふざけるな! 貴様さえ、貴様さえいなければ!」


 俺に聞かせた時には何とも思ってなさそうだったのが、今では頭を沸騰させるかのような怒り具合。思っていたよりも今回の計画はニケロイアにとって重要なものだったのかもしれない。


「馬鹿ね! 王女の私がいないなんてこと、あるわけないでしょ! さあリネル、この私が照らしててあげる! だから思う存分叩きのめしなさい!」

「ああ……聞け、ニケロイア!」


 声を張り上げる。まだ熱いし、血の味もする。だけどそれ以上に温かくて、甘かった。


「大切を守る今の俺は、強いぞ!」


 リィナの手を放す。でも、その温かさはずっと残り続けている。その手に残る温かさで、力いっぱい弦を引いた。


「狂ったか! 小僧ッ!」


 目を吊り上げ、大きく振り上げられた右手。そこに集結した紫電目掛けて、俺は弓を放つ。


「《エア・シューター》ッ!」

「ッ!?」


 ニケロイアの肩が震えた。

 体を覆う紫電が乱れ、一瞬、散り散りになる。

 

 空気を震わせた風の矢が、ニケロイアの右手を掠める。黒色の外骨格を貫き、掌の真ん中に穴をあけた。どす黒い魔力が溢れ出て、支配を失った紫電が弾ける。

 ニケロイアは少し遅れて右手を見上げ、茫然とする。そして、小さく呟いた。


「今、何をした」


 覇気がなかった。まとっていた化けの皮が剝がれたかのような豹変は、俺に確信を与えた。

 

 やれる。これなら、抗える!


「何を、何をしたアアァァァァァッ!」


 ニケロイアが空気を蹴り、紫電が軌跡を描く。ジグザクの落雷は飛び上がった俺に向かって降り注ぐ。

 黒い外骨格が目の前まで迫る。弓は引けない。防御も間に合わない。


 でも、俺は感じている。


「《エア・ブラスト》ーッ!」

「ヌウウウウゥゥゥゥーッ!?!?!?」


 真横から吹いた強風は、容易にニケロイアを吹き飛ばす。風の出所に目を向ければ、エア・フライトで浮遊するリィナの姿。両手を前に突き出した格好をゆっくりと解き、顔にかかった前髪を退けた。


「リネルあんた、今避ける気なかったでしょ」

「リィナがいるって分かったからな」

「……信頼し過ぎにもほどがあるわよ。その、嬉しいけど」


 小さくなった言葉尻。恥ずかし気な声は本当に小さく、最後の言葉は聞き取れなかった。

 なんと言ったか聞き返したかったが、そんな余裕はない。


 リィナに目掛けて紫電が迫った。


「《サンド・カーテン》!」


 リィナの前に砂の壁が築かれる。紫電はぶつかると同時に弾けるが、壁はビクともしない。荒れ地だけあって、この辺は地属性の魔法と相性がいいみたいだな。


 そんな発見も束の間、痺れるような魔力が迫って来るのを感じて、そちらを見上げる。

 ニケロイアは、いよいよ満身創痍の様相だった。


「くくっ、くははっ、くはははははははっ! 我をここまでてこずらせたのは貴様らくらいだよ! 誇りに思うがいい! だが、それもここまでだ! 我が紫電のうねりで飲み込み、抜け出せない流転に引きずり込んで――」

「《エア・シューター》!」


 不可視の矢はニケロイアの首元を掠める。わずかに動かれ、躱された。


「悪いけど、そっちの口上を聞いてやるつもりはないんだよ!」

「……どうやら、死にたいらしいな!」


 怒りの上限があるならば、ニケロイアはすでにそこに達していることだろう。目は血走り、全身が糸を張るように硬くなっている。

 前にお前は言ったはずだ。怒り任せじゃ勝てない、ってな!


「《ライトニング・ハウル》ッ!」


 紫電が蛇のようにうねり、二股に割れた先端が俺を食らうように大きく開く。

 それを見上げながら、俺は弓を引いた。


 その弦は重く、引き切るのに時間を要した。

 でも、みんなが力を貸してくれる。


 リーヴァが、レイカが、リアサが、ローラさんが、リチャードが、ランドが。レオンやロイア、他のエルフたちが俺に手を重ねる。

 右手を引くのに力を貸してくれる。神林弓を伝う温かさが、みんなの想いを教えてくれる。俺は、ひとりじゃない。


 俺の耳に、優しげな声が響いた。


「よくビビらないわね」

「そりゃまあ、負ける気がしないからな」


 それは一瞬の会話。紫電の蛇に食べられるまでの、飲み込まれるまでのほんのわずかな時間。自ら窮地の飛び込んで来たリィナとの会話はそれだけ。

 いや、それだけでよかった。


 小さな俺の手。それよりも小さく細い指が、しっかりと俺の右手に覆いかぶさる。

 

 魔力が集まり、風の矢を作り上げる。それはみんなの力を合わせた、今までとは比べ物にならないくらい大きくて力強い、3本の矢。


「「《リヴェラル・トライ・リリース》ッー!」」


 自然と頭に浮かんだ名前を、リィナと一緒に叫んでいた。

 突如、背中を強風が襲った。ただそれは、優しさと温かさに包まれていた。背負う森が、シンラシランが。シンラ・カクのみんなが、背中を押してくれていた。


 3本矢が、勢い良く放たれた。

 目に見えるほどの衝撃波を纏った矢は紫電の蛇を口から引き裂いていく。鋭い矢先が反発する紫電を貫き、弧を描いてニケロイアへと向かう。


「馬鹿な! こんなはずが無い! こんなことが、あるはずが!」


 ニケロイアの放つ紫電が勢いを増した。全身全霊の魔力を、全力全開で放っている。でも、それすらも上回った。魔族の全力に、俺たちエルフの想いに勝ったのだ。

 

 ニケロイアに触れる瞬間、3本の矢は一瞬停滞したように見えた。その裏で口元に笑みを浮かべるニケロイアの顔も、しっかりと。

 だが、その長いような短い時間は続かない。


「――カッ、ァーッ!」


 静かな悲鳴だった。

 鋭い風の音が響くと同時、3本の矢は紫電をうち払い、ニケロイアを貫いた。


 青空に紫電が走り、横一直線に紫の線を引く。


 それを見上げて、リィナが叫ぶ。


「どうよ! これが私たちの力よ! ねえリネルやったわよ! あの憎たらしい魔族を……リネル? リ、リネル!? ちょっと、大丈――」


 リィナの声がどんどんと遠のいていく。

 全身の力が抜けていって、意識が薄れていく。麻痺したような感覚が内側から広がっていって、ニケロイアに攻撃されたんじゃないかと疑った。


 でも、すぐに疲れただけだと気付いた。魔力も使い果たし、全身傷だらけ。ただでさえ無視してたのに限界を超えて活動し続けたんだからその代償があって当然だな。


 そうやって眠りについた俺。そんな中でもずっと、心の中はぽかぽかと温かかった。

 ついに迫る強敵を打ち払ったわけですが。現時点で約14万文字。結構頑張りましたね。期間としては1カ月半。元々カクヨムコンテストに向けた新作と言うことで書き始めたのでここで終わりでも良かったんですが……書いてたら筆が乗っちゃったのでまだまだ続きます。

 というかこのまま終わってみたください。謎が謎のままです。


 というわけで今後ともお付き合い願います。


 それでは!

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